この記事の概要
  • 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に認可を受けたクリニックが幹細胞を使った医療ができる
  • エステでは幹細胞そのものではなく、幹細胞を培養した培養液をエステの材料として使う
  • エステサロンで幹細胞培養液を使った施術を受ける場合は、1回で5万円から10万円、5回・10回とうけるコースが多い

再生医療は治療に使われることがメインですが、美容目的で使われはじめています。

美容目的で再生医療に興味を持つ方もいると思いますので、今回は美容と幹細胞の関係、費用面について解説します。

1. 幹細胞とエステ

現在、アンチエイジングという言葉が一般的に使われるようになっています。アンチエイジングは、「抗加齢」または「抗老化」を意味する言葉であり、本質は生活習慣を改善し、健康でより長寿を目指す、そしてアンバランスによる病的老化の予防、治療です。

iPS細胞の出現以来、目にするようになったのが「幹細胞を使ったアンチエイジング」、「幹細胞を使った若返り」です。ネットで検索すると、多くのクリニックで、若返り、アンチエイジングを謳った幹細胞治療についてのページがヒットします。

幹細胞治療は、このように多くのクリニックで行われている、つまり普及しつつあるという印象を受けますが、医療機関であればどこでも幹細胞治療を受けられるということではありません。

再生医療等の安全性の確保等に関する法律、というものがあり、この中で、第一種再生医療等技術、第二種再生医療等技術、第三種再生医療等技術に幹細胞治療が分類され、特定人体裁医療等委員会の審査を受ける必要があります。そして実際の医療行動をするには、前もって厚生労働省への計画書の提出が求められています。

こういった審査を受けて、認可されたクリニックが幹細胞を使った医療をできます。そして、「若返り」「アンチエイジング」を、幹細胞治療を使って行う、と宣伝しているクリニックが多数あります。

2. 幹細胞そのものを直接使う治療は少ない

若返り、アンチエイジングといった「エステ」に分類されるものに幹細胞そのもの、つまり、幹細胞を移植する治療を行うことは非常に難易度が高い医療です。

他の治療における幹細胞移植が、様々な条件検討などでいまだに最適な治療を模索していることを考えると、研究機関を持つ大学などと比べ人的リソースがはるかに少ないクリニックでこういった治療を行うことは非常に難しいことになります。

ではなぜ、これだけのクリニックがエステにおいて幹細胞治療を謳っているのでしょうか?

それは、「幹細胞そのものではなく、幹細胞を培養した培養液をエステの材料として使う」という治療を行っているからです。

幹細胞を培養すると、幹細胞から様々な物質が分泌されます。この物質の中には、アンチエイジングに効果があるとされている物質が含まれています。そこで、この培養液を使ってエステ、また、この培養液の成分を使った製品が流通しています。

厳しい幹細胞治療の審査の中で、この幹細胞を培養した培養液はどのような扱いを受けているのでしょうか?それについては、国会の質疑応答が明確な方向性を示しています。

令和元年の第198回国会、衆議院に提出された源馬謙太郎議員の質問書を引用します。

「令和元年六月十八日提出質問第二四二号

源馬謙太郎

ヒトの幹細胞を培養した時にできる培養液の上澄みである培養上清を用いた治療法が広まっている。また、その培養上清を特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品、いわゆるサプリメントに配合したものが市場に出ている。
このことにつき、以下質問する。

一 細胞が含まれていないヒトの幹細胞上清液を用いた治療法は再生医療等安全性確保法の対象になるのか。
二 細胞が含まれていないヒトの幹細胞上清液を特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品に配合することは、再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に合致しているのか。

右質問する。」

この質問では、「培養液は再生医療等安全性確保法」のもとで管理されるものかどうかを質問しています。これに対する安倍総理(当時)の答弁を以下に引用します。

「内閣衆質一九八第二四二号令和元年六月二十八日

内閣総理大臣 安倍晋三

衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員源馬謙太郎君提出ヒト幹細胞上清液に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

