この記事の概要
  • 皮膚疾患の種類は非常に多く、代表的なアトピー性皮膚炎は、90%が5歳までに発症する。
  • 脂肪由来幹細胞の静脈投与が自由診療で実現している

皮膚疾患に悩む患者は国内でも約50万人ともいわれ、多くの人が悩んでいる症状です。

 

特に皮膚疾患は外見でわかるものが多く、程度は問わず悩まれている方は多いでしょう。

この記事では、皮膚と幹細胞の関係、現状の幹細胞治療について解説いたします。

1. 代表的な皮膚疾患

皮膚疾患とは、皮膚が原因で起こる疾患、別の臓器、器官が原因の疾患により皮膚に症状が現れるなどを含む、皮膚に対する疾患全般を指します。

湿疹、蕁麻疹、水疱症、膿疱症、紅斑、紫斑、母斑、色素異常症など、目に見える状態を反映した名前がついている疾患と、皮膚血管炎、角化異常、代謝異常症、肉芽腫性疾患、良性腫瘍、悪性腫瘍、そして感染症、膠原病などの疾患のふくめて表現されるので、非常に多くの種類が皮膚疾患と呼ばれます。

その中でも、アトピー性皮膚炎は多くの人が悩まされている疾患です。アトピー性皮膚炎は、アレルギー反応に関連がある症状のうち、皮膚に炎症が出現するものを指します。アトピーという言葉は、現在は医学用語として、タンパク質のアレルゲンに過剰に反応する傾向を意味します。場合によっては、気管支喘息、鼻炎にも使われる言葉です。語源はギリシャ語のアトポスという「特定されていない」という意味の単語からきています。

患者の90%が、5歳周辺までに発症します。原因は複数あると考えられています。遺伝的要因が大きいとされていた時期もありましたが、過去30年間で、小児アトピー性疾患(喘息、アトピー性皮膚炎など)が増加してきており、この増加は遺伝的要因のみでは十分な説明ができません。

ただし、遺伝的要因は従来言われてきたように根本的な原因とは言い切れなませんが、原因の一つではないかと考えられています。傾向として、家族歴、既往歴はアトピー性皮膚炎発症と相関関係があり、免疫系には遺伝的要因によって個人差が現れる現象が多く見られます。

また、日本人のアトピー性皮膚炎患者のうち、約30%の患者に、皮膚の角層タンパク質の1つであるフィラグリンをコードする遺伝子に、変異が見られることがわかっています。フィラグリンがないと、角層のバリア機能が十分機能せず、皮膚の水分保持が不十分になります。

フィラグリン遺伝子の変異を持つ患者の場合、2歳未満で発症する割合、重症になる割合が高いという報告があります。アトピー性皮膚炎の症状は、成長と共に改善され、寛解にいたるケースが見られますが、フィラグリン遺伝子変異を持つ患者の場合は寛解の割合が低いという報告もあります。

このように、アトピー性皮膚炎は、遺伝子要因、免疫系の要因などが複雑に絡み合って発症していると考えられています。特に免疫系の過剰反応、過剰応答は皮膚の炎症をまねき、アトピー性皮膚炎の症状を進行させる要因です。

2. 皮膚と幹細胞

皮膚は上皮組織であり、細胞の作りかえ、入れ替えが身体の中では比較的活発な部位です。皮膚の上皮組織は、真皮に接している単層の基底細胞のみが細胞分裂をします。この基底細胞は、角質細胞を含む表皮の全ての細胞に分化します。このことから、基底細胞は皮膚の幹細胞と考えられています。

つまり、表皮幹細胞が単層の構造を作り、皮膚の様々な細胞を供給しているわけです。この皮膚の構造が不完全になると、外的刺激に対して皮膚が敏感になり、皮膚の炎症が起こりやすくなるのではないかと考えられています。

実際に、皮膚バリアが構造的に弱くなると、皮膚の感覚神経が過剰反応し、痒みを引き起こすという研究結果が理研(理化学研究所)から発表されています。この研究では、アトピー性皮膚炎のモデルマウスを使い、皮膚バリアの減弱によって、皮膚の感覚神経が過剰に活性化することが明らかになっています。

