iPS細胞使ったパーキンソン病治療、米国で臨床試験開始

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住友ファーマ、iPS細胞を使ったパーキンソン治療の臨床試験を開始

2024126日、住友ファーマと京都大学iPS細胞研究所は、ヒトのiPS細胞から作成した神経細胞をパーキンソン病の患者の脳に移植する臨床実験を、アメリカで開始したことを発表しました。

 

京大iPS細胞研究所、住友ファーマを中心としたグループは、2018年に健康な人のiPS細胞から神経伝達物質であるドーパミンを分泌する細胞を作って患者に移植する臨床試験に着手していました。

現在までに、日本国内で7人に移植し、安全性と有効性の確認を行っており、ある程度の見通しが立っていると予想されています。

 

雨地下での臨床試験は、カリフォルニア大学サンディエゴ校で行います。

住友ファーマが日本国内で製造した細胞をアメリカに空輸し、京都大学医学部附属病院で現在日本人対象に行われている臨床試験とほぼ同じ方法で、7人のアメリカの患者に移植する計画で、2年間の経過観察を予定しています。

 

この試験は7人に移植ということで、比較的小規模な臨床試験になりますが、人数を増やした試験も近いうちにアメリカで開始する予定です。

これらの試験を行った後、2032年末までにこの細胞を使ったパーキンソン病の治療を実用化するとしています。

 

住友ファーマとは

住友ファーマは日本に本社を置く製薬会社で、1884年に設立された大日本製薬会社と1984年に設立された住友製薬が2005年に合併し、大日本住友製薬株式会社となり、この会社が2022年に社名変更して住友ファーマ株式会社となりました。

 

医薬品事業では、精神神経、糖尿病、スペシャリティの3つを重点領域としています。

アンメット・メディカル・ニーズが高く、高度な専門性が求められるスペシャリティでは、希少疾患、血液、肝臓などの分野を担っています。

 

ヒト対象だけでなく、動物用医薬品事業も行っており、イヌ、ネコに代表されるコンパニオンアニマル、ウシ、ブタ、ニワトリなどの畜産、そして水産分野を対象とした医薬品を、子会社である住友ファーマアニマルヘルスが担当しています。

 

主力製品は多く、高血圧症のアムロジン、糖尿病用のツイミーグ、シュアポスト(即効型インスリン分泌促進剤)、抗生物質のアムビゾーム(アムホテリシンB、ポリエンマクロライド系抗真菌性抗生物質製剤)、抗精神病薬のロナセン、ルーランなどを製造、販売しています。

 

パーキンソン病については、レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム治療薬としてトレリーフを扱っており、再生医療においては造血幹細胞移植前治療薬であるリサイオを製造、販売しています。

 

非常に幅広い治療領域において、精神神経疾患、がん、糖尿病、循環器系、感染症など、様々な分野で医薬品を提供しており、日本国内外で事業を展開しています。

国際的な拠点も持ち、グローバルに製品を提供しています。

 

ドーパミンとは?

パーキンソン病を理解するためには、神経伝達物質である「ドーパミン」の理解が必要です。

ドーパミン(dopamine)は、中枢神経系で重要な役割を果たす神経伝達物質(ニューロトランスミッター)の一つです。

ドーパミンは脳内で合成され、神経細胞間の信号の伝達に関与しています。

 

機能はいくつかに分類され、代表的なものが5つあります。

まず、「報酬系(快感を含む)」に関与する脳の領域で特に重要な働きを果たしています。

快感や報酬に関する感情や動機づけに関与し、これによって学習や行動を調整します。

この領域の学習の他にも、思考、計画分野の思考にもドーパミンは関与しており、この機能は「注意力と認知機能」に分類されています。

「注意力と認知機能」においては、活性化だけでなく、脳内のバランスを取るための調整機能を発揮し、脳の思考領域の活動に貢献しています。

 

また、「ストレスに対する応答」にも深く関与しており、ストレス環境下でのヒトの行動を調整する役割、対処方法の思考を調整する役割を持っています。

この部分に関与しますが、「情動調節」においてもドーパミンは重要な役割を担っており、感情や情動の制御に影響を与えます。

 

