この記事の概要
  • 厚生労働省が第1種・第2種・第3種と種別し再生医療技術を守っている
  • 特に第1種は人の生命や健康に与える影響が不確定なものも含まれる
  • 日本では厚生労働省の承認を受けずに無免許で行うクリニックがまだまだ存在する

 

幹細胞などを使った医療行為は、国によって管理されているものと、国が実態を十分つかめていない自由診療のものがあります。自由診療の幹細胞治療には、有効性、安全性が確認されていないものもありますので、まずここでは国によって管理されている幹細胞治療について解説します。

今回は、国(厚生労働省)によって分類される第1種再生医療、第2種再生医療、第3種再生医療の3つの分類について説明し、国内で受けられる治療について解説します。

1. 第1種再生医療

相当な注意を払っていても、患者の健康、生命に重大な影響を与える可能性があるのが医療です。特に再生医療は、まだまだ患者の生命、健康にどのような影響を与えるのかが不明な点が多いのも事実です。厚生労働省ではそのような人体への影響が不明確なものも第1種再生医療として定義しています。

  • ヒト胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、人工多能性幹細胞様細胞を培養したり、加工したものを用いる再生医療技術。
  • 遺伝子導入などの操作を行った細胞、またはその細胞に培養などの加工を施した細胞を用いる医療技術。
  • 動物の細胞に培養、他の加工を施した細胞を用いる医療技術。
  • 投与を受ける患者以外のヒトの細胞に、培養、その他の加工を施した細胞を用いる医療技術。

第1種は、生命や健康にある程度リスクがあったとしても行う再生医療が指定されます

加工、という言葉が出てきますが、これは遺伝子改変を含み、分化誘導のための薬品添加や、環境条件の調節を含みます。

治療の例を挙げると、遺伝子導入されたリンパ球を用いた各種のがん治療、ただし新規性が高い、細胞調整の結果均質性が低い治療に該当します。そして自己脂肪肝細胞を用いた腎疾患治療、これも新規性が高い、自家移植のものが該当します。早期発見段階のがん治療として、もちろんリスクを患者さんに説明した上で、治療に用いられるケースがあるということです。

そして、iPS細胞、ES細胞由来の細胞製品を用いた再生医療も、新規性が高いものについては第1種に指定されています。

2. 第2種再生医療

第1種再生医療は、患者にどのような影響があるか、不明なものを含んだ再生医療技術を指しますが、第2種再生医療では影響が不明な治療を除いた、以下の再生医療が指定されています

  • 培養した細胞、または当該細胞に培養、その他の加工を施したものを用いる再生医療技術。
  • 培養した細胞、または当該細胞に培養、その他の加工を施したものを用いる再生医療技術のうち、ヒトの身体の構造、機能を再建、修復、または形成を目的とする技術。
  • 細胞の相同利用ではない医療技術。
ここがポイント

相同利用とは、「採取した細胞が再生医療等を受ける者の再生医療等の対象となる部位の細胞と同様の機能を持つ細胞の投与方法」を指します。つまり、欠損した組織を再生するために、幹細胞を使って同様の機能を持たせ、それを患部に投与、注入すれば相同利用に該当します。

例えば、腹部から脂脂肪組織由来幹細胞を採取して、乳がんの手術で摘出した乳房の再生に使うことは相同利用になります。脂肪組織由来幹細胞を用いて乳房の脂肪組織を再建する事によって乳房を再建するからです。

一方で、脂肪組織由来幹細胞を糖尿病の治療を目的として経静脈的に投与する事は、脂肪組織の再建が目的ではないため、相同利用にはなりません。

第2種再生医療の代表的な治療としては、相同利用、かつ自家移植の自己脂肪細胞由来幹細胞を用いた豊胸術、乳房再建術が挙げられます。

3. 第3種再生医療

ここに分類されるものは、第1種再生医療、第2種再生医療以外の再生医療技術を用いる再生医療です。

例を挙げますと、実施経験数が多く自家移植の活性化リンパ球を用いた従来の各種がん治療が挙げられます。

4. 幹細胞関連の治療で注意すべきこと

インターネットで「幹細胞」「再生医療」と検索すると、多くのクリニックのサイトが出てきます。その多くは自由診療で再生医療を提供していますが、2016年、日本のこういったウェブサイトを調査した結果がカナダの医学雑誌に掲載されました。

このウェブサイトの多くが、科学的根拠を十分に示していなかったり、とにかくマーケティング手法を駆使していた事が報告されています。中には、効果や安全性が確認されていない治療もあるのではないかと予想され、このことが幹細胞による治療などの不信に直結するのではないかと危惧されています。

2014年11月に、「再生医療等安全性確保法」が導入されました。この法律は、「再生医療等技術の安全性確保と生命倫理への配慮等について施行された法律です。この導入後は多少は少なくなったのではないかと考えられていますが、それでもそういったウェブサイトは以前存在しています。

全体的な特徴として、幹細胞の治療メリットを強調するのですが、治療におけるリスクについて科学的な説明を加えていないことが挙げられます。

インターネット医療協議会(JIMA:Japan Internet Medical Association)が2007年に作成した自主基準に、「eヘルス倫理コード2.0」というものがあります。これは、インターネットで医療・健康に関連する情報、サービスを提供するときに、サイトの運営者が治療者の立場に立って、情報の質と信頼性の確保について努力すべき、という基準です。

ほとんどのクリニックのサイトが、このeヘルス倫理コード2.0の最低限の基準をクリアしていませんでした。ウェブサイトの情報が客観的か、偏りがないかを閲覧者が判断できるように、誰がどういう立場で内容を制作したのかがウェブサイト上に示してなければいけません。しかしほとんどのウェブサイトは示していませんでした。

また、テレビ、雑誌で取り上げられたという情報を記載するウェブサイトが多く、科学的なエビデンスよりも、「マスコミに取り上げられた注目の医療」をアピールしている傾向がありました。

治療目的の多くは、がんなどの疾患治療、そして美容目的のものが多数を占めます。アンチエイジング、若返りなど、雑誌などのマスコミに取り上げられやすいキーワードを使っている事も特徴的です。

そして、臨床研究での検証が十分ではない幹細胞治療であっても、効果が確実であるような誤解をまねく表現が多く見られます。

ウェブサイト上での医療情報は、医療広告の規制対象とはならず、自主規制であるeヘルス倫理コード2.0によって自発的な注意が求められていますが、必ずしも現在それが上手く機能しているとはいいがたい状況です。

5. 日本で幹細胞治療、再生医療を受けるには

自由診療で行われている再生医療が全て効果がない、とは言い切れません。が、ビジネス優先で、幹細胞、再生医療という言葉を利用しているものが多い事は否めない事は事実です。

ウェブサイト上の記載から科学的エビデンスは確かに掲載されているのか、リスクについて判断するには、かなりの科学的知識を必要とし、一般の方には難しいかもしれません。

規制をかけるべきという声もありますが、厳しすぎる規制は別な方面の動きを阻害する結果となり、時に再生医療の進歩の足かせになる可能性もあります。

幹細胞治療、再生医療を受ける場合は、まずは治療実績がある医療機関を探すところから始めるのが良い方法ではないかと考えられます。

この分野については、今後時間をかけて整備されていく部分ではありますが、医療は時間との闘いという面もあるので、あまり悠長な事を言っていられないのも事実です。治療を受ける側とすれば、情報をなるべく多く集め、時には第三者の意見も取り入れながら、治療を受けるかどうかを決めざるを得ないのが現状です。

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