さらに、TRPA1(Transient receptor potential A1)という様々な痛みを感じるために必要な分子の機能を抑制すると、皮膚の感覚神経の異常な活性化と痒みが抑制されることも明らかになっています。

火傷の治療に伴う皮膚再生に表皮幹細胞を使おうという研究などもありますが、表皮幹細胞を使った皮膚細胞再生はアトピー性皮膚炎の治療にそれほど効果的とは言えません。なぜなら、アトピー性皮膚炎で感じる痒みの範囲は広いので、その範囲全ての皮膚細胞再生によるバリアの強化は難易度がかなり高いことが予想されるからです。アトピー性皮膚炎の症状である痒みは、免疫系の過剰活性化が原因なので、この部分を抑制することが症状改善により効率的と言えます。

3. 皮膚疾患に対する幹細胞治療

アトピー性皮膚炎についての研究は、患者数の多さから重要な研究とされており、様々な研究結果が発表されています。その中から幹細胞を使った治療のアイデアがいくつか存在します。

主なターゲットとしては、過剰な免疫反応です。この免疫反応を抑制することによって、アトピー性皮膚炎の症状抑制を狙うものですが、この抑制機能の役割を幹細胞に担わせることが考えられています。

体性幹細胞である間葉系幹細胞は、抗体などを介する獲得免疫と、昆虫からヒトまで幅広い動物種が持つ自然免疫、双方のシステムを強力に抑制することが知られています。尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)の表皮で大量に産生されているインターロイキン8は、この間葉系幹細胞によって産生が抑制されます。

一方で、ネットで検索すると、アトピー性皮膚炎の幹細胞治療を行っているクリニックが結果として多く表示されます。

そのうちのいくつかは、患者の脂肪から間葉系幹細胞を採取して使う、つまり自分の細胞を使うことによって拒否反応を避ける方法です。さらに、幹細胞そのものではなく、自分の幹細胞を培養した培養液を患者に投与するという治療法が検索で多く表示されます。

幹細胞を人工的に培養すると、幹細胞は様々な分泌分子を培養液中に放出します。この分子の中には分化誘導、炎症抑制に機能する分子が含まれており、アトピー性皮膚炎の症状改善に効果があるとされており、幹細胞を培養した培養液上清を静脈投与などによって治療に使うクリニックも多数存在します。

しかし、ここで注意しなくてはならないのは、幹細胞が分泌する分子には様々なものがあり、細胞に良いものだけでなく、悪影響を及ぼすもの、また幹細胞の細胞活動の結果生まれた老廃物も含まれるということです。

さらに、どんな分子がどれほどの量、濃度でその培養液に含まれているのかについては、培養すれば常に一定量含まれるというものではありません。それらの成分量が少なければ治療効果は低いものとなりますし、有害な分子の量が多ければ思わぬ副作用が起きかねません。

こうした治療のいくつかは自由診療で行われております。治療を受ける際には、医師からの説明を十分“理解”した上で行うことが重要です。どんな成分がどれだけの量で含まれているのか、どうやってその分子の量を定量したのか、それらはどのようにして保証されているのか、などをきちんと確認した後に意志を決定しましょう。

幹細胞自体を使う治療では、患者の体内から取り出した幹細胞を静脈投与によって体内に戻し、幹細胞の免疫抑制機能によってアトピー性皮膚炎の症状を改善することが目的になります。

しかし、この治療方法は効果についての確証が得られていません。つまり、効果のある場合もあるし、ない場合もある、ということです。この“本治療方法は効果については確証は得られていない”という内容を患者に正直に提示するクリニックもあります。この効果については、予め意思に確認し、納得できた場合にのみ治療を行いましょう。

現時点では、アトピー性皮膚炎に対する幹細胞、または幹細胞関連製品を用いた治療は、ほとんどが自由診療であり、患者は高額の治療費を払わなければなりません。アトピー性皮膚炎は多くの人が苦しんでいる疾患であり、治療方法確立のニーズも高い疾患です。この様な疾患を自由診療で治療しようとするときには、慎重に情報を吟味することが必要です。

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