この記事の概要
  • 更年期障害には、「血管運動神経症状」「精神神経症状」「その他の症状」に分類される
  • 2012年に厚生労働省に提出された申請書には、更年期障害を伴う卵巣機能低下患者に対して、自己皮下脂肪由来間葉系幹細胞を使った治療方法がある
  • 更年期障害への一般的な治療は、生活習慣の改善、ホルモン補充療法、薬物治療がある

加齢により更年期障害により動悸や息切れ、のぼせ、ほてり、頭痛、腰痛、肩凝り、イライラ感、めまい、耳鳴り、不安感、不眠、食欲不振などの様々な症状が起こります。

今回の記事では、更年期障害の症状や、治療について解説します。

1. 更年期障害とは

更年期障害とは、性腺ホルモンの低下に伴う様々な症状を包括する症候群です。主に女性に対して用いられる障害名ですが、男性にも同様の現象は見られます。男性の場合は、LOH症候群(Late-onset hypogonadism)、加齢男性性腺機能低下症候群)PADAM:Partial androgen deficiency of the aging male)、または男性更年期障害と呼ばれます。

昔は、加齢に伴う変化として扱われてきました。女性の場合は閉経期の前後約5年間、男性の場合は40代周辺(個人差があります)に現れる、加齢が原因と思われる症状を更年期症状と呼んでいました。しかし時代が進み、高齢化社会などが予測されるようになると、その症状の中で生活に支障をきたすものに対して対処が必要と考えられるようになりました。

現在は、更年期症状のうち、生活に支障をきたすものを更年期障害として分類しています。女性の場合は卵巣機能の低下によるエストロゲンの欠乏、さらにはエストラジオールの欠乏によるホルモンの急激な減少、男性の場合は、男性ホルモンとして知られるテストステロンの欠乏によって起こります。

また、この年齢の時期は、家庭を構築した人々にとっては、家族関係の変化(子供の独立、子供の結婚・出産、親の介護など)、社会的環境の変化(定年退職に伴い、自分の社会的・職業的地位の終着点が具体的に予想できるようになるなど)、これらの社会的環境と、体内環境が相互作用して、精神的な部分に影響します。

この精神的な部分に影響する事柄は、不定愁訴(ヒステリー)として形質が表に現れることが多く、この不定愁訴の度合いは本人にかかる精神的な要素の強弱(強弱は本人の主観的な度合い)に依存すると考えられています。

多くの場合、この更年期障害は、「血管運動神経症状」、「精神神経症状」そして「その他の症状」に大きく分類されます。女性の場合で原因とされるエストロゲンの減少は、血管運動症状に特に大きく影響すると考えられています。

2. 具体的な症状

先に挙げた3つの症状を具体的に挙げていきます。まず「血管運動神経症状」は、高血圧症、動悸、めまい、顔の火照り、異常発汗などが挙げられます。のぼせ、火照り、異常発汗をまとめて「ホットフラッシュ」と呼ぶこともあります。

エストロゲンの減少は、この血管運動神経症状に大きく関与しますが、精神状態によってもこれらの症状が出現することがあります。

「精神神経症状」は、不眠、うつ、怒りやすくなる、不定愁訴を含む情緒不安定などが代表例として挙げられます。些細なことで怒る、イライラする、ヒステリーなど、他の人にわかりやすい症状なので更年期障害の代表的な扱いをされています。

年齢的にも子供の独立、社会的に責任の立場になる、定年が具体的に見え始めるなど、様々な事柄を考えなければならない時期ですので、それらが大きなストレスとしてのしかかり、そこに内分泌的な身体の変化も相まって表に出てくると考えられます。

「その他の症状」については、沢山あるので細かく見ていきます。まず、「身体的、運動能力的な症状」としては、腰痛、関節痛、肩こり、浮腫、めまい、手指などの末端の痛み、こわばり、しびれが挙げられます。さらに肌の乾燥感(実際に加齢と共に体内水分量は減少します)、ドライアイが出る人もいます。

「体内の症状」は、代表的なものとして、消化器に現れる症状と、泌尿器・生殖器に現れる症状があります。消化器症状は、吐き気、便秘・下痢が代表的です。それまで普通だった便通が、更年期にさしかかって便秘気味、下痢気味になる事はよく見られます。

