「白血病」とは?白血病の原因と、幹細胞治療について解説

この記事の概要
  • 白血病は血液のがんと呼ばれ、4つに分類される
  • 造血幹細胞移植によって白血病の根治までの見通しが立ったことにより、死亡率は大きく減じた

血液のがんと呼ばれる「白血病」ですが、どのようなものかご存知でしょうか?

この記事では、白血病とは何か?どのような幹細胞の治療があるか?について解説します。

 

目次

1. 白血病とはどのような疾患か

日本血液学会では白血病を、「白血病は遺伝子変異の結果、増殖や生存において優位性を獲得した造血細胞が骨髄で自律的に増殖するクローン性の疾患群である。白血病は分化能を失った幼若細胞が増加する急性白血病と、分化・成熟を伴いほぼ正常な形態を有する細胞が増殖する慢性白血病に分けられる。また分化の方向により骨髄性とリンパ性に大別される」と定義しています。

一般では「白血病」と一括りにされていますが、白血病は、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病の4つに分類され、これらはそれぞれ病態が異なります。

白血病は血液のがんとも言われる疾患です。日本においては、10万人当たりの患者数は、他の悪性腫瘍と比べて少ないため、統計上は発症数が多いとは言えません。しかし、多くの悪性腫瘍の発症者が中年、高齢者で占められ、小児、若年層では少ない状況と異なり、若年層でも発症者数が多い事が白血病の特徴です。また、他の臓器にできるがんのように腫瘍塊を形成しないため、手術のような外科的治療が行えないことも特徴の1つです。

原因は、造血幹細胞に遺伝子異常が起きるために白血病幹細胞が発生することです。この遺伝子異常は先天的なものではなく、後天的なものです。

この白血病幹細胞が出現した後、すぐに発症するわけではなく、この白血病幹細胞が徐々に増殖していくに従って症状が出てきます。白血病幹細胞は不死化した細胞であるため、増殖がいったん始まると増えるのみになり、減少することはありません。

この原因となる遺伝子異常も、1箇所で起こった異常がそのまま原因になるわけではなく、複数の場所で起こった遺伝子異常によって白血病幹細胞を生み出すと考えられています。

この場合の「遺伝子異常」とは、遺伝子配列の変異(変化)、遺伝子配列の一部が欠失するなどが含まれます。一般的に、がんになるまでは複数のステップの遺伝子異常が積み重なると考えられ、そのためがんの発症が比較的高齢に多い理由とされています。

ある遺伝子異常が起こり、10年以上を経て次の遺伝子異常が起こって細胞ががん化する、というメカニズムが考えられています。しかし、白血病は若年層にも多いため、この違いも含めて遺伝子変異の謎から白血病にアプローチする試みもされています。

発症メカニズムは、白血病細胞と言われる造血細胞が骨髄で増殖し、正常な造血を阻害し、骨髄だけでなく血液中にも白血病細胞が出てくることです。この白血病細胞が骨髄内に多くなると、造血が阻害されて血液細胞を作ることができなくなります。血液中の血球成分が寿命を迎えると、骨髄から新たな血球成分を供給しなくてはならないのですが、それができなくなり、血球成分が減少してしまいます。

血小板が減少すると出血が止まりにくくなり、赤血球が減少すると貧血の傾向が出てきます。このように造血できないことによって全身に不具合が出てきてしまいます。白血球細胞の出現は、遺伝子の変異によって起こるため、この遺伝子に異常を持った細胞を除去して、正常な遺伝子をもつ細胞に置き換える必要があります。

この置き換えを狙った治療が造血幹細胞移植です。正常な造血幹細胞を移植することによって、白血病細胞の増殖によって阻害された血球成分の産生を取り戻すことが目的です。

2. 造血幹細胞とは

血液は、細胞性成分の血球成分、そして血小板、そして液性成分である血漿成分から成ります。造血幹細胞は、血球成分である血球系細胞に分化することができる幹細胞で、ヒトにおいては主に骨髄に存在します。