お尋ねの「細胞が含まれていない」、「幹細胞上清液」、「対象になる」、「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」、「配合する」及び「合致している」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、一般に、人等の細胞に培養その他の加工を施したものを用いない医療技術は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成二十五年法律第八十五号)第二条第二項に規定する再生医療等技術に該当するものではなく、また、仮に御指摘の「細胞が含まれていないヒトの幹細胞上清液を特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品に配合」されたものが、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品に該当する場合、その製造販売をしようとする者は、医薬品の製造販売についての厚生労働大臣の承認を受ける等の同法の規定に従う必要がある。」

つまり、「培養液は細胞を含んでいない状態で使うのであれば、再生医療等の安全性の確保等に関する法律内にある再生医療等技術に含まれない」と答弁しています。しかし、この培養液を使ってなんらかの医薬品を製造する場合は、所定の法律に従う必要がある、とつけ加えています。

つまり、幹細胞の培養液を使うのであれば、幹細胞そのものを使うよりも規制が少ない、というわけです。

こうした事情から、多くのクリニックでは幹細胞の培養液を使った治療を行う、としています。また、医療機関でなくとも使用できる場合があるので、サロンなどでも幹細胞培養液を美容液として使っている所があります。

3. 幹細胞培養液を使った治療の費用は?

治療にかかる費用は、ケースによって大きく異なります。

まず、幹細胞そのものを使う治療です。眉間のシワを消す、ほうれい線、皮膚のでこぼこを幹細胞そのものを移植する、または注入して改善する治療がこれにあたります。先の述べた、法律の下で、審査され認可された場合にのみ行うことができます。この治療のほとんどは、全額が自己負担になり、保険が適用できない治療です。

費用は、クリニックによって、アフターケアのオプションがあったり、採取した細胞の保存を行う場合、行わない場合などの違いがあるので、金額に大きな幅があります。ほとんどのケースで、100万円を下回ることはなく、100万円から200万円、継続的にケアを行えば行うほど高額になります。

目の周りのくぼみを取るために幹細胞治療(自分の身体から採取した幹細胞)では、移植手術に20万円から30万円かかります。しかし、この移植だけでは治療ができません。移植に必要な診察を含めますと、初診料と血液検査に数万円、細胞を採取、抽出して培養するのに20万円から50万円(この幅は、細胞を保存するかしないかによります)かかります。これら色々あわせると、どうしても100万円以上(全額自己負担の場合)かかってしまうことになります。

一方、クリニック、エステサロンで行う幹細胞培養液を使った治療、エステ行為ですが、エステサロンの場合はすでに製品化されているものを使います。エステサロンは医療機関ではないため、細胞の採取などの医療行為はできません。

エステサロンで幹細胞培養液を使った施術を受ける場合は、1回で5万円から10万円です。しかし、1回では効果が見込めないとされていますので、最初のうちは1~2週間に1回のペース、改善し始めたら1ヶ月に1回のペースで施術を受けることをエステサロンから推奨されると思います。5回、10回の契約で前払いするコースが多くのエステサロンで採用されていますが、5回で30万円から50万円ほどの費用が設定されています。

医療機関の場合は、自分の幹細胞を採取して培養し、その培養液を使う場合が多いのですが、幹細胞そのものを使う治療と同様に、細胞採取、抽出、培養に費用がかかり、これに治療代が入るので、まず数十万円はかかります。その後は保存された自分の細胞を使って培養、培養液を採取し治療に使うので多少は安くなりますが、やはり高額です。

現在の日本では、幹細胞培養液を使ったエステに関しては、ほぼ自由にいろいろできる状態ですので、良いものから良くないものまでが混在しているのが現状です。費用も高額になるので、なるべく多くの情報を集めて、信頼できるクリニック、エステサロンを見つけることが重要です。

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