Meiji Seika ファルマが選択的ROCK2阻害剤「レズロックR錠」の製造販売承認取得
Meiji Seikaファルマ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林大吉郎)は、選択的 ROCK2(Rho-associated coiled-coil containing protein kinase 2)阻害剤「レズロックR錠 200mg」(一般名:ベルモスジルメシル酸塩)について、「造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」を効能・効果とする製造販売承認を取得しました。
Meiji Seikaファルマ株式会社は、明治製菓ファルマ株式会社とも表記される日本の大手医薬品メーカーです。
同社は、製薬・医療機器・医薬部外品など、幅広い医療関連製品を扱っており、主に、医薬品の製造・販売、研究開発、輸出入を行っています。
Meiji Seikaファルマ株式会社は元々明治乳業と明治製菓でしたが、2008年に経営統合を発表し、2011年には明治ホールディングのもとで、食品会社としての株式会社明治、製薬会社としてMeiji Seikaファルマ株式会社となりました。
慢性移植片対宿主病とは?
慢性移植片対宿主病(chronic graft-versus-host disease, cGVHD)は、造血幹細胞移植(HSCT)後に発生する合併症の一つです。
HSCTは、がんや血液疾患の治療に使用される治療法であり、患者に新しい造血幹細胞を供給して、病気の治療や免疫系の再構築を行います。
cGVHDは、移植された免疫細胞が対宿主の組織や臓器を攻撃することで引き起こされます。
これは、移植された細胞が移植者の体を「異物」と認識し、それに反応して免疫応答を引き起こす結果です。
これにより、皮膚、口腔、肺、肝臓、消化管などのさまざまな組織や臓器が影響を受けます。
cGVHDの症状には、皮膚の発疹や硬化、口内炎、関節の痛みやこわばり、肝機能障害、肺炎などがあり、重症な場合、cGVHDは生命を脅かすこともあります。
治療は、免疫抑制療法やステロイドなどの抗炎症薬の使用など、症状を管理するためのさまざまな方法があります。
ただし、cGVHDの治療は難しい場合があり、再発や合併症のリスクが高いことがあります。
どんな疾患なのかは、幹細胞移植以前に行われていた臓器移植で見られた拒否反応を知る必要があります。
まず、ドナー(donor)とレシピエント(recipient)は、臓器移植や組織移植などの医療手術における重要な役割を果たす用語の理解が重要です。
ドナー(donor)は、臓器や組織を提供する人のことを指します。一般的には、他の人に対して自らの臓器や組織を提供することに同意した人を指します。
ドナーは、生体ドナー(生きた人からの臓器提供)または死体ドナー(脳死または心停止した人からの臓器提供)のがあります。
レシピエント(recipient)は、臓器移植や組織移植を受ける人のことを指します。
移植手術において、レシピエントは臓器や組織を必要とする患者であり、移植が行われることで彼らの健康状態が改善されることを期待しています。
臓器移植手術では、ドナーから臓器や組織が摘出され、それが適切な手順に従って処理された後、レシピエントに移植されます。
このプロセスは、臓器不全による生命の危機に直面している患者にとって、生きるための重要なチャンスを提供するものです。
臓器移植は、臓器の損傷や機能不全によって生じる臓器不全を治療するために行われる手術です。
典型的な移植手術には、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓などの臓器が含まれます。
現在でも移植手術は患者の生命を救い、生活の質を改善するための効果的な治療法です。
しかし、臓器移植後、移植された臓器が受け入れられない場合があり、これを移植拒絶反応と呼びます。
拒絶反応は、免疫系が移植された臓器を異物として認識し、攻撃する反応です。
免疫系は身体を保護するために外部からの異物や病原体を攻撃するのですが、移植された臓器もこの対象に含まれる場合があります。
移植拒絶反応は、急性拒絶反応と慢性拒絶反応の2つの主要なタイプがあります。
急性拒絶反応は、移植後数週間から数か月以内に発生することが一般的であり、臓器の損傷や機能低下を引き起こす可能性があります。
