この記事の概要
  • 再生医療関連法についてざっくり解説
  • 再生医療等安全性確保法は、臨床研究や自由診療を特定の患者さんに行う時のルール
  • 医薬品医療機器等法は、第三者の企業が不特定の患者さんに行う時のルール

再生医療は、これまで治療法のなかった病気に対して治療ができるようになったり、より 侵襲 の少ない治療が選択できるようになったりと、非常に多くの可能性を秘めています。

例えば人の角膜。今まで角膜に障害が生じた場合、アイバンクで凍結保存してある亡くなった方の角膜を移植する治療方法しかありませんでした。そのため凍結保存で提供される角膜が少なく、多くの人が移植される角膜を待っている状態でした。しかし、再生医療で人工多能性幹細胞(iPS細胞)から自分の角膜を作ることができるようになったら、角膜移植を待っている患者さんの提供不足を解消することができます。

しかし、新しい治療法を待ち望んでいる人たちのために、素早く実用化されなければならない一方で、再生医療は実際誰も扱ったことのない新しい医療が多く含まれていることから、その治療法が安全であることが絶対条件となります。

先ほどの例でいうと、iPS細胞はどんな細胞にもなれる可能性を秘めている一方で、自己増殖の機能をもち 腫瘍化 してしまう懸念が従来からありました。角膜に移植してから腫瘍化してしまったら、病気を植え付けている状態になりかえって患者さんに不利益を生じることになってしまいます。したがって、そういったことがなく安全に再生医療が行われることが必要になるのです。

安全性は十分に確保したい。

しかし、素早く研究や自由診療を推進していきたい。

このふたつの矛盾を解決するにはどうすればよいでしょうか。研究や 自由診療 を行う一方で、細胞を培養したり保存したり、すぐ提供できる施設を確保するには、ひとつの施設で行うにはあまりに膨大な資金と設備が必要になってしまいます。

そこで、ある程度の保存や培養に関しては、外部に委託できるような仕組みづくりをつくることにしたのです。要するに、作業を分けてしまえば、それぞれの施設はその作業に専念できるし、資金や設備もそれほどかからなくなると考えたのです。

こういった趣旨をもとに、平成26年11月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)」と併せて、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」が施行されました。

これらの法律は、再生医療等の安全性の確保しながら細胞培養加工の外部委託し、素早く再生医療を提供するために具体的にどういった手続きを行えばいいのかに関して、ある一定のルールを定めています。

それではそれぞれの法律について、もっと詳しくみていきましょう。

1 再生医療等安全性確保法とは?

1-1 提供リスクにより、3種に分けられている

再生医療等安全性確保法は、臨床研究や自由診療を特定の患者さんに行う場合の法律です。患者さんの安全性を確かめながら再生医療を行うために、

  • 再生医療を実施する医療機関はどういった施設基準を満たす必要があるか
  • 具体的にどのような手続きを行わなければならないか

を示した法律になります。非常に細かく書かれているので、概要だけ記したいと思います。

まず、医療機関での提供計画の作成を、各種申請書類支援サイトを使いながら行います。その後は提供されるものが何かによって具体的な手続きが違っています。具体的には、それぞれの再生医療を

  • 第1種再生医療等 : 人に未実施など高リスクな再生医療
  • 第2種再生医療等 : 現在実施中である再生医療など中リスクな再生医療
  • 第3種再生医療等 : リスクの低い再生医療(体細胞を加工したものなど)

に分類されます。

例えば、先ほどの人工的に作成されるiPS細胞を用いた角膜移植は第1種再生医療にあたります。また、胚(受精卵)から培養してつくられるES細胞も第1種再生医療になります。

それに対して、もともと私たちのからだの中に存在している「体性幹細胞」は第2種再生医療にあたります。

もっと詳しく

体性幹細胞には、神経幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞など複数の種類があり、生体のさまざまな組織に存在する一方、iPS細胞やES細胞と異なり、分化する種類は限られているため、比較的安全性の高く実用化しやすい細胞といえます。

また、体細胞のある成分を抽出したり加工したりすると、さらにリスクが低くなるため、第3種再生医療にあたります。

このように、ひとくちに再生医療といっても扱う素材のリスクの大きさは千差万別になるため、リスク度を分類し、手続きを異なるようにすることで、効率性と安全性を確保しています。

1ー2 提供リスクにより、より厳しい審査がある

リスクの低い第3種再生医療に関しては、認定再生医療等委員会とよばれる再生医療等技術や法律の専門家等の有識者からなる合議制の委員会で審査され、厚生労働大臣への提供計画の提出を行えば提供開始することができます。

中リスクの第2種再生医療に関しては、認定再生医療等委員会のうち、特に高度な審査能力、第三者性を有した特定認定再生医療等委員会で審査を受けたのち、厚生労働大臣への提供計画を提出し提供を開始できます。

高リスクの第1種再生医療に関しては、第2種再生医療の場合と同様に、認定再生医療等委員会で審査され、厚生労働大臣への提供計画の提出を行います。それに加えて、厚生科学審議会で意見を求められ、厚生労働大臣を通じて計画の変更命令が行われ、90日間の提供制限期間を経たうえで提供を開始することができるため、より厳しい手続きを経ることになります。

第1種再生医療から第3種再生医療までのいずれの場合でも、厚生労働大臣への提供計画の提出の手続を義務付けられており、提供計画を提出せずに再生医療等を提供した場合は、罰則が適用されます。

また、医療機関が自院で治療用の細胞加工物を製造する場合は、厚生労働大臣への届出が必要になりますが、厚生労働省の認可をうけた企業の工場で採取した細胞などを外部委託として加工や保存しながら自院で移植することができるようになったのも、この法律の特徴になります。

2 医薬品医療機器等法とは?

医薬品医療機器等法とは、医薬品、医療機器等の品質と有効性および安全性を確保する他、製品の製造や表示・販売・流通・広告などについて細かく定めた法律になります。

自由診療や臨床研究で特定の患者さんに使用する場合とは異なり、化粧品や再生医療製品などを通して、第三者の企業が、不特定多数の患者さんに使用されることを目的として製造や販売をおこなう細胞加工物は、「再生医療等製品」と呼ばれ、医薬品医療機器等法の規制対象となります。

この第三者の企業によって、人や動物の細胞を加工して製造される「再生医療等製品」は、個人差が大きいため品質が不均一になってしまうのが特徴です。そのため、有効性を確認するためのデータの収集や評価に長時間を必要とすることが従来の法律では課題となっていました。

そこで、医薬品医療機器等法では「条件・期限付承認制度」を設け、少ない症例数でも安全性が確認できれば一定の条件や期限を定めたうえで承認が与えられるようになりました。

具体的には、臨床研究を行ったのち、少数の患者さんで安全性を確保します。そののち、条件や期限を設けて承認をして、一般市場で市販し、有効性やさらなる安全性を検証します。この期限内に再度承認申請を行い、承認されれば、引き続き市販化されるという仕組みです。

治験で再生医療等製品が承認されれば公的医療保険の対象となるため、患者さんはより利用しやすくなることがこの法律の特徴といえるでしょう。

3 まとめ

再生医療等の安全性の確保しながら細胞培養加工の外部委託し、素早く再生医療を提供するためのルールとして、「再生医療等安全性確保法」と「医薬品医療機器等法」を中心に見ていきました。

このような法律を背景に、再生医療の素早い市場普及が期待されます。

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