CD34とは?幹細胞移植を成功させる鍵となるマーカーを解説!

この記事の概要
  • 血液系の病気には増血系の分化能を含むCD34陽性幹細胞をいかに集めるかが大切
  • 血管内皮前駆細胞という幹細胞を移植する、血流の途絶えた、虚血性組織の再生治療にCD34は不可欠なマーカーとなる

CD34とは、どれくらいの数の幹細胞があるかの指標となるものです。

この記事は、CD34について解説します。

目次

1. 幹細胞移植を成功させる鍵、CD34について

幹細胞移植をする際、組織を再生するためには、十分な数の幹細胞が必要となっています。どれくらいの数の幹細胞があるか、指標となるのが、CD34というマーカー(信号)です。

骨髄由来の造血幹細胞、血管内皮前駆細胞、脂肪組織間葉系幹細胞、毛包幹細胞などの身体にある幹細胞はCD34という信号を発していることがわかっています。

血液系の病気には増血系の分化能を含むCD34陽性幹細胞をいかに集めるかが大切です。幹細胞の数をきちんと集めることができなければ、身体に負担のかかるのに関わらず、移植治療は失敗してしまうのです。

最初は細胞としての役割を持たず、いろいろな細胞に変化しうる可能性を秘めた幹細胞も分裂を繰り返し、それぞれの役割を持つ細胞に変わっていきます。これを分化いいます。

例えば、血液は血漿(液体部分)と血球から成り立っています。血球は主に赤血球(血液を運ぶ役割)、白血球(細菌やウィルスと戦う役割)、血小板(出血を止める役割)から成り立っています。赤血球や白血球や血小板も、もともとの骨髄の造血幹細胞が分裂を繰り返し、特定の役割を持つようになる、すなわち「分化」してできたものです。

造血幹細胞が分化し、血球に変化するにつれ、幹細胞として持っていたCD34のマーカー(信号)も徐々に失うことがわかっています。

2. 白血病における造血幹細胞移植

白血病は「血液のがん」です。造血幹細胞に遺伝子異常がおきることで、正常でない赤血球や白血球、血小板が異常に増え、逆に正常な赤血球や白血球、血小板が減ってしまいます。

赤血球に異常をきたす白血病になると、異常な赤血球が増え、正常な赤血球が減ってしまうと、酸素が運べないため、貧血が起きます。

また白血球に異常が出ると、細菌やウィルスと白血球は戦う正常な白血球が減ってしまうため、感染症にかかりやすくなり、免疫異常をきたします。また、血小板の異常な細胞が増えると、血が固まりにくくなり、出血しやすくなります。

異常な血球は増えるばかりでなかなか減ることはなく、1つの臓器にがん細胞が集まるわけではなく、全身の血液の中にあるため、手術はできません。

治療は、化学療法や放射線療法もしくは正常な造血幹細胞の移植です。両者を併用することがほとんどです。化学療法や放射線療法で、まず、異常な血球を殺し、異常な細胞の数をほぼゼロにします。

そして、その次に、移植を行うなどして、正常な幹細胞から正常な血球を増やしていきます。

本来は骨髄にしかない、正常な造血幹細胞ですが、血液にわずかに存在する幹細胞を骨髄から集めるために、点滴を行います。そのとき、他人の幹細胞の移植を行う必要があるのか、自分の身体にある幹細胞だけで数は足りるのか?と幹細胞だけを集め、数えるために使うマーカーがCD34です。

採血をして、自分の身体にある幹細胞を化学療法前に採血で集めておき、化学療法などで異常な血球細胞を殺した後、その前にとっておいた幹細胞を移植することを、自家造血幹細胞移植(自家移植)と言います。

拒否反応が起きないように、自分の身体の幹細胞のみでの自家造血幹細胞移植(自家移植)がベストです。自家造血幹細胞移植で済むのがベストですが、自分の持っている造血幹細胞で足りない場合や、治療効果が足りないこともよくあります。

