幹細胞がサプリメントに!再生因子配合歯髄幹細胞から生まれたサプリの効果!

この記事の概要
  • 培養上清をつかったサプリが増えており、歯髄幹細胞培養上清を使ったTCELLMAXもその一つ
  • TCELLMAXは、歯髄幹細胞を培養し、歯髄幹細胞が分泌した物質が含まれている培養上清から「再生因子に含まれるサイトカイン」を抽出した物を成分としている
  • サイトカインには、インターロイキン、造血因子、インターフェロン、腫瘍壊死因子、増殖因子が含まれているが、上清に全てが含まれている訳ではない

幹細胞を培養した時の培養液を使ったサプリメント、コスメ製品などが増えています。

この記事では、なぜ幹細胞そのものではなく、幹細胞を培養した培養液を使うか?について解説します。

目次

1. 幹細胞培養上清を使ったサプリメント

幹細胞は培養すると成長因子などを細胞外に放出します。

この放出した物質は、周囲の幹細胞同士が刺激し合う、つまり細胞間相互作用に必要と考えられています。こうした培養液中に存在する成分を抽出、精製してサプリメント、コスメ製品を作れば、その成分が身体に有用な影響を与えるだろう、という流れで製品が増え続けています。幹細胞を培養した培養液は、「培養上清」と呼ばれます。

この中で、Quarrymen & Beautyという会社が製造している、歯髄幹細胞培養上清を使ったTCELLMAXという製品があります。2011年に設立された会社で、コスメ製品を中心事業として展開している会社です。

この製品の説明として、「TCELLMAXは再生因子に含まれるサイトカインを多種類に有する歯髄幹細胞培養上清とプロポリス、乳酸菌とラクトフェリンの複合体食品サプリメント。胃で分解されず、腸で溶けるソフトカプセルに封じ込めた」とあります。これについてさらに詳しく解説します。

ただし、本記事は製品の品質、効果を保証するものではなく、あくまで会社が発表した製品の情報をさらに詳しく解説するのみです。

2. 歯髄幹細胞と培養上清

歯髄幹細胞とは、歯の歯髄にある幹細胞です。歯髄には歯の神経があり、歯医者で「神経を抜く」という治療は、虫歯によって細菌に感染したこの歯髄を除去することです。神経を抜く治療を「抜髄(ばつずい)」とも言います。

歯髄幹細胞は、間葉系幹細胞に分類されます。他の幹細胞との大きな違いの1つに、採取のしやすさが挙げられます。臍帯血から幹細胞を採取する場合は、採取できる時期が限られていますし、成人男性の場合は採取できません。また、骨髄から幹細胞を採取しようとすると、時間と骨髄からの採血に耐えるだけの体力が必要になります。

一方で、歯髄からの幹細胞採取はそれほど難しくありません。乳歯が抜ける時に、乳歯の周辺に幹細胞が付着している場合もあります。同様に、親知らずを抜歯した時にも採取が可能です。

歯髄幹細胞は、歯髄では繊維芽細胞と象牙芽細胞に分化して、歯の象牙質・師髄複合体を維持します。体外の人工培養では、骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化させることができます。さらに、他の幹細胞と比べると増殖能力が高いというのも、最近歯髄幹細胞が注目されている理由です。

TCELLMAXは、この歯髄幹細胞を培養し、歯髄幹細胞が分泌した物質が含まれている培養上清を使い、そこから「再生因子に含まれるサイトカイン」を抽出した物を成分としています。ただし、「倫理上の規定で食品にヒト幹細胞は使えないので、ブタの歯髄幹細胞培養上清を使っている」と会社は説明しています。

サイトカインとは、細胞から分泌される低分子のタンパク質、かつ生理活性物質の総称です。細胞間相互作用に関与し、周囲の細胞に影響を与えます。サイトカインに分類されるタンパク質は非常に種類が多いので、作用も多岐にわたります。

3. 各成分の効果

サイトカインの代表的なものとして、以下の分子が挙げられます。

  1. インターロイキン(IL:Interleukin):免疫系の機能の多くはこのインターロイキンに依存しています。
  2. 造血因子(コロニー刺激因子、CSF:Colony Stimulating Factor、トロンボポエチン、TPO:Thrombopoietin、エリスロポエチン、EPO:Erythropoietin)
  3. インターフェロン(IFN:Interferon):異物の侵入に対して、細胞が分泌するタンパク質です。
  4. 腫瘍壊死因子(TNF:Tumor Necrosis Factor):アポトーシス(細胞死)、抗体産生の亢進などに作用します。
  5. 増殖因子(上皮細胞増殖因子、EGF:Epidermal Growth Factor、繊維芽細胞増殖因子、FGF:Fibroblast Growth Factor, 血小板由来成長因子、PDGF:Platelet-Derived Growth Factor)

