1. 日本メナードと藤田医科大学による皮膚研究の成果

日本メナード化粧品株式会社と、藤田医科大学医学部応用細胞再生医学講座と皮膚科学講座の研究グループは、皮膚の老化に関わるコラーゲン産生について新しい発見をし、論文として発表しました。

 

日本メナードは1959年11月に設立された企業で、資本金約7000万円、売上高は約500億円、従業員数が約1000人の化粧品メーカーです。

売り上げの90 %が化粧品販売によるもので、多くのテレビCMが流れており、目にすることも多いでしょう。

 

藤田医科大学は愛知県に本部を置く私立大学で、1968年に創立されました。

設立当初は名古屋保健衛生大学という名前でしたが、設立者である藤田啓介・藤田学園総長の名前にちなみ、藤田学園保健衛生大学、そして藤田保健衛生大学と改称、2018年に大学創立50周年をきっかけに藤田医科大学に改称しました。

 

この研究によって明らかになったことは、真皮幹細胞が分泌するカプセル状の物質、エクソソームに含まれる特定の成分が、皮膚のコラーゲン産生に関係していることです。

この成分は、加齢によって減少し、結果として皮膚のコラーゲン酸性が低下することが明らかとなりました。

 

2. 真皮幹細胞、コラーゲン、エクソソームとは?

まず、肌がどういう構造をしているのかを解説します。

肌は、表皮、真皮、皮下組織に大きく分けられますが、見た目に重要なのは、表皮と真皮です。

表皮は肌の一番外側で、3つの層の中で最も薄い組織です。

役割は、外的刺激から皮膚そのものを守るバリア機能で4層からなる構造を持っています。

バリア機能を持っていますが、厚さはおよそ0.2 mmで以外と薄いことが特徴です。

表皮は肌の見た目を決定づける重要な部分で、表皮内の水分の油脂分がバランスを取っていると、みずみずしいと言われる肌になります。

 

真皮は表皮の下にあり、見た目の老化に最も関係します。

コラーゲン繊維やエラスチンなどの繊維群から構成されており、触ったときに感じる柔らかさ、張り、弾力はこの真皮によるものです。

構成する細胞の間には、水分、各種タンパク質、糖質、ヒアルロン酸などがあり、これらが加齢と共に失われていくと皺やたるみの原因になります。

 

真皮と表皮は当然密接な関係があります。

表皮には毛細血管がないため、真皮は自分の毛細血管を通じて表皮に栄養を送り、表皮の活発な新陳代謝を支えています。

つまり、真皮が老化によって活性を失うと、栄養の供給が不十分になる表皮にも影響が出てきてしまうのです。

 

そして肌に影響する物質としてコラーゲンが挙げられます。

今回の発見には、真皮幹細胞が分泌する物質がコラーゲン再生に関わっていることを示す結果が含まれています。

 

コラーゲンは、主に脊椎動物の真皮、骨、軟骨などを構成するタンパク質の一つです。

多細胞生物は細胞の集合体ですが、その細胞と細胞の間にある細胞外基質、またの呼び名を細胞外マトリックスの主成分です。

ヒトの場合、体内のタンパク質の約30 %がこのコラーゲンです。

 

そして今回の重要なものにエクソソームがあります。

エクソソームは、エキソソームと呼ばれることもあるもので、「膜結合性の細胞外小胞」と説明されます。

最近機能が解明されてきたもので、多制帽生物の体内では、血液、尿、脳性脊髄液を含む体液中に含まれている場合もあります。

 

原理は、細胞が自分の中に持っている物質を、膜に包んでカプセルのように細胞外に放出します。

細胞を人工的に培養しているときにも、培養されている細胞はこのエクソソームを分泌しています。

幹細胞でもエクソソームに封入して細胞外に物質を排出することがあります。

物質を排出するのですが、老廃物とは限りません。

 

エクソソームは排出されると、他の細胞の膜にとりつき、とりつかれた細胞はエクソソームないの物質を自分の中に取り込みます。

つまり、細胞同士の情報交換に使われているのです。

エクソソームの中には、タンパク質だけでなく、マイクロRNAなども封入されます。

 