その場合は、なるべく拒否反応を起こさないように、親族もしくは型が合った他の人の幹細胞を移植する必要があります。その場合、骨髄、臍帯(へその尾)、もしくは採血から幹細胞を採取し、移植するのです。

これを、同種造血幹細胞移植と言います。同種造血幹細胞移植の際もまた同様に他の人から十分な数の幹細胞を集める必要がありますが、それもCD34を手掛かりにして幹細胞を集めるのです。

3. 虚血性疾患の血管内皮前駆細胞の移植

栄養や酸素をスムーズに送るように血管はなめらかだったのですが、加齢や食生活の変化により、動脈硬化が起き、血管が硬くなり、コレステロールの塊が血管の中で詰まって血管が細くなり、傷つきやすくなり、ぼろぼろになります。

動脈硬化が起きると、栄養や酸素を十分に送れず、身体の様々な組織に酸欠の状態を引き起こします。そして、酸欠の組織は酸素や栄養が届かないために死んでしまいます。こういった状態を虚血と言います。

こうしてぼろぼろになってしまった血管と虚血で死んでしまった組織を再生するために、幹細胞移植は、新しい治療として注目を浴びています。

幹細胞の一種である、血管内皮前駆細胞の移植は、血流が途絶えて、栄養が届かず、薬も効かない、手術もできない、切断するしかない足および、心筋梗塞などで血流が途絶えてしまった心臓などの、「虚血性疾患」の治療に今後、大きな役割を果たすと考えられています。

血管内皮前駆細胞はCD34陽性であることがわかっています。血管内皮前駆細胞は、骨髄だけではなく血液の中に存在します。採血だけで幹細胞を取り出せ、移植をすれば、虚血に陥った細胞をよみがえらせることができるのです。他人の身体の細胞を使うわけではないので、拒否反応はありません。この血管内皮前駆細胞を採取するためには、CD34陽性細胞を採取することが必要です。

細菌などから身体を守る白血球のうちの一部に単核球という血球があり、白血球のうちの5~6%を占めます。この単核球という血球のうち、CD34陽性のものは、血管内皮前駆細胞を豊富に含むことが明らかになりました。

採血した後の、白血球のうち、単核球を取り出し、その後、CD34陽性のものを分離することで、血管内皮前駆細胞を得ることができます。CD34陽性の単核球を、血管が足りない虚血組織に対し移植をすることで、単核球に含まれる血管内皮前駆細胞が新しいしっかりとした血管および虚血で死んでしまった組織自体も再生することができます。虚血で死んでしまった血管や下肢、および心筋梗塞などで壊死してしまった心筋や冠動脈の再生などの新しい治療として大きな役割を今後果たすと考えられています。

このように、血管内皮前駆細胞という幹細胞を移植する、血流の途絶えた、虚血性組織の再生治療にCD34は不可欠なマーカーとなるのです。

4. まとめ

CD34は幹細胞のマーカーとして非常に大きな役割を果たしています。

白血病において、造血幹細胞移植の際、まず患者さんが十分な幹細胞を持っているか、それはCD34陽性の細胞の数がどれくらいあるかということであり、自家移植ができるのか、できないのかという治療の方向性を決めるものです。 CD34陽性細胞が十分に足りない場合や、自家移植での治療に対して良い結果が出なかった場合、親族もしくは他のかたから幹細胞を移植する、同種造血幹細胞移植を行わないといけません。その際にも、CD34を手掛かりにして幹細胞を採取します。

また、虚血性疾患において、ぼろぼろになってしまった血管および死んでしまった組織を再生する幹細胞、血管内皮前駆細胞のマーカーとしてCD34は非常に重要です。

今後も医療が発展するにつれ、様々な幹細胞移植が新しい治療法として大きな役割を果たすと考えられます。

CD34は幹細胞の重要なマーカーとして、今後もさらにCD34は大きな役割を果たすことになるでしょう。

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