変形膝関節症とは?エバステム変形性膝関節症向けに、他家臍帯血MSCの後期試験2本を実施中

目次

1. 変形性膝関節症とは

変形膝関節症とは、膝の関節のクッションである軟骨が、加齢、または筋肉量の低下によってすり減る疾患です。

軟骨がすり減ると、膝の関節を構成する骨と骨の間の隙間がなくなり、刺激によって骨に突起物ができてしまったり、骨が変形してしまいます。

さらに、関節は関節包という繊維膜によって覆われ、保護されていますが、この関節包の内側に炎症が起こります。

 

この部分に炎症が起こると、黄色い粘液が分泌されます。

一般に膝に水がたまるとは、この液体が膝の部分に溜まった状態を指します。

軟骨が欠けるなどして軟骨片ができてしまい、この液に混じって骨膜を刺激するために痛みが生じることが多く見られます。

 

変形膝関節症は、ゆっくりと時間をかけて進行し、少女が重くなっていきます。

膝のこわばりを感じることが初期症状で、膝が重く感じ、鈍い痛みを感じるなどの自覚症状が表れます。

この症状は、膝を動かす、例えば軽いストレッチを行うことで解消しますが、この段階から進行すると、膝に負担をかける行動(急に方向転換をする、正座、階段の上り下り)などで痛みを感じるようになります。

 

中期にまで進行すると、軽く膝を動かすと解消していた痛みが消えづらくなります。

階段の上り下りなどがかなりつらくなり、日常生活にはっきりと支障が出始めます。

関節内部は炎症が進行し、膝が腫れる、熱感を感じるという自覚症状が表れます。

 

黄色い関節液の分泌量が増えてくる時期なので、膝の変形が目立つようになり、関節がすり減り始めるのもこの時期です。

 

さらに進行し、関節軟骨がほとんどなくなると、骨同士が直接接触するようになります。

中期にまで見られた症状全てが悪化し、普通にある事も困難になります。

 

2. 変形性膝関節症に治療方法開発

変形性膝関節症を幹細胞で治療する方法の確立を目的に作られた会社がエバステム(EVASTEM Co.,Ltd.)です。

この企業は、韓国MEDIPOST社が韓国で承認を受け製造販売している、他家臍帯血由来間葉系幹細胞(MSC)の「CARTISTEM」の商品化を目指し、VICXセラピューティクス社とMEDIPOST社が2016年に共同で立ち上げた合弁会社です。

 

VICXセラピューティクス社は、大学、公的研究機関に埋もれているシーズを探し出し、実用化を目指した研究開発を行うことを目的に2014年に設立されました。

創業には、東京大学名誉教授、故・新井賢一教授に関わっており、日本国内のシーズだけでなく海外で承認された有望な製品を国内に紹介する事を目的としています。

現在は、この記事で紹介する韓国MEDIPOST社から導入した再生医療等製品、及びアメリカ・BAYLOR社から導入した免疫細胞療法を開発し、臨床に応用しようとしています。

 

CARTISTEMは、2012年に韓国医薬品安全処(MFDS)から承認された他家臍帯血由来間葉系幹細胞(MSC、Mesenchymal Stem Cell)で、同種異形臍帯血より採取した間葉系幹細胞から作成されています。

用途は、変形性膝関節症、反復性外傷によって引き起こされる関節軟骨損傷、欠損治療製品として使われます。

 

2025年の承認を目標に、現在第2相試験、第3相試験を実施しています。

3. 間葉系幹細胞とは

間葉系幹細胞とは、生体内に存在する幹細胞の一つです。

中胚葉由来の組織である、骨、軟骨、血管、心筋細胞などに分化できる能力を持っています。

近年では研究が進み、中胚葉由来の組織だけでなく、外胚葉由来である神経細胞、グリア細胞、内胚葉由来である肝細胞にも分化誘導が可能である事が照明されています。

 

有用な細胞である事から、多くの研究機関、企業が製品化しようとしている肝細胞ですが、粗製濫造を防ぐために、国際細胞治療学会(International Society for Cellular Therapy:ISCT)では、

