この記事の概要
  • 幹細胞培養上清に含まれている物質は多くの種類の物質で構成されており、何種類かはリガンドとして作用する物質が含まれています。
  • 植物幹細胞を説明する時に「カルスも幹細胞に含まれる」という内容が示されていた場合には要注意

1. 肌の老化メカニズム

肌の老化現象は、シミ、そばかす、シワ、たるみ、色素沈着など様々な症状が起こります。肌機能の低下、細胞の機能低下が原因であり、「肌」を構成する細胞の交代(ターンオーバー)の周期が長くなっているため、疲労した細胞を使い続けなければならないことが原因です。

通常、この細胞のターンオーバーは4週間周期と言われています。しかし、加齢などによる老化現象によって周期が長くなり、本来ならば交代が必要な細胞がそこにとどまり続けて機能し続けなければならないために、シミなどの目に見える症状が出てきてしまうのです。

例えば、紫外線を浴びるとメラニンが生成します。このメラニンは黒褐色、または橙赤色の色素であり、細胞内に蓄積されます。我々の肌では、細胞が生まれ変わる際に古い細胞やその破片、角質と共にメラニンを外に排出します。

このことが機能しているうちは肌にメラニン色素は残りませんが、細胞のターンオーバー周期が長くなると、メラニン色素を蓄積した細胞が肌の上に残ることになり、シミの原因となります。

これらの症状に効果のある物質として、幹細胞が分泌する物質、成長因子、サイトカインなどが注目されています。これらの物質は、幹細胞を培養液中で培養すると、培養液内に分泌されます。

そのため、幹細胞を培養して、その培養液を回収することによってこれらの物質を確保することができます。

このような幹細胞が分泌する物質を配合した化粧品が近年販売されています。

2. 培養上清に含まれている物質の作用

培養上清に含まれている物質は多くの種類の物質で構成されています。その中の何種類かは、リガンドとして作用する物質が含まれています。

リガンドは細胞側が持っている受容体に結合し、細胞内の情報伝達経路を活性化します。つまり、リガンドが鍵、受容体が鍵穴の役割を持ち、受容体という鍵穴に正しいリガンドが鍵として結合すると、情報伝達系の活性化という扉が開く、と想像すれば間違いはありません。

リガンドと受容体は、結合するもの同士に特異性があり、決まったもの同士の結合でしか情報伝達系は活性化しません。細胞分裂を活性化するなどの情報伝達系を活性化するためには、リガンドと受容体が正しく結合する必要があります。

このリガンドを配合した化粧品は、使用者の細胞の受容体から下流の情報伝達系を活性化して、加齢によって不活性化した細胞機能を再度活性化しようとする狙いがあります。

そして、培養上清を検索すると、含まれている物質でよく目にするものは「成長因子」と「サイトカイン」です。これらの物質のいくつかは、繊維芽細胞を活性化し、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンを誘導します。ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンはいずれも肌の維持に重要な物質です。

コラーゲンについては、「コラーゲンたっぷりの食事」という文言を見かけることがありますが、食事によるコラーゲン摂取で、コラーゲンの効果を肌に・・・・という目的は意味がありません。

なぜなら、食事として摂取されたコラーゲンは、胃の中で消化され、アミノ酸レベルまでに分解されます。アミノ酸レベルまで分解されますと、コラーゲン自体の効果が発揮されることはありません。

一方で、自分の肌の細胞にコラーゲンを分泌させるということは、効果が期待できます。そのため、血症品に配合されている成分によって細胞を刺激し、コラーゲンを分泌させるわけです。

3. 使われる幹細胞の種類

化粧品に使われる幹細胞培養上清は、どんな幹細胞を培養して得られた上清でしょうか?化粧品に含まれる培養上清の由来は多岐にわたります。

まずは植物幹細胞です。ヒトなどの動物以外、植物にも当然幹細胞は存在します。種子内の胚、細胞分裂が非常に激しい根の先端、茎の付け根などに幹細胞が多く含まれています。