3. 研究の内容

さて、このエクソソームがどのようにして真皮幹細胞や肌と関連するのでしょうか。

真皮幹細胞は、皮膚のコラーゲンを作り出す繊維芽細胞の起源となる細胞です。

そのため、真皮幹細胞が十分機能していないと繊維芽細胞が不足し、結果としてコラーゲンが不足、肌に悪影響が出てきます。

 

それだけでなく、真皮幹細胞はエクソソーム内にANP32B (Acidic Nuclear Phosphoprotein 32 Family Member B) というタンパク質を封入して分泌します。

このANP32Bというタンパク質は、加齢によって真皮幹細胞からの分泌が減少することが知られています。

分泌だけでなく、真皮幹細胞内のANP32Bの発現も減少し、結果としてANP32Bの生産量が低下します。

 

繊維芽細胞は、真皮幹細胞からのANP32Bを受け取ってコラーゲンを産生しますが、彼などによって真皮幹細胞からのANP32Bの分泌が減少すると、繊維芽細胞が受け取るANP32Bも減少し、最終的には繊維芽細胞のコラーゲン産生が低下します。

 

4. 幹細胞とエクソソーム

幹細胞とエクソソームは最近注目され低領域です。

骨髄、臍帯由来の幹細胞が分泌するエクソソームの中には、組織の修復効果を示す分子を封入したものがあり、幹細胞の代替としてこういった物質を封入したエクソソームを再生医療に使えないかという研究も行われています。

 

人工的に幹細胞を培養し、培養液中にこうしたエクソソームを分泌させ、そのエクソソームを回収後に濃縮して生体内に点滴、注射で入れていくという治療も、具体的に試験を行う段階まで進歩しています。

 

しかし、今まで真皮幹細胞については、分泌するエクソソームが他の幹細胞と比べて少ないことから、あまり真皮幹細胞が分泌するエクソソームに注目はされていませんでした。

しかし、幹細胞を人工培養したときの培養液中に、様々な有効成分が含まれていたことから、分泌量が少なくても有効成分があるかも知れないと考え、真皮幹細胞に注目する研究がいくつか始まりました。

その中の一つが今回の日本メナードと藤田医科大学との共同研究です。

 

そもそも、真皮幹細胞が分泌するエクソソームが少ないにも関わらず、分泌後に他の細胞に重要な刺激を与えているということは、真皮幹細胞が分泌している物質(エクソソーム内の)は、少量で大きな効果を与える物質と解釈することができます。

少量で効果が期待できるという点は、医薬品に限らず、美容などの製品にとっても非常に有利で、重要な特徴です。

 

ANP32Bタンパク質は、正式にはAcidic Nuclear Phosphoprotein 32 Family Member Bという名前で、日本語では「産生ロイシンリッチ核リン酸化タンパク質32ファミリーメンバーB」と呼ばれ、白血病細胞との関連が研究されています。

また、ウイルス感染時の機能も徐々に解明されつつあり、ここ数年で注目を浴びつつあるタンパク質です。

 

さらに、遺伝子発現調節の際に、DNAを「ほどく」ステップでもKLF5などのタンパク質と相互作用しながら関与していることが明らかになっており、今後さらに機能解析が進み、有用な機能が見つかるのではないかと期待されています。

 

今回、肌の老化に関して、老化を完全に止められないにしても老化の進行を遅らせることができるかも知れない、という結果が得られたことから、日本メナードはこのANP32Bタンパク質に関連した美容製品の開発を開始するのではないかと考えられます。

 

ただし、ヒトの身体の老化を「止める」ということはほぼ不可能です。

若返り、とは通常よりも進行してしまった、または進行が早い老化現象にブレーキをかけることです。

ここから数年間の日本メナードが、幹細胞由来の物質を使ってなんらかの美容製品を発表できるかどうか、その製品がどのくらいの効果を持っているのか、今回の研究によってしばらくは日本メナードの商品開発は注目されるでしょう。