  1. 標準的な培養条件でプラスチックに接着性を有すること。
  2. 細胞表面マーカーのCD73、CD90、CD105が陽性であり、かつ、CD11bまたはCD14、CD19またはCD79α、CD34、CD45、HLA-DRが陰性であること。
  3. 骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞への分化能を有すること。

この3つを最低条件とすることを現在提案しています。

 

臨床目的で使われる間葉系幹細胞は、骨髄、臍帯、臍帯血、脂肪といった様々な組織から採取が可能です。

この細胞は、抗炎症効果、増殖因子分泌、血管新生促進作用という組織を修復する作用を持っているために、臨床応用に有用な細胞として注目されています。

 

しかし、腫瘍化、つまりがんとなるリスクが肝細胞の中で最も低いことも、臨床において使いやすいとされている点です。

すでに脊髄損傷や造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病の治療に使われており、再生医療等製品として承認されているものも少なくありません。

 

間葉系幹細胞は、ドナーの身体に大きな負担をかけずに採取ができる肝細胞として知られています。

骨髄、脂肪組織、胎盤組織、臍帯組織、歯髄などから採取が可能ですが、このうちいくつかの組織からの採取は、入院などを必要とせずに採取することができます。

 

例えば脂肪組織から採取する場合は、ドナーから注射器などを使って脂肪細胞からなる脂肪組織を採取します。

この組織をタンパク質分解酵素などで細胞同士の結合を分解してバラバラにします。

この時酵素の処理時間が長くなると、細胞の細胞膜にもダメージを与えてしまうため注意が必要です。

 

バラバラになった細胞は、遠心分離にかけられます。

遠心分離によって、浮遊している脂肪細胞集団を分離し人工培養に入ります。

この人工培養開始時には細胞は浮遊していますが、そのうち沈降して培養器の底面に付着し、増殖する細胞が見られます。

この細胞を観察すると繊維芽様の細胞である事がわかります。

この繊維芽様の細胞を人工的に培養、増殖させ、増えたら1枚の培養皿から2枚、ないし3枚の培養皿に移す、という作業を続けます。

この操作によって得られる細胞が間葉系幹細胞です。

 

4. 変形性膝関節症を幹細胞を使って治療する

変形膝関節症の治療に幹細胞を使うことはすでに行われています。

ネットで「変形性膝関節症 幹細胞治療」で検索すると、幹細胞を使った治療を行っている医院、クリニックのページが多数ヒットします。

 

この場合、自分の間葉系幹細胞を採取して行うという方法を採用しているクリニックもありますが、自分の幹細胞を使うためには、膝に注射するだけの間葉系幹細胞の準備が必要です。

 

間葉系幹細胞を患者から採取、その幹細胞を体細胞から分離して人工培養で増殖させて必要数確保し、患部に注射する、というスケジュールになりますが、変形性膝関節症の場合はこの注射を何度か繰り返さなければなりません。

 

1回の間葉系幹細胞採取でかなりの細胞数を確保できれば問題ないのですが、足りなくなる場合は再度採取、人工培養を繰り返さなくてはなりません。

そうなると、医療コストがかかってしまいますし、注射前の人工培養で細胞が増殖するまで患者が長期間待たされるということも起きる可能性があります。

 

もし、変形膝関節症の治療に使える幹細胞を大量に保有している企業などがあれば、そこから細胞を購入して治療に使った方がコストも低く抑えることができますし、患者本位のスケジュールで治療を行うことができます。

 

VICXセラピューティクス社とMEDIPOST社が設立したエバステム社は、その細胞の供給、しかも高品質の幹細胞を供給することを目標として現在研究開発を行っています。

 

臨床試験のステップはかなり進行し、第2相試験、第3相試験を行っているため、このまま問題がなければ承認されるのはそう遠くない未来であると考えられます。

 

加齢によって膝に変形性膝関節症のような疾患が起きてしまうことは珍しくありません。

膝の軟骨を再生、またはその代用となる細胞が膝関節にあれば、膝の痛みを大きな障害とすることもなく生活することができます。

各国で高齢化が進み、今後もその流れは止まらないとされている昨今、老化、加齢に伴う疾患の治療方法に幹細胞を使うことができるようになったことによって、生活の質を落とすことなく老後の生活を送ることができる時代はもうすぐやってくるでしょう。

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