この記事の概要
  • 関節リウマチは生活習慣、先天的な遺伝要因、感染症による免疫系の作用が原因といわれる
  • 関節リウマチの幹細胞治療はiPS細胞と間葉系幹細胞治療が有効とされる
  • 関節リウマチからなる変形膝関節症について幹細胞治療で改善がみられる症例が多い

日本国内でも70万人~100万人の患者がいるといわれる関節リウマチですが、幹細胞をつかった治療が注目されています。

今回の記事は、関節リウマチの症状と、幹細胞をつかった治療効果について解説します!

1. 関節リウマチとは

リウマチは、膠原病に分類される疾患を指します。膠原病とは、複数の臓器に炎症が起こり、その結果臓器の機能障害、作用障害を起こす疾患です。結合組織疾患、自己免疫疾患、リウマチ性疾患の特徴が重なった疾患が膠原病とされ、膠原病に分類される疾患の多くは、この3つの疾患の特徴を持っています。

このうち関節リウマチは、女性に比較的多く見られる疾患で、自分自身の免疫が手足の関節を侵すことにより、関節の痛み、関節の変形が生じる疾患であり、炎症性自己免疫疾患に分類されます。関節が疾患部位ではありますが、脊椎や各臓器にも病変が拡大する場合もあります。

関節リウマチ発症のメカニズムの詳細は現時点では不明な部分が多いのですが、生活習慣、先天的な遺伝要因、感染症による免疫系の作用などが原因であることが示唆されています。現在までに報告されている報告を挙げると、

  • マイコプラズマの感染が関節リウマチの原因となり得る
  • 糖分を多く含んだ清涼飲用水を多く飲む習慣がある人は発症リスクが高い
  • リウマチ患者の多くは歯周炎罹患者が多く、統計的な解析でも有意性がある
  • シトルリン酸と喫煙による原因説がある

関節リウマチの場合、関節炎の病態を示します。関節リウマチの場合は、関節部分の滑膜炎が起こることがほとんどです。

症状は、まず朝の起床時に、手を握ることが困難になるこわばりが症状が起きます。朝の活動に支障が出るくらい長期にわたるこわばり(約1時間以上)は関節リウマチなどのリウマチ性疾患の可能性が考えられます。

そして次に関節痛が起こります。この関節痛は、手の指、足の指という末端から、手首、肘、肩へと拡がる傾向があり、ほぐそうと動かすとかえって痛みが増大します。同時に、全身の倦怠感を感じるようになります。

さらに症状が進み関節炎が進行すると、関節の比較的柔らかい構造が破壊され、骨と骨が直接に接する状態になり、関節を動かすことができなくなります。

関節以外への影響では、血管、眼、肺などの循環器、消化管に影響が出ます。血管では、手指の虚血、痛みを伴うレイノー現象、血管障害による狭心症、心筋梗塞、肺高血症、糸球体硬化症、脳梗塞のリスクが上昇します。また、これらの疾患を発症した場合、関節リウマチを患っていると、一般的な患者と比べて予後が悪くなる傾向があります。

眼に出る影響としては、シェーグレン症候群、乾燥性角結膜炎などがよく見られます。関節リウマチは血管に影響がある事から、強膜炎が見られた場合は悪性関節リウマチの可能性があります。

肺は、先ほど挙げた血管障害による肺高血症以外にも、間質性肺炎、軌道病変、胸膜病変、リウマチ結節、血管病変などを合併することがあります。肺関連ではその他に、睡眠時無呼吸症候群が合併症としてあらわれることもあります。

消化管への影響は、関節リウマチ自体というよりも、慢性の炎症による影響と血管由来の影響が多く見られます。アミロイドーシス、リウトマイド血管炎による虚血性大腸炎が代表的です。一般的に、関節リウマチ患者は、定期的な上部消化管内視鏡を受けることが推奨されます。

2. 関節リウマチと幹細胞治療

関節リウマチの関節破壊は進行性で、破壊された場合は不可逆です。つまり、治療を行っても、元の関節の状態に戻すことは難しいとされています。

そのため、幹細胞を用いた治療に期待されることは、関節機能の再生とそれに必要な細胞の再生です。この再生に使われる細胞は、iPS細胞と、間葉系幹細胞が期待されています。