これらの物質は、全て上清に含まれているわけではありません。歯髄幹細胞の培養条件によって分泌する物質、分泌する量は変わります。また、培養液中からこれらを抽出、精製するためには大学・研究機関などが保有している設備とほぼ同等の設備が必要です。実際に生成した物質が確かにそれらなのかどうかの確認も必要になるため、検査、確認のための機材も必要になります。

ここで注意しなければならないのは、「培養液上清には必ずしも有用な物質だけが含まれているわけではない」ということです。歯髄幹細胞の分泌した物質全てが身体にいいというわけではなく、身体に対して悪影響を及ぼす可能性のある物質も含まれています。有用な物質のみを抽出・精製して製品化するためには、かなり高度な技術が必要です。

このTCELLMAXには、培養液上清から抽出した成分だけでなく、プロポリス、乳酸菌、ラクトフェリンも含まれています。プロポリスは、ミツバチが樹液などの植物から集めた樹脂製混合物です。現在このプロポリスはミツバチにとって次のような有用性があると考えられています。

  1. 巣の補強:樹脂ですので、隙間、結合部に使うことによって巣の構造の補強に使うことができます。
  2. 隙間を防ぐことによる巣の防御力向上:隙間から敵が侵入しないように、不必要な隙間をプロポリスで塞ぐことができます。
  3. 真菌、微生物などの成長の阻害にも作用すると考えられています。また、小動物(ネズミなど)などが巣の中、巣の周辺で死んだ場合、外に運び出すことは非常に困難です。そのため、ミツバチはこの死骸をプロポリス内に封入することによってミイラ化し、無害とすると考えられています。

人類はプロポリスを古代から利用しており、ミイラを作る時の防腐剤としても使われていました。また、化粧品、消毒抗炎症剤、点眼剤、鎮静剤などにも使われています。最近は健康食品としての利用が拡大しています。抗菌、抗ウイルス、抗酸化作用、抗腫瘍活性、抗肝毒性などの報告がされており、今後も利用は拡大すると予想されます。

乳酸菌は、「代謝によって乳酸を産生する細菌類の総称」です。1種類の細菌を乳酸菌というわけではなく、乳酸を産生する最近全てを乳酸菌と呼んでいます。ヒトの体内にも常在菌として乳酸菌が存在しています。乳酸菌は「腸内の善玉菌」という解釈がされています。腸内常在細菌叢(腸内フローラ)の乳酸菌の割合を増やせば健康増進に役に立つ、という印象を与える広告が多いのですが、実際には健康増進に役に立つ、役に立たない、両方の研究結果が報告されています。現時点では、「乳酸菌の摂取によって腸内細菌叢のバランスを維持することによって健康維持の補助とする」という考え方で摂取するのがよいと考えられます。

最後に、ラクトフェリンです。鉄結合性の糖タンパク質の1つで、細菌、ウイルス、寄生虫などの侵入物に対して抑制的に作用するとされています。また、免疫機能亢進、脂質代謝改善、創傷治癒効果、抗酸化作用、抗がん作用などの報告があります。

TCELLMAXは、これらの成分を腸溶性カプセルに封入しています。胃でカプセルが溶けて成分が出てしまうと、消化液によって成分が分解されてしまい、効果が期待できなくなります。そのため、胃では溶けにくく、腸に到達して溶けるカプセルを使っています。腸に物質を届けたい場合に多用される腸溶性カプセルは、カプセル皮膜に抗酸性が与えられています。この抗酸性によって胃酸による分解を防ぎ、カプセルが腸に届くようになっています。

乳酸菌などの菌、糖タンパク質を含むタンパク質は、胃ではほぼ分解されてしまいます。サイトカインは低分子のタンパク質、ラクトフェリンは糖タンパク質ですので、胃酸による分解を受けて、アミノ酸レベルまでほぼ分解されてしまいます。TCELLMAXはこのカプセルに封入されることによって、腸に届くように加工されています。

こうした製品は、効果には個人差があり、効果がある人とない人がどうしても出てしまいます。薬品と比べると、ある面では規制が緩やかなために、それほどの厳密性が求められません。製品購入時にはそれをふまえて、また不明な点は必ず問い合わせてから購入するようにしましょう。

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