ここで注意ですが、植物幹細胞を説明する時に「カルスも幹細胞に含まれる」という内容が示されていた場合には要注意です。カルス、というものについては生物の授業で習った記憶がある方もいらっしゃると思いますが、カルスト幹細胞は似たものですが、基本的には異なるものです。

カルスは未分化の細胞の塊であり、条件によっては再分化を始めます。これだけだと、幹細胞と同じに思えますが根本が異なります。まず、植物の幹細胞は、植物の成長には必須です。

分裂を繰り返して、組織、器官に分化するための細胞を延々と作り続けています。一方でカルスは、植物を構成している体細胞(分化した細胞)が傷害を受けたときに、治癒、修理するために一時的な生体反応として作られます。

そのため、分化した細胞が「脱分化」していったん未分化の状態に戻った細胞によってカルスはできています。しかしあくまで緊急的なもののため、遺伝的な性質などがカルスを構成する細胞で均一かどうかはわかりません。そのため、「植物カルスの幹細胞培養上清」とあった場合は、正確には幹細胞上清と言えないことに注意が必要です。

そして、植物幹細胞の培養上清には、ヒトの肌に効果のある抗酸化物質、保湿力のための物質は含まれていますが、先に述べた「リガンド」についてはやや微妙になります。

それは、我々ヒトは動物であり、培養上清は植物由来のため、ヒトの受容体に正しく結合するリガンドが培養上清には少ない、ということです。

もし、受容体を介しての効果を期待する場合は、植物幹細胞由来の培養上清を使っているものは避けましょう。しかし、抗酸化、保湿力については、植物由来の幹細胞上清を使っている化粧品でも効果が期待できます。

動物幹細胞では、やはりヒト由来幹細胞の培養上清を使っていると安心感があるかもしれません。ヒトの幹細胞分泌物質の効果はヒトの細胞に対しては素直に効果が発揮することが期待されます。詳細な効果は先の述べたとおりですが、ヒトの幹細胞でも、脂肪幹細胞、ヒト乳歯歯髄幹細胞由来などのいくつかの種類があります。

他の動物ですと、ヒツジ、ブタ、ウマ(特に一時期、プラセンタで話題になった胎盤由来)が主に使われます。しかし、アレルギーなどのリスクがないわけではないため、日本国内では他の動物種の幹細胞を上清由来成分を使った化粧品は流通していません。

4. 幹細胞上清成分の入った化粧品について

幹細胞の培養上清を使った化粧品は、ネットで検索するとかなりの数がヒットします。ここで注意しなければならないのは、その化粧品の表示です。

培養上清には成長因子、サイトカインが含まれていますが、多くの化粧品では成長因子、サイトカインが含まれていることは成分表示欄には記されていません。成分表示欄には、「培養上清エキス」などの表現で記載されているのみです。

培養上清ならば、そういった有効成分が入っている可能性は高いのですが、培養上清をそのまま使うわけではなく、そこから成分を抽出し、精製してあります。その過程で、幹細胞から分泌直後は効果がある、つまり活性のあった物質が、活性を失う、つまり失活化している可能性もないわけではありません。

また、化粧品であればある程度長い間使うため、長期にわたって保存しても活性を失わない処理が必要になります。現時点で、幹細胞そのものを使う医療行為に対する規制は厳しいのですが、培養上清については従来の規制の範囲内で販売することが認められています。

幹細胞培養上清の含まれている物質の活性、またどのような活性が含まれているかなどは、製品の表示だけでなく、その製品を製造、販売している企業のホームページなどで確認することが重要です。中には、培養上清から有効成分を抽出する方法についても解説しているホームページがあります。

現状では、規制が追いつかない状態ですのでしばらくの間は消費者の情報収集によって少しでも効果が見込める製品を自分で探す必要があると思われます。

Follow me!