パーキンソン病とドーパミンの関係

パーキンソン病(Parkinson’s disease)などでドーパミンが不足すると、上記の機能に関する障害が生じ、特に運動機能に関する症状が顕著になります。

治療の一環として、パーキンソン病患者にはしばしばドーパミンの補充が行われるのはこのためです。

また、今回の臨床実験で「ドーパミンを分泌する細胞を移植する」という治療方法が試される理由は、ドーパミンが不足している患者にドーパミンを供給するためです。

 

パーキンソン病は、中枢神経系の障害によって引き起こされる慢性的な神経変性疾患の一つに分類されています。

この病気は一般的に運動機能の障害や震え、筋肉のこわばり、動作の鈍さなどを特徴としています。

病名は、この病気を初めて詳細に説明したイギリスの医師、ジェームズ・パーキンソンにちなんで名付けられました。

 

パーキンソン病の主な特徴として以下の症状が挙げられます:

まず、手や指が静止時に微小な振動を示すことがあります。

この症状は、震え、または振戦という言葉で表現されます。

 

筋肉に着目すると、こわばりが症状としてあげられます。

このこわばりは、「筋強硬性」と表現される症状で、身体の自由な動きが制限されてしまう原因になっています。

 

自由な動きが制限されると、動作の鈍さが表れます。

これもパーキンソン病の症状とされており、「運動遅延」と呼ばれます。

日常的な生活のための身体の動きが鈍く、遅くなることによって、生活に大きな影響を与えます。

 

こういった身体の動きが制限されると、身体が元々持っている「調整機能」も低くなります。

代表的なものに「姿勢の不安定性」があります。

我々ヒトは、立っているだけでも身体のバランスを維持するための微調整を身体は常に行わなければなりません。

しかしパーキンソン病に罹ると、この微調整ができなくなるために姿勢が不安定となってシマします。

 

他にも、表情の乏しさ(顔面パーチンソン症候群)、声の低調、睡眠障害、認知機能の低下などが見られることがあります。

 

パーキンソン病の原因はまだ完全には解明されていません。

これまでの研究の結果、神経細胞の変性やドパミンと呼ばれる神経伝達物質の減少が関与している、これが有力なパーキンソン病の原因とされています。

治療法としては、ドーパミンの補充や他の薬物療法が主に行われ、身体の動きが鈍くなることに関しては、理学療法、作業療法、手術などが用いられます。

しかし、パーキンソン病を根治するための完全な治療法はまだ存在していません。

そのため、患者とその家族は、専門医の指導のもとで症状管理や生活の質の向上に向けたアプローチを採ることが現時点では最優先されています。

 

各国の状況

パーキンソン病の患者数は、国や地域によって異なりますが、正確な統計は時折難しい場合があります。

これは診断の基準に幅があることと、高齢化が進んでいる地域ではどうしても患者の割合が高くなるためです。

しかし、統計的に各国の「傾向」は算出されています。

 

まず日本ではパーキンソン病の患者数は増加しつつあります。

これは日本の高齢化が主な原因と考えられています。

 

アメリカでは、パーキンソン病は日本と比べてかなり広く見られる神経変性疾患であり、多くの人が影響を受けています。

今回の臨床実験でアメリカが選ばれた理由も、アメリカの患者数、患者割合が各国の中では比較的高いということが理由です。

なぜアメリカで高いのかという事については、明確な研究結果は出ていません。

一方で、ヨーロッパではアメリカと異なり、患者数の増加は各国の高齢化が原因とされています。

 

アメリカではパーキンソン病患者数が他国と比べて多いのですが、その他の先進国において高齢化によるパーキンソン病患者の増加、患者割合の増加が見られており、根治治療の確立は先進国の喫緊の課題となっています。

 

身体の動き、運動能力への影響が大きな疾病ですので、高齢者も社会の維持のためには働く必要が出てくることが予想される先進国では、今後の労働力確保において非常に重要な問題と言えます。

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