混合性結合組織病とは、複数の膠原病の特徴が重なる病気
混合性結合組織病は、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎や皮膚筋炎に似た症状が重なって現れる自己免疫疾患です。英語ではMixed Connective Tissue Diseaseと呼ばれ、MCTDと略されます。血液検査では、抗U1-RNP抗体が高力価で陽性になることが特徴です。
代表的な症状には、レイノー現象、手指や手背の腫れ、多発関節炎、皮膚硬化、筋力低下、間質性肺疾患、肺動脈性肺高血圧症などがあります。難病情報センターでは、レイノー現象はほぼ全例に認められ、手指・手背の腫脹は80〜90%にみられると説明されています。
患者数は、令和5年度の医療受給者証保持者数で10,199人です。男女比は1:13〜16とされ、圧倒的に女性に多い病気です。発症年齢は30〜40歳代が多い一方、小児から高齢者まで幅広い年齢で発症します。
MCTDは、症状が多様であることが大きな特徴です。関節症状が中心の方もいれば、肺や心臓の合併症が問題になる方もいます。そのため、治療では病名だけでなく、どの臓器にどの程度の障害があるかを見極めることが重要になります。当機構では、標準治療を大切にしながらも、免疫の乱れに働きかける再生医療の選択肢を知っていただくことが重要だと考えています。
標準治療は、最も重い臓器障害を見極めて組み立てる
混合性結合組織病の治療は、患者様が持つ最も重い病態に合わせて組み立てられます。原因そのものに基づく治療は確立していないため、現在の標準治療は、自己免疫による炎症を抑え、臓器障害を防ぐことを目的に行われます。
軽症から中等症では、副腎皮質ステロイドが使われることがあります。発熱や関節炎などではプレドニゾロン20mg/日以下、胸膜炎や筋炎などでは30mg/日程度が検討されることがあります。ただし、軽症ではステロイドを使用しない場合もあり、適応と用量は慎重に判断されます。
重症例では、血小板減少、ネフローゼ症候群、重症筋炎、間質性肺疾患の急性増悪、中枢神経症状などに対して、高用量ステロイドやステロイドパルス療法が行われることがあります。免疫抑制薬としては、アザチオプリン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチルなどが病態に応じて併用されます。
肺動脈性肺高血圧症には、プロスタサイクリン製剤、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬、グアニル酸シクラーゼ刺激薬などの肺血管拡張薬が用いられます。間質性肺疾患では、進行の速さに応じて免疫抑制療法や抗線維化薬のニンテダニブが使われます。治療方針や効果は個々の状態により異なるため、現在の治療内容については主治医にも必ずご相談ください。
既存治療の限界は、再燃と心肺合併症の管理にある
混合性結合組織病は、以前は比較的予後がよい病気と考えられていました。しかし、長期的にみると、すべての患者様が軽症のまま経過するわけではありません。難病情報センターでは、1997年調査で5年生存率が93.7%とされ、生命予後が不良な患者様が存在することが示されています。
特に注意が必要なのが、肺動脈性肺高血圧症です。MCTDの約10%に合併し、死亡リスクを4.5倍以上に高めると説明されています。初期には疲れやすさ、動いた時の息切れ、動悸などとして現れることがあり、症状が目立たない段階から定期的に心臓超音波検査などで確認することが重要です。
また、治療に反応しやすい症状と、残りやすい症状があります。SLE様症状や多発性筋炎様症状は治療で改善することがありますが、レイノー現象、手指腫脹、全身性強皮症様症状は残りやすいとされています。ステロイド減量中に再燃することもあり、長期管理では免疫抑制薬を含めた調整が必要になります。
既存治療には副作用もあります。ステロイドや免疫抑制薬は、感染症、骨粗鬆症、糖尿病、骨髄抑制、肝障害などに注意が必要です。疾患活動性を抑えることと、薬の負担を減らすことのバランスが難しい点が、MCTD治療の大きな課題です。当機構では、こうした不安を抱える方に対して、骨髄由来MSCや培養上清液という再生医療の考え方を知っていただくことが大切だと考えています。
当機構が注目するのは、骨髄由来MSCによる免疫再調整の考え方
再生医療の中でも、当機構が特に有望と考えているのは、間葉系幹細胞、なかでも骨髄由来MSCです。混合性結合組織病は、自己免疫反応によって関節、皮膚、筋肉、肺、血管などに炎症や障害が起こる病気です。そのため、症状だけでなく、背景にある免疫の乱れをどのように整えるかという視点が重要になります。
混合性結合組織病そのものに対する幹細胞治療は、現時点で標準治療として確立していません。一方で、SLE、全身性強皮症、皮膚筋炎、多発性筋炎、関節リウマチなど、MCTDと重なる自己免疫性結合組織病では、間葉系幹細胞の研究が進められています。
