慢性炎症性脱髄性多発神経炎とは
慢性炎症性脱髄性多発神経炎は、手足の神経が傷つき、力が入りにくくなったり、しびれたりする病気です。「CIDP」と呼ばれることもあります。
私たちの手足にある神経は、脳や脊髄からの指令を筋肉へ伝えています。その神経のまわりを包み、電気信号をスムーズに伝える役割を持つのが「髄鞘(ずいしょう)」です。電気コードを包むカバーのようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎では、免疫の働きに異常が起こり、この髄鞘が傷つくと考えられています。すると神経から筋肉へ指令が届きにくくなり、手足の筋力低下やしびれ、感覚の低下などが起こります。厚生労働省では、8週間以上にわたって症状が進んだり、良くなったり悪くなったりを繰り返したりする病気とされています。
症状は人によって異なります。足に力が入りにくくなり、階段を上るのが難しくなる人もいます。手に症状が出ると、ボタンを留める、箸を使う、ペットボトルのふたを開けるといった動作が難しくなることもあります。
また、症状が左右同じように出る人だけではありません。足先から強く症状が出るタイプや、一部の神経だけに症状が出るタイプなど、いくつかの形があります。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎は、国内では指定難病です。しかし、治療によって症状が改善したり、病気の進行を抑えたりできる人もいます。
一方で、治療を続けても症状を繰り返す人や、筋力低下やしびれが残る人もいます。そのため、現在の治療を続けながら、ほかにどのような方法があるのか知りたいと考える患者さんも少なくありません。
免疫の働きを抑える標準治療と、続けるうえでの悩み
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の標準治療では、神経を傷つけている免疫の働きを抑えることが中心になります。
代表的な治療の一つが、免疫グロブリン療法です。免疫グロブリンという血液中のたんぱく質を点滴などで体内に入れ、過剰になった免疫反応を整えます。
ほかにも、炎症や免疫の働きを抑えるステロイド薬が使われます。免疫グロブリンやステロイド薬で十分な効果が得られない場合には、血液から病気に関係する成分を取り除く「血漿交換」が検討されます。国際的な診療ガイドラインでも、免疫グロブリン療法やステロイド薬が主な初期治療とされ、必要に応じて血漿交換がすすめられています。
症状が落ち着いたあとも、再び悪化するのを防ぐために治療を続ける場合があります。免疫グロブリン療法を定期的に受けたり、ステロイド薬を使ったりしながら状態を保っていきます。
ただし、治療への反応には個人差があります。
一度症状が改善しても、治療の間隔を空けると再び力が入りにくくなる人もいます。点滴のために定期的に病院へ通うことが負担になる場合もあります。
また、病気が長く続くと、髄鞘だけではなく、その内側にある神経そのものが傷つくことがあります。神経のダメージが長く続けば、免疫を抑えるだけでは筋力や感覚が十分に戻らないケースもあります。
つまり、慢性炎症性脱髄性多発神経炎では「免疫の暴走を抑えること」と同時に、「傷ついた神経をどのように支えるか」という視点も大切になります。
骨髄由来MSCで、神経を取り巻く環境に働きかける
そこで当機構が注目しているのが、間葉系幹細胞(MSC)を使った再生医療です。
間葉系幹細胞とは、骨髄や脂肪などに存在する細胞です。当機構では、そのなかでも骨髄から採取される「骨髄由来MSC」を重要な選択肢の一つと考えています。
MSCの特徴は、単に別の細胞へ変わることだけではありません。さまざまな物質を放出し、炎症や免疫の働きを調整したり、傷ついた組織を支える環境づくりに関わったりすることが研究されています。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎は、免疫の異常によって末梢神経が傷つく病気です。そのため当機構では、免疫の働きと神経を取り巻く環境の両方に目を向けるMSCの考え方は、検討する価値のあるものだと考えています。
実際に海外では、CIDPの患者にMSCを投与した例も登録されています。米国のClinicalTrials.govには、脂肪由来MSCを用いたCIDP患者への治療例が登録されています。ただし、これは一般的な標準治療として確立されたものではなく、現在の免疫グロブリン療法などとは位置づけが異なります。
一方、国内では、骨髄由来MSCを培養した際に得られる「培養上清液」を使った医療が、自由診療として行われています。
培養上清液とは、MSCそのものではなく、MSCが培養中に放出したさまざまな成分を含む液体です。成長因子やサイトカインなど、細胞同士の情報のやり取りに関わる物質が含まれています。
幹細胞培養上清液を使った医療は、国が慢性炎症性脱髄性多発神経炎の標準治療として承認したものではありません。そのため、免疫グロブリン療法などの標準治療とは分けて考える必要があります。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎についても、当機構には改善の報告が寄せられています。ただし、病気の状態や神経の傷み方は一人ひとり違うため、同じ変化がすべての人に起こるわけではありません。
大切なのは、「幹細胞なら治る」と考えることではありません。現在どのような症状があり、どの治療を受け、どこに困っているのかを整理したうえで、選択肢の一つとして考えることです。
治験を待つのではなく、今の状態から選択肢を整理する
再生医療について調べると、大学などで行われている研究や臨床試験(治験)の情報が多く見つかります。
しかし、国際幹細胞普及機構は、臨床試験(治験)への参加をあっせんしたり、紹介したりするための機関ではありません。
当機構が大切にしているのは、患者さんが今どのような状態にあり、どのような治療を受けているのかを確認したうえで、実際に相談できる医療の選択肢を整理することです。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の場合も、病名だけでは判断できません。
たとえば、免疫グロブリン療法で症状が安定しているのか、治療をしても再発を繰り返しているのか、手足の筋力低下やしびれがどの程度残っているのかによって、考え方は変わります。
神経伝導検査の結果や、これまで使った薬、現在受けている治療についても重要な情報になります。
「今の治療をやめて別の治療に変える」という二者択一で考える必要もありません。現在の標準治療を続けながら、追加で検討できる方法があるかを整理することもできます。
当機構では、骨髄由来MSCや培養上清液について知りたい方に対し、その人の状況に合わせて情報を整理し、実際に相談できる医療の選択肢へおつなぎすることを重視しています。
今すでに受けている治療がある方は、自己判断で中断せず、続けながらご相談ください。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療をご検討の方へ
慢性炎症性脱髄性多発神経炎は、症状が良くなったり悪くなったりすることがあり、手足の力やしびれが今後どうなるのか、患者さんやご家族が不安を抱えやすい病気です。
「今の治療を続けても、また症状が悪くならないか心配」
「しびれや筋力低下に対して、ほかの選択肢も知りたい」
「再生医療について情報を知りたい」
そういった方に対して、治療の選択肢や情報を整理することは非常に重要です。
当機構では、再生医療に関する情報提供および相談対応を行っております。
ご相談をご希望の方は、下記お問い合わせフォームよりご連絡ください。