泌尿器・生殖器症状は、性交痛(女性のみ)、尿失禁、頻尿が代表例です。男性の感じる残尿感、勃起障害は、更年期の症状の1つと考えられています。

3. 更年期障害と幹細胞

更年期障害に対して効果のある幹細胞の治療については、科学的に述べられた治療法として卵巣機能の改善があります。

2012年に「厚生労働省ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」に提出された申請書には、更年期障害を伴う卵巣機能低下患者に対して、自己皮下脂肪由来間葉系幹細胞を使った治療方法があります。

この方法は、下腹部、または臀部より皮下脂肪組織を採取してコラゲナーゼ処理、そして培養による増殖を行わずにそのまま移植するものです。ラットでの動物実験では卵巣機能の回復に効果があるという結果が得られており、ヒトにおいても効果があるのではないかと期待されています。

ただし、卵巣機能は加齢によって低下するものであり、低下自体は止めることはできません。この治療方法の狙いは、卵巣機能の低下が平均的な低下と比べて急激なため、身体に影響が出た場合、または年齢的に卵巣機能がそこまで低下する時期ではないにもかかわらず、卵巣機能が低下してしまっている患者に使うことを狙いにしています。

また、ネット上ではクリニックのホームページにおいて、幹細胞、または幹細胞培養上清を使った更年期障害の治療が掲載されているケースが多々見られます。

これらについては、「効果があるケースはあるが、ないケースもある。効果があった場合にどうして効果があったのかについては、推測はできるが科学的な証拠はない」というケースが多いため、治療担当者との慎重な話し合いが必要です。

特に自由診療の場合は、治療費が高額となり、患者の負担が大きくなります。また、必ずしも科学的に効果が証明された治療ではない場合もあります。こういった治療方法に関しては、「治療費が高額だからきっと効果がある」という理屈は通用しません。セカンドオピニオンなどを使って、情報を慎重に吟味して治療方法を決めましょう。

4. 一般的な更年期症候群の治療

現在、幹細胞を用いた治療以外の、一般的に行われている更年期障害の治療を見てみましょう。

更年期障害は、加齢と密接に関連があるため、治療する症状には治癒を目指すものと進行を緩和するものがあります。主に行われる治療は、生活習慣の改善、ホルモン補充療法、薬物治療です。

生活習慣の改善は精神状態に依存する部分もあるので、まずは本人の生活習慣、生活環境の見直しに着目する治療方法です。

更年期障害の症状の1つに不眠がありますが、不眠が続くと疲労が蓄積され、精神的に悪影響を与えます。早寝早起きに生活習慣を変える、寝付けない場合は睡眠薬を処方する、適度な運動によって軽めの疲労を身体に与え、眠りやすくするなどが行われます。適度な運動は、血液循環をスムーズにする効果もあり、自律神経のバランスが整うと考えられます。

さらに、生活習慣の中で食事の改善も効果がある場合があります。ホルモンの減少、特に女性ホルモンの減少は骨粗鬆症が起こりやすくなるため、カルシウムとその吸収を補助するビタミンD、Kを摂取することが望まれます。骨粗鬆症によって骨がもろくなると、適度な運動の阻害要因となりますので、食事の改善はすぐできる、なおかつ効果的な方法です。男性の場合は、男性ホルモンの生成に関与する亜鉛、そして亜鉛の働きを補助するビタミンCを食事の中で積極的取ると効果があります。

ホルモン補充療法は、主に女性に行われる治療です。更年期において減少するエストロゲン、プロゲステロンを薬で補充する両方です。血液検査、尿検査によって現時点での体内ホルモン濃度を調べてから行われます。ただし、エストロゲンは乳がん、子宮体がんの発がんに深い関係があるので、これらのがんにかかった経験のある方はホルモン補充療法を受けることはできません。

更年期障害に主に使われる薬は、漢方薬が大きな割合を占めます。効き目が緩やかである事と、副作用が少ないために長期服用ができることが漢方薬の利点です。体質面を考慮して漢方薬が選ばれますが、精神面の影響が強い場合は、抗不安薬、抗うつ剤が処方される場合もあります。

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