間葉系幹細胞は、骨髄、脂肪、臍帯などに由来する細胞で、免疫反応を調整する作用が研究されています。T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージなどの働きに影響し、過剰な炎症を抑える可能性があります。MCTDのような自己免疫疾患では、この免疫調整作用が研究上の関心になっています。
当機構では、特に骨髄由来MSCが、免疫系疾患において重要な可能性を持つと考えています。MCTDでは、肺高血圧症、間質性肺疾患、筋炎、関節炎、血管障害など、複数の病態が重なることがあります。骨髄由来MSCの免疫調整作用や組織環境を支える働きは、こうした複雑な疾患を考えるうえで重要な視点です。
国内では、骨髄由来MSCの培養上清液という選択肢がある
国内では、骨髄由来MSCの培養上清液を使った治療が可能です。培養上清液とは、MSCを培養した際に分泌される成分を含む液体です。そこには、サイトカイン、成長因子、細胞外小胞など、細胞間の情報伝達や組織環境の調整に関わる成分が含まれるとされています。
MCTDのような自己免疫疾患では、炎症性サイトカイン、T細胞やB細胞の異常な働き、血管内皮障害、線維化などが複雑に関わります。そのため、単に症状を抑えるだけでなく、免疫バランスや組織環境をどう支えるかという視点が重要になります。骨髄由来MSCや培養上清液は、この免疫調整と組織環境へのアプローチとして、当機構が重視している分野です。
mRNAの観点では、MCTDに対する承認済みmRNA医薬や、mRNAを用いた幹細胞治療は確認できません。一方、MSC由来エクソソームには、mRNAやmicroRNAが含まれることが知られています。mRNAはタンパク質を作る設計図の役割を持つ分子で、microRNAはmRNAの働きを調整する小さなRNAです。
自己免疫性結合組織病の研究では、MSC由来エクソソームやmicroRNAが、炎症性サイトカイン、T細胞分化、線維化、血管内皮障害に関わる経路を調整する可能性が検討されています。ただし、MCTD患者様で特定のRNA経路を調整すれば臨床的に改善すると確認されたわけではありません。当機構では、研究段階の情報を過度に断定せず、治療選択肢を整理するための材料としてお伝えすることを大切にしています。
研究報告を正しく見ながら、実際の治療につながる情報を整理する
ClinicalTrials.govでMixed connective tissue diseaseとstem cell、mesenchymal、MSC、iPSを組み合わせて確認した範囲では、MCTDを主対象とする幹細胞治療試験は確認できませんでした。jRCTでも、混合性結合組織病を対象とする国内の幹細胞治療試験は確認できませんでした。
一方、自己免疫疾患全般を対象とするMSC試験は登録されています。NCT06888973では、自己免疫疾患患者に対する同種骨髄由来間葉系幹細胞投与が、第I/II相試験として登録されています。対象疾患には、関節リウマチ、全身性強皮症、SLE、多発性筋炎/皮膚筋炎などが含まれますが、MCTDそのものを対象疾患として明記した試験ではありません。
MCTDと重なる疾患では、MSCや造血幹細胞移植の研究が行われてきました。たとえば全身性強皮症やSLEでは、免疫系を強く抑えて再構築する治療や、MSCによる免疫調整の研究があります。しかし、疾患ごとに病態、臓器障害、治療リスクが異なるため、それらの結果をMCTDにそのまま当てはめることはできません。
国内では、MCTDに対する幹細胞治療の承認済み再生医療等製品は確認できませんでした。海外でも、MCTDに対して幹細胞治療が標準治療として承認されている情報は確認できません。一方で、海外では他家幹細胞を使った治療が実際に行われている地域があります。また国内では、骨髄由来MSCの培養上清液を使った治療が可能です。当機構は治験の紹介ではなく、実際の治療につながる情報提供を重視しています。
混合性結合組織病と向き合う方へ、再生医療を選択肢として知ってほしい
MCTDに対する幹細胞治療で期待される可能性があるとすれば、免疫の過剰反応を整え、炎症や線維化を抑える方向です。特に、肺や血管、筋肉、関節などの炎症が問題になる患者様では、免疫調整の考え方が重要になります。ただし、これは関連疾患の研究から考えられる仮説であり、MCTDで確立された効果ではありません。
MCTDは患者様ごとの症状の組み合わせが大きく異なります。関節症状が中心の方、筋炎が目立つ方、肺病変が問題になる方では、治療目標もリスクも変わります。そのため、再生医療を検討する場合にも、どの病態に対して何を目的にするのかを整理する必要があります。
