この記事の概要
  • サイトカインは、様々な細胞で分泌され、その分泌細胞の近くあるいは局所で作用する
  • サイトカインは、インターロイキン、腫瘍壊死因子スーパーファミリー、インターフェロン、コロニー刺激因子、ケモカイン、増殖因子などに分類される
  • サイトカイン治療は、サイトカイン自体を治療薬として利用する場合と抗サイトカイン療法の2つの種類がある

免疫に効果を発揮するサイトカイン(cytokine)について、機能を知っていますか?

この記事では、サイトカインとは何か?治療にどのように使われているかについて解説します。

1. サイトカインとは

サイトカインは、細胞から分泌されるタンパク質であり、目的とする細胞(標的細胞)表面に存在する特異的受容体を介して、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現または抑制など多様な細胞応答を引き起こす生理活性物質の総称です。

ホルモン(成長ホルモン、インスリン、甲状腺ホルモンなど)との違いは、ホルモンが特定の臓器(下垂体、膵臓、甲状腺など)から産生され、血流を介して全身的に作用するのに対し、サイトカインは様々な細胞で分泌され、その分泌細胞の近くあるいは局所で作用することです。語源は細胞(cyto)と作動因子(kine)から名付けられました。また、サイトカインは細胞間で情報を伝える「言葉」に例える事ができます。

2. サイトカインの分類

サイトカインは作用の特性から、インターロイキン、腫瘍壊死因子スーパーファミリー、インターフェロン、コロニー刺激因子、ケモカイン、増殖因子などに分類されます。なお、サイトカインの機能は必ずしも一つではないため、複数のグループに重複して分類されるサイトカインもあります。

2-1. インターロイキン(IL)

白血球が分泌し免疫系の調節に関与し、30種以上報告されています。

IL-1(種々の白血球や内皮細胞を刺激する炎症誘導性のサイトカイン、発熱、食欲にも関与)、IL-10(サイトカイン産生の抑制)、IL-6(炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの両方として作用する)などがあります。

2-2. 腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー

炎症の初期に活性化マクロファージや、さまざまな細胞が分泌し、サイトカインや接着分子の発現を促し、慢性炎症、自己免疫疾患、慢性消耗性病態等にも関与しています。

TNFα, TRAIL(TNF-related apoptosis-inducing ligand), RANKL (receptor activator of NF-κB ligand)などがあります。

2-3. インターフェロン(INF)

活性化したTh1細胞などが分泌し、貪食細胞や抗原提示細胞の活性化します。また、パターン認識細胞反応によって産生され、免疫制御に関与します。

INFα, INFβ, INFγなどがあります。

2-4. コロニー刺激因子

種々の細胞から分泌され、白血球前駆細胞の増殖や分化をコントロールします。また、自然免疫細胞を活性化します。

GM-CSF(granulocyte/macrophage colony-stimulating factor), G-CSF(granulocyte colony-stimulating factor), エリスロポイエチンなどがあります。

2-5. ケモカイン

ケモカインは感染や炎症の際に、白血球やリンパ球など細胞を組織へ遊走させることを主な機能とするサイトカインで、システイン(アミノ酸の1種)配列の違いによりCC、CXC、C、CX3Cの4種類に分類されます。感染部位における免疫応答の活性化、免疫細胞の発生・分化や免疫機能の維持にも寄与しています。これまでに50種類以上のケモカインが同定されています。

2-6. 増殖因子

増殖因子は修復過程において間葉系細胞の増殖、細胞外基質の産生を促す。白血球には抑制的に作用します。

トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β, actibin/inhibin, 骨形成タンパク質(BMP)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGP)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)肝細胞増殖因子(HGF)、肝細胞増殖因子(HGF)などがあります。

3. サイトカインの治療への応用

サイトカインの治療への応用として、サイトカイン自体を治療薬として利用する場合と抗サイトカイン療法の2つの種類があります。前者はサイトカインによる作用を薬効としている治療法ですが、後者は逆にサイトカインの作用が原因となって発症している疾患を対象としており、サイトカインの作用をブロックすることで治療効果を発揮するという治療法です。考え方として相反していますが、それにはサイトカインの持つ多様性が関係しています。

