この記事の概要
  • 幹細胞培養上清は、自家/他家、血清入り/無血清、採取場所で分類される

幹細胞を培養した時の培養液には、幹細胞から分泌された成長因子、サイトカインなどが含まれています。それらの物質はヒトの細胞に好影響を与えることが期待されています。そのため、最近は疾患の治療、美容などに使われています。

幹細胞培養上清は、どの幹細胞を使うか、培養液の種類などによっていくつかの種類に分けることができます。

治療の目的、または治療の準備段階の都合などによってこれらの使い分けが行われており、治療目的に適した培養上清を使って治療を行います。

ここで、幹細胞培養上清の種類、どのように分類されているのかについて解説します。

1. 自家幹細胞由来か、他家幹細胞由来か

培養上清を採取するために培養される幹細胞が自家幹細胞(患者自身が由来の幹細胞)か、他家幹細胞(患者以外の人由来の幹細胞)かによる分類があります。幹細胞そのものを使う治療の場合、自分由来の幹細胞を使うか、他人由来の幹細胞を使うかは大きな問題です。

他人の幹細胞を使った場合、その細胞は自分のものではない、つまりは非自己なので身体の免疫システムは他人由来の細胞を攻撃する場合があります。これは拒絶反応と呼ばれ、臓器移植の時にも問題になります。

しかし、自分由来の幹細胞を使って治療した場合、元々は自分の細胞ですので非自己に対する攻撃、つまり拒絶反応が起こる確率は非常に低いものとなります。

自家幹細胞を培養した培養液上清を使う場合、治療はまず自分の細胞群から幹細胞を抽出、生成するステップから始めます。

例えば皮下脂肪を採取し、その中から脂肪由来幹細胞を抽出、分離して培養を開始します。この培養に使われた培養液を採取し、余計なものを除去するなどして治療に用います。

他家由来幹細胞の培養上清を使う場合は、細胞を採取するステップがありません。また、他人の幹細胞を使って得られている培養上清のストックがある場合は、幹細胞を培養する時間が必要ないために、培養上清を使った治療にすぐには入れるという利点があります。

また、市販のコスメ製品の中に幹細胞培養上清が入っているものがありますが、この場合は他家幹細胞由来の培養上清を使っていることになります。

自家幹細胞由来のものを使いたい場合、細胞採取と抽出・精製ステップが入りますので、他家幹細胞由来の培養上清を使う場合と比べてかかる費用が高くなる傾向があります。

また、そうしてまで自家幹細胞由来にこだわるメリットはそれほど大きくありません。なぜなら、培養上清に含まれている物質つまり元々培養液に入っている細胞培養に必要な成分と幹細胞が分泌した物質であり、自己・非自己の認識に関わる物質がほとんどないからです。

現在わかっている範囲では、自家幹細胞由来、他家幹細胞由来の培養上清を使った時の違いは“ほとんど”ないと考えられます。

2. 血清入り培養液、無血清の培養液どちらを使うのか

培養細胞を培養する時に使う培養液には、細胞の成長、増殖が入っていますが、人工的に作られたその培養液に含まれている成分だけでは細胞は順調に育ちません。そのため、培養液にウシ胎児血清(FBS:Fetal Bovine Serum、またはFCS:Fetal Calf Serum)を添加します。

培養液に血清を添加することによって、細胞に対する増殖因子と接着因子の供給、毒性物質作用の中和、低分子微量成分の供給、酸性、アルカリ性の緩衝作用、などの利点が生まれます。

欠点としては、血清中の成分が細胞に影響することが否定しきれないこと、血清は個体差があるので、採取した胎児によって成分などにばらつきがあり、そのことが細胞の生育に影響することが挙げられます。

最近では、血清に頼らない無血清培地が販売されており、無血清培地で細胞を培養するケースも多くなっています。

幹細胞培養上清は、「幹細胞の分泌物が含まれた培養液」ですので、血清入りの培養液を使えば、採取したばかりの培養上清には血清由来成分が含まれますし、無血清培養液を使えば培養上清には血清由来成分は含まれません。