当機構には、こうした疾患について改善の報告が寄せられています。ただし、これは特定の効果を保証するものではありません。治療方針や効果は、患者様の臓器障害、症状、肺高血圧症や間質性肺疾患の有無、現在受けている治療内容によって異なります。再生医療を検討する場合も、主治医にも必ずご相談ください。
当機構が重視しているのは、骨髄由来MSCと、その培養上清液を活用する再生医療の可能性です。標準治療を続けながらも、「薬の負担を減らしたい」「再燃や臓器障害への不安を整理したい」と悩む方に対して、当機構は情報を整理し、実際の治療につながる相談対応を行っています。再生医療について知ることは、患者様とご家族が今後の選択肢を考えるための一歩になります。
[出典]
難病情報センター:混合性結合組織病(指定難病52)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/105
難病情報センター:混合性結合組織病(指定難病52)概要
https://www.nanbyou.or.jp/entry/264
厚生労働省:令和8年4月時点の指定難病(告示番号1〜348)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_53881.html
PRAJ:MCTD(混合性結合組織病)診療ガイドライン2021
https://praj.jp/guideline/
日本呼吸器学会:膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025
https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20250327154832.html
ClinicalTrials.gov:NCT06888973
https://clinicaltrials.gov/study/NCT06888973
Mesenchymal stem cells and connective tissue diseases / DOI: 10.1186/s13287-022-03038-0
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10393058/
Mesenchymal stem-cell-derived exosomes and microRNAs
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12249468/
The role of exosome in autoimmune connective tissue disease / DOI: 10.21037/atm.2019.12.86
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7857452/
Mixed connective tissue disease: An overview of clinical manifestations, diagnosis and treatment / DOI: 10.1016/j.berh.2012.01.009
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1521694212000101
Clinical presentation, course, and prognosis of patients with mixed connective tissue disease
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38584238/
Anti-survival motor neuron complex antibodies as a novel biomarker for pulmonary arterial hypertension and interstitial lung disease in mixed connective tissue disease
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37421400/
混合性結合組織病の治療をご検討の方へ
混合性結合組織病は複数の膠原病の特徴が重なり、関節や皮膚、筋肉、肺、血管などに症状が現れるため、将来の治療や生活に不安を感じやすい病気です。
「今の治療だけでこの先も大丈夫なのか知りたい」
「再燃や心肺合併症への不安を少しでも軽くする方法はないか」
「再生医療について情報を知りたい」
そういった方に対して、治療の選択肢や情報を整理することは非常に重要です。
当機構では、再生医療に関する情報提供および相談対応を行っております。
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