【2022年~2030年予想】世界の神経修復と再生市場の成長

目次

1. 神経修復の再生市場

ビジネスとして成長を続ける再生医療の神経修復分野について、DKI Inc.が2022年から2030年にかけての市場予測について市場レポートを発表しました。

このレポートでは、神経修復における製品別解析として、神経導管、神経ラップ、迷走神経刺激、仙骨神経刺激、脊髄刺激、経皮的電気神経刺激、経頭蓋磁気刺激法を挙げて、今後約10年の動向を解析しています。

さらに、神経障害、神経移植、幹細胞治療というアプリケーション別、または南北アメリカ、ヨーロッパ、アジアという地域別についても“セグメント”として解析しています。

これらのセグメントの解析は、様々な要因に基づいて、さらに細かくサブセグメント化されて、複合年間成長率、評価期間の市場価値、ボリュームについての情報も掲載されています。

地域別のレポートは、北アメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋、ラテンアメリカ、中東とアフリカに区分され、それぞれの地域について予測を算出しています。

北アメリカは、市場シェアにおいては世界をリードする地域です。

住民の治療に対する意識、そして整備されている、またはこれから整備されるインフラによって、今後も世界をリードするという立場は変わらないとの予測です。

成長率においては、日本が含まれるアジア太平洋地域が最大の成長を示すと予測されています。

アジア太平洋地域では、老人人口の増加と、神経障害の有病率増加が見られ、この傾向は予測期間中の2022年から2030年の間も継続するという見方から、アジア太平洋地域では神経修復と再生市場に有利な状況になると予測されています。

2. 神経修復はどういった医療か

神経修復と再生は、神経組織、神経細胞の再生、またそれらの組織、細胞の産物を再生させることが中心です。

疾患の中で注目されているのは、アルツハイマー病パーキンソン病であり、今後も治療が必要な人口は増えていくと予測され、アルツハイマー病に苦しんでいる人口は、2020年には世界で約580万人ですが、2050年までには約1380万人、パーキンソン病は、現時点でパーキンソン病の影響を受けた人々は、約14万5千人、2025年までには16万8千人を超えると予測されています。

各国で高齢者人口の増加が予測されるため、これら神経障害に対する政府支援の高まりによって、神経修復と再生医療関連の市場が後押しされるとされています。

幹細胞を使った神経修復の研究、技術に対する公的資金の投入、また商業化を視野に入れた民間企業の投資額は増加する傾向にあり、これらの要因によって市場は拡大し続けることはほぼ確実でしょう。

しかし一方で、健康の安全を守るための承認規制が厳しくなっていくことも予想され、こういった規制強化がある程度成長のブレーキとなることも考えておかなければなりません。

3. 神経修復のターゲットとなる疾患

神経修復のターゲットとなる疾患のうち、最も注目を浴びているのがアルツハイマー病です。

アルツハイマー病は、認知症とリンクして語られることが多い疾患で、患者に対しては手厚いケアなどを必要とし、公的資金、または家族の負担を考慮すると、金銭的コスト、払わなければならない労力が最も高い疾患です。

アルツハイマー病は、アルツハイマー型認知症が症状であり、認知機能が低下する、人格が変化するという症状を伴います。

認知症の多くは、このアルツハイマー型認知症であり、日本人では、脳血管性認知症、レビー小体病と並んで最も多いタイプです。

アルツハイマー病は、脳の萎縮が特徴的です。

これはアミロイドβが脳組織に蓄積されることによって、脳細胞が死滅することで起こります。

これに伴い、記憶障害、見当識障害、注意障害、視空間認知障害、学習障害、問題解決能力障害が進行性の症状として現れます。

進行するに従って、生活に支障が出てくるため、重度になると摂食などの、生活行動が自分で行うことができなくなり、意思疎通ができなくなるなどの症状を経て、最終的には寝たきりになってしまいます。

高齢化社会の到来によって、人口における寝たきりの高齢者の割合が増加すると、国レベルでの経済の圧迫要因となります。

そのため、幹細胞を使った再生医療などでアルツハイマー病の進行を抑制する、あるいは停止させるということは、国にとっては大きな利益となる医療行為となります。

同時に、家族にとっても介護負担、金銭的負担を軽減できるため、社会のニーズとして神経修復医療は要求性が高まっています。

幹細胞、特に神経幹細胞を用いた医療技術構築のための研究は、世界的に盛んに行われている研究分野であり、日本においても京都大学のiPS細胞研究所をはじめとして、多くの研究期間で行われています。

アルツハイマー病だけでなく、神経の修復が必要とされる疾患、ケガは、どうしても患者の身体的な能力に影響してしまうため、ケアするためのコストが高くなりがちです。

社会保障費の出費抑制が世界各国の課題となりつつある今、こうした治療方法の確立が求められていることは、神経修復市場にとっては、成長のための大きな追い風となっています。

さらに、高齢化の進行と共に有病率が上昇すると考えられている疾患がパーキンソン病です。

手足の震え、動作、歩行が困難になるなどの運動障害を示す疾患であり、進行性の神経変性疾患に分類されます。

進行すると自力歩行が困難になり、車椅子生活、寝たきりになる場合があります

40歳以上の発症が多く、65歳以上の割合が多いのですが、発症の可能性は10歳代から80歳代まで幅が広くなっています。

日本における有病率は10万人当たり100人から150人と考えられていますが、欧米では10万人あたり300人と見積もられています。

このように、人種差、地域差が見られますが、この原因は不明です。

一般的に白人と呼ばれる人達に比べると、アフリカ系アメリカ人の発症率は75%の減少、アジア人の場合は、50%から60%の減少が見られます。

とはいえ、日本人のパーキンソン病の有病率は増加しており、この原因は高齢化に伴うもの、診断率の向上、治療が進歩したことにより、患者の寿命が延長したと考えられています。

このパーキンソン病の治療においても、幹細胞を使った治療の確立が期待されています。

現在、臨床用のiPS細胞を使ったパーキンソン病治療の非臨床研究が行われています。

これは、まだ具体的に患者を使った研究にいたっておらず、実験室レベルでの研究にとどまっているということですが、すでにドーパミン神経前駆細胞の製造工程など、治療として商業化するための研究は着々と進んでいます。

4. 今後の市町拡大に伴う予測

今後、iPS細胞、神経幹細胞を使った基礎的な研究治験を増やし、臨床に応用していく方向へ進んでいくと考えられます。

そのための培養基材、培養に必要な試薬類、実験試薬などの消費は拡大していくため、これらの市場も、神経修復の再生医療市場の拡大に伴って、さらに大きくなっていくと予想されます。

神経修復の再生医療市場は、対応する細胞類だけでなく、化学製品などの実験、研究に必要なものの生産拡大も必須です。

培養細胞を使った研究が、さらに発展することによってさまざまな生命科学の分野で共通に使われている製品の不足が予想されます。

これらの生産拡大も伴い、神経修復市場は今後さらに大きくなっていくと予想されますが、先に述べたように各国政府の規制強化による市場拡大ブレーキについては敏感に情報を集める必要があります。

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