間葉系幹細胞は、骨芽細胞、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞など、関節を校正する中胚葉由来細胞に分化することができます。自己増殖能力、自己複製能を持っており、骨髄、脂肪細胞などからの採取が容易に行うことができます。

また、関節リウマチの炎症作用に対して免疫抑制作用をもち、移植拒絶反応について臨床応用もされています。

この間葉系幹細胞を分化させて関節を再生することが目的ですが、炎症が起こっているため、その部分ではサイトカインが分泌されており、細胞の分化、増殖への影響が危惧されます。しかし、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、炎症性サイトカインの存在下においても、関節を構成する骨芽細胞、軟骨細胞への分化が可能です。

免疫抑制作用については、破骨細胞の分化誘導を抑制、そして制御性T細胞を誘導して抑制作用を発揮します。

これらのステップからなる関節再生は、コラーゲン関節炎モデルラットを用いた研究で効果が確認されており、免疫抑制作用、関節破壊抑制作用、関節炎制御作用が誘導されることが確認されています

日本国内のいくつかのクリニックでは、幹細胞治療を用いた関節リウマチの治療が行われています。変形性膝関節症に幹細胞治療が使われる事が先行して行われており、その応用として関節リウマチにも用いられるケースがあります。

変形膝関節症に幹細胞治療が用いられた症例は多く、VAS(痛みを数値化したもの)、KOOS(膝の状態を数値化したもの)のうち、KOOS-Pain(痛みの状態をスコア化)、KOOS-Symptoms(症状を数値化したもの)、KOOS-ADL(日常生活動作のしやすさを数値化したもの)、KOOS-Sportsm(運動機能をスコア化)、KOOS-QOL(生活の質をスコア化)について改善が見られる結果になっています。

この変形性膝関節症について調査した内容を、幹細胞を用いて関節リウマチを治療した患者について調べてみると、VASについては変形性膝関節同じ効果が見られています。これはVASと共に、痛みをスコア化したKOOS-Painの結果とも一致しており、6ヶ月にわたって痛みの改善が見られます。

KOOS-Symptomsは、膝にたまる水、膝の腫れなどの症状をスコア化したものですが、変形性膝関節症の患者グループに比べて改善の速度はやや遅いのですが、着実に改善することを示す結果になっています。

日常生活動作のKOOS-ADLは、変形性膝関節症の患者グループと比べて、スコアの改善は遅いという結果になっています。ただし、運動機能の結果については関節リウマチの患者グルプーの方が変形性膝関節症の患者グループよりも回復が早いという結果が見られます。これについては、関節リウマチの症例数が現時点では多くないので、変形性膝関節症の症例数と同じレベルまで増やさないと、違いはわからないと考えられます。

さらにこの研究は「後ろ向き研究」と呼ばれるもので、過去を振り返る形で回答します。そのために、患者の主観が入りやすいという欠点があります。今後、さらに詳細な臨床治験とその結果の分析がされるものと推測されます。

また、関節リウマチと変形性膝関節症は同時に罹患することがあります。これらは日常生活の動きを大きく阻害する疾患のため、生活の質の低下が顕著に見られます。そのため、有効な治療法の確立が強く求められている疾患です。

iPS細胞による治療よりも、比較的安価で簡便に行うことのできる自己間葉系幹細胞を使った治療が主流になると予想されます。やはり、身体の各所から採取できるため、状況によって採取場所を選ぶことのできる間葉系幹細胞を使うことが患者のためと考えられています。患者の経済的負担、また免疫応答の抑制効果を高めることにつながるため、関節リウマチの幹細胞治療は比較的手軽に受けることのできる治療の一つとなると思われます。

運動機能がどれだけ回復されるのか、再発のリスクはどうなのか、そして幹細胞の分化によって関節を構成する細胞群がどの程度健常状態に近くなっているかなど、今後の臨床治験によっては実用化は比較的早い幹細胞治療方法と言えます。

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