培養上清を医療に使う場合は、幹細胞を培養していた培養液をそのまま使うわけではありません。回収してきた培養液から細胞、細胞の破片などを除去して用います。しかし、人体に有益な効果がある培養上清中の成分のみを抽出・精製ということはかなりの難易度です。

なぜなら、幹細胞が分泌した人体に有益な成長因子と、血清中に含まれる成長因子、増殖因子は、性質、分子の大きさが似ている場合があるからです。

似ているために、抽出、精製ステップでヒト由来と血清由来のものが分別できずに一緒になってしまう可能性があります。血清由来の分子は、ヒト由来ではなくウシ由来です。

ウシ由来の成分が確実に人体に悪影響があるとは言い切れませんが、やはりヒト由来の成分に限った方が安心感はあります。

ネット上のクリニックのホームページを見ると、最近では「幹細胞の培養に無血清培養液を使っている」という文言を多く見かけます。やはり安全性などを考えると、他の動物種由来の成分が入っていない状態の培養上清を使うことがニーズであることが予想されます。

3. 幹細胞の種類による分類

幹細胞は、採取される場所によって様々な種類があります。この種類によっても培養上清は区分できます。ただし、最近では使われる幹細胞は脂肪由来幹細胞歯髄幹細胞が多くを占め、少数ですが臍帯血由来幹細胞が使われています。

脂肪由来幹細胞が使われるもっとも大きな理由は、幹細胞の確保が比較的容易のためです。皮下脂肪を採取すれば、その脂肪細胞の中には脂肪由来幹細胞がかなりの確率で含まれています。

もし自家由来幹細胞を使いたいということになれば、患者の脂肪を採取し、その脂肪の細胞群の中から幹細胞を分離して培養して増殖すればかなりの細胞数が確保できます。

歯髄幹細胞が使われている中では、乳歯由来、つまりヒト乳歯髄幹細胞が使われるケースが増えています。この理由をクリニックなどの宣伝文言から探すと、「歯のような硬いものにガードされているために遺伝子変異を誘導する物質が入りにくく、遺伝子的な傷を持っている細胞が少ない」と「乳歯を持つ年代のヒトから採取するので若い」という文言が見受けられます。

確かに、歯髄は歯のエナメル質に守られているために、外界からの変異誘導物質に触れにくく、遺伝子変異が起きる頻度は少なそうです。

また、「若い」ということに関しても、乳歯が生え替わる時期であれば、人間の年齢的にはかなり「若い」とすることができるので、細胞の分裂を重ねることによる老化現象の蓄積、遺伝子変異のリスクは理論的には軽減できます。

4. 培養上清の精製に関する種類

この種類分けは、培養上清をどのように精製したのか、どこまで精製したのか、何を精製したのか、によって何種類にも分けられます。培養液を回収した後、そのまま使うということはまずあり得ません(細胞、細胞の破片が入っているために、“細胞を使った治療“に区分されてしまうケースがあります)。

どのような方法で培養上清を精製したのか、については専門的な知識がないとなかなか理解できませんが、タンパク質を全て含んだレベル、低分子のみを抽出、などケースバイケースです。もし説明を求めることができる窓口があれば、説明を求めることが重要です。

なぜなら、培養上清は培養液として回収直後は数百種類以上のタンパク質を含んでいます。この中には人体に有益な効果を示すタンパク質もあれば、悪影響を及ぼすタンパク質もあります。

これらから必要な分子のみを抽出するということは、研究機関レベルの設備、技術を持った人材が必要です。

このことは非常に重要なことで、予測されている問題の一例として、培養上清にインスリンが含まれた場合がよく挙げられます。例えば培養上清の点滴治療を受ける時に、インスリンが含まれている培養上清を使うと、点滴後に血糖値が急速に低下してしまうことが予想されます。

幹細胞から分泌される物質には人体に有用な物質が含まれているのは事実ですが、同様に副作用のリスクも存在することは考える必要があります。

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