造血幹細胞は、赤血球、血小板、肥満細胞、樹状細胞、そして白血球に分類される、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、マクロファージの全てに分化が可能な幹細胞です。血球成分の場合、ヒトの生涯を通じて供給しなければならないので、造血幹細胞は分裂時に自己の複製を作ることによって幹細胞が常に存在する状態を維持しています。

血球系の細胞には寿命があるため、造血幹細胞が分化して供給しないと、体内から徐々に減っていきます。好中球で1日、血小板で数日、赤血球では120日ほどが寿命とされています。中にはリンパ球のように、寿命が数日から数十年というばらつきのあるものも存在します。

ヒトの造血組織は骨髄内にありますが、全ての骨の骨髄で造血が行われるわけではありません。体幹の中心部分にある、胸骨、肋骨、脊椎、骨盤などの扁平骨、短骨で主に行われています。

3. 造血幹細胞の移植治療

まず、白血病患者とHLA(Human Leukocyte Antigen)が一致するドナーを探します。HLAとは、ヒト白血球型抗原と言われ、白血球の血液型に例えられるものです。つまり、白血球の“型”を示しています。これが一致していないと、ドナーの造血幹細胞を移植しても、患者側で拒否反応が起こってしまい、細胞が定着しないリスクがあります。

HLAが一致するドナーを見つけたら、移植前の処置に入ります。移植前に、患者の異常化した細胞を除去する必要があります。そのため、薬剤の投与による化学療法、または放射線療法によって異常な細胞を除去します。同時に免疫系の細胞もこの処置で除去されるので、患者の免疫系が、投与した造血幹細胞を拒絶することも抑制できます。

この治療方法は、移植前処置のうち、骨髄破壊的処置と言われるものです。最近では、そこまで徹底的に除去すると他にも影響が出てしまうために、マイルドな処置をする骨髄非破壊的前処置という治療方法が用いられることもあります。これは、移植処置による患者の死亡リスクを減少させる効果があります。そして、急性GVHD(graft versus host disease:移植片対宿主病)を防ぐために、免疫抑制剤が投与されます。

その後、幹細胞が患者の体内に注入されます。ドナーから提供された造血幹細胞が、患者の身体に生着したかどうかは、好中球の回復で判断するのが一般的です。骨髄破壊を経て移植した場合は、ドナー由来であるかどうかの確認が必要です。生着しないケースは、移植しても全く生着しないという一次性生着不全、一度は生着したが造血能が失われた場合は二次性生着不全と呼びます。この生着不全が確認された場合は、再移植の準備に入ります。

GVHDの発症は、移植後100日以内に発症する急性GVHD、100日移行に発症する慢性GVHDに分けられます。急性GVHDの場合、主に皮膚、消化管、肝臓に障害が起こります。皮疹、下痢などが具体的な症状です。免疫抑制剤を投与していても、一定の確率で急性GVHDは発症します。

慢性GVHDの場合、病態が自己免疫疾患に類似します。肝臓への障害、皮膚、間質性肺炎などが代表的な症状ですが、他にも全身倦怠、関節痛、白内障、血液再生不全など、急性と比べて症状が多様なことが特徴です。

造血幹細胞移植は、白血病の治療において画期的な治療法です。骨髄移植が確立する前、また、免疫抑制剤などによる前処置が確立する前は、非常に深刻な疾患でした。しかし、造血幹細胞移植によって根治までの見通しが立ったことにより、死亡率は大きく減じています。

しかし、大量の薬剤を使う大量化学療法であり、放射線も使うことがあるため、患者のQOL(生活の質)は低くなる傾向にあります。化学療法、放射線療法によって出現する症状の中には慢性化するものもあり、健常時の生活レベルまで戻すことは簡単なことではありません。

逆に、化学療法などによる慢性疾患が憎悪することによって深刻な状況になる可能性もあります。現在は、十分なインフォームドコンセントが必要な疾患とされ、患者とその家族、医師、看護師を含めて治療の見通しと合意を得る必要がある疾患と認識されています。

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