サイトカイン自体を治療薬とする例では、インターロイキン2(以下、IL-2)とインターフェロン(以下、INF)、エリスロポエチン,G-CSFなどがあります。

IL-2はT細胞から産生され、T細胞やNK細胞の増殖や活性化を誘導する因子として発見されました。血管肉腫や胃がんに適応が取得されています。

INFはウイルスの増殖を抑制する物質として発見され、免疫細胞のみならず、血管内皮細胞など多くの細胞から産生されることが知られています。ウイルスに対する効果だけではなく、「がん」に対する直接的な効果や免疫細胞を介した抗腫瘍効果が認められています

エリスロポエチンは腎臓で作られている物質で、骨髄を刺激して赤血球の生産を促します。医薬品としての効能は慢性腎不全による貧血などです。

G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)は好中球(白血球の一種)の増殖を刺激するコロニー刺激因子。造血因子という種類のサイトカインであり、がん化学療法時などの好中球減少症に使われます。

これらのサイトカインは生理的には局所で分泌されその近くで作用しますが、薬剤として投与する場合は静脈内投与となるので、全身的にその作用がおよび、予期しなかった副作用(例えば、IFN製剤における精神神経症状など)がみられる事があるので注意が必要です。もちろん承認前の治験でこれらのことは対処法も含め十分に検討されてから医薬品として市販されています。

「抗サイトカイン療法」とは、先述の通り、サイトカインの作用をブロックすることで効果を発揮する治療法のことです。サイトカインのブロックには「抗体」を用いており、この「抗体」がサイトカインの作用を無力化します。

サイトカインは自己免疫疾患と関連しており、その代表例である関節リウマチには炎症性サイトカインが深く関わっています。炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(以下、TNF)やインターロイキン1(以下、IL-1)およびインターロイキン6(以下、IL-6)は、リウマチの炎症に関わるサイトカインの誘導を介して関節の腫れや骨の破壊に直接関与していることが分かっています。その中でもTNF-αが中心的な関りを持っていることから、このTNF-αを阻害する抗TNF-α抗体による治療法が確立されました。その他にもIL-1阻害剤やIL-6阻害剤も関節リウマチに適応を取得しています。

4. サイトカインと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

新型コロナウイルス感染症は8割ぐらいの感染者では軽症または無症状で経過しますが、まれに急速に悪化する場合があります。このような患者では、肺で過剰な炎症が起こり、最悪の場合、多臓器不全におちいり死に至ります。

このときのメカニズムに免疫細胞がウイルスと戦うために作るサイトカインが、制御不能となって放出され続ける「サイトカインストーム(cytokine storm)」が関与していることが明らかになりました。ストームは嵐という意味です。

サイトカインストームは感染症や薬剤投与などの原因により、血中サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果、好中球の活性化、血液凝固機構活性化(血栓を形成する傾向になる)、血管拡張などを介して、ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行する現症です。

こうした重症患者に対する治療薬としては、サイトカインの一種であるIL-6(インターロイキン-6)の働きを抑える抗体医薬や、サイトカインによる刺激を伝えるJAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害する薬剤が候補に挙げられています。また、新たに厚生労働省は抗炎症薬であり、副腎ステロイド薬である「デキサメタゾン」を新型コロナウイルス感染症の治療薬として認定しました。

デキサメタゾンの投与により人工呼吸器が必要な患者の死亡率が約40%から約29%に低下したことが報告されています。このことは新型コロナウイルス感染症の重症化に過剰な炎症反応が関係していることを裏付けるものです。

5. サイトカインと幹細胞

幹細胞は、自己複製能と様々な細胞に分化する能力(多分化能)を持つ特殊な細胞です。この2つの能力により、発生や組織の再生などを担う細胞であると考えられています。幹細胞には、その由来や能力などから、幾つかの分類がされており、主に胚性幹細胞(ES細胞)、成体幹細胞、iPS細胞などが挙げられます。

幹細胞から様々な機能を持った細胞に分化するには、それぞれの段階で分化や細胞増殖を指示するサイトカインが必要です。幹細胞には必要なサイトカインを産生する能力があり、実際に幹細胞を培養すると、多くの種類のサイトカイン含む培養上清が得られます。この培養上清の臨床応用が様々な領域で検討されています。