慢性拒絶反応は、より長期的な問題であり、数か月または数年後に発生する場合があります。
移植拒絶反応を防ぐために、移植後は免疫抑制薬が投与されることが一般的です。
これにより、免疫系の活性が抑制され、移植された臓器が受け入れられる可能性が高まります。また、定期的な医学的モニタリングとフォローアップも重要です。
移植拒絶反応は、ドナーの臓器に対してレシピエントの身体が異物と認識するために攻撃する疾患です。
慢性移植片対宿主病はその逆で、レシピエントの体をドナーの細胞が攻撃する疾患です。
慢性移植片対宿主病が起こる原因
移植片対宿主病(GVHD)は、移植された免疫細胞(通常は造血幹細胞)が移植者の組織を攻撃する自己免疫反応です。
造血幹細胞を移植する場合、レシピエントの身体では造血幹細胞由来の細胞が移植前処置で除去されているケースがほとんどです。
その状態では主に以下のような要因によってGVHDが引き起こされます。
まずは免疫細胞の識別が原因となります。
移植された免疫細胞は、受信者の組織や細胞を異物と認識します。これは、移植された細胞が移植者と違うHLA(ヒト白血球抗原)型を持っているために起こります。
また、T細胞の活性化も原因の一つです。
移植されたT細胞は、受信者の組織に対する反応を引き起こすために活性化されます。
これにより、細胞傷害性のサイトカインが放出され、免疫系の他の細胞が引き起こされます。
そして活性化されたT細胞は、サイトカインと呼ばれる免疫シグナル分子を放出します。
これらのサイトカインは、他の免疫細胞を誘引し、活性化し、炎症反応を引き起こします。
サイトカインによるこれらの免疫反応は、皮膚、消化管、肝臓、肺など、移植片対宿主病が発症する可能性のある臓器や組織にダメージを与えます。
これらのプロセスによって、GVHDは急性または慢性の症状を引き起こし、患者の生活の質を著しく低下させます。
GVHDの予防や治療には、免疫抑制療法やステロイドなどの抗炎症薬の使用が含まれますが、治療が難しい場合もあります。
GVHDの治療方法は以下に挙げられる方法、薬品が使われています。
まず免疫抑制療法です。
GVHDの治療には、免疫抑制剤の投与が一般的です。
これらの薬物は、移植された免疫細胞の活性を抑制し、自己免疫反応を減少させる効果があります。
一般的には、ステロイド(例:プレドニゾン)、シクロスポリン、タクロリムスなどの免疫抑制剤が使用されます。
抗炎症薬を使う場合、GVHDによる炎症反応を抑制する事を目的とする薬剤が使われます。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やその他の抗炎症薬がその代表例です。
GVHDの治療には、抗体医薬品も使用されることがあります。
たとえば、TNF-α阻害剤やIL-2受容体抗体などが使用される場合があります。
さらに、GVHDに対する免疫療法の進化により、免疫抑制剤や抗体療法と組み合わせて、特定の免疫細胞の除去や調節が試みられることがあります。
加えて、移植片拒絶反応を減少させるための転移阻害剤が使用されることもあります。
GVHDの症状に対する対症療法も治療方法に挙げられます。
例えば、皮膚症状の場合には保湿剤やステロイドクリームが使用されることがあります。
選択的ROCK2阻害剤とは?
「レズロックR錠 200mg」(一般名:ベルモスジルメシル酸塩)はROCK2阻害剤に分類される薬剤です。
ROCK2阻害剤は、ROCK2(Rho-associated coiled-coil-containing protein kinase 2)と呼ばれるタンパク質キナーゼを標的とする医薬品です。
ROCK2は、Rho GTPase経路を介して細胞骨格の再編成や細胞運動などの多くの生物学的プロセスに関与しています。
選択的ROCK2阻害剤は、ROCK2に対して特異的な抑制効果を持ち、ROCK1など他の類似のタンパク質キナーゼには影響を与えません。
ROCK2の選択的な阻害は、特定の疾患や病態に対して治療的効果を持つ可能性があります。
ROCK2阻害剤は、例えば自己免疫疾患や線維症(線維化性疾患)などの病態に関連する炎症や線維化の抑制において有望な治療薬として研究されています。
また、心血管系や中枢神経系における疾患の治療にも応用される可能性があります。