下垂体機能低下症とは
下垂体機能低下症は、脳の下にある「下垂体」から必要なホルモンが十分に出なくなる病気です。
下垂体はとても小さな器官ですが、甲状腺、副腎、卵巣、精巣などへ指示を出し、体のホルモンバランスを調整しています。そのため下垂体の働きが低下すると、一つのホルモンだけではなく、複数のホルモンが不足することがあります。
原因はさまざまです。下垂体にできた腫瘍のほか、下垂体周辺の手術や放射線治療、炎症、頭部のけが、下垂体への出血などによって正常な組織が傷つくことがあります。原因がはっきりしない場合もあります。
不足するホルモンによって症状も変わります。
たとえば、甲状腺を働かせるホルモンが不足すると、疲れやすい、寒さを感じやすい、体重が増えるといった症状が現れます。副腎に指示を出すホルモンが不足すると、強いだるさや食欲低下、低血圧などが起こることがあります。
成長ホルモンが不足した成人では、疲れやすさや筋力低下、体脂肪の増加などがみられることがあります。性ホルモンに関係するホルモンが不足すると、女性では月経異常、男性では性機能の低下などにつながります。
つまり下垂体機能低下症では、「どのホルモンが不足しているのか」を一つずつ確認することが大切です。
国内では、下垂体前葉機能低下症は指定難病となっています。適切にホルモンを補うことで日常生活を維持できる方も多い一方、長期間にわたって治療を続ける必要がある病気です。
不足したホルモンを補うことが標準治療の基本
下垂体機能低下症の治療では、不足しているホルモンを薬で補う「ホルモン補充療法」が中心になります。
たとえば、副腎皮質ホルモンが不足している場合にはヒドロコルチゾンなどを補います。甲状腺ホルモンが不足している場合にはレボチロキシンを使います。成長ホルモン分泌不全が確認され、治療が適している場合には成長ホルモンを補う治療も選択肢になります。
女性ホルモンや男性ホルモンが不足している場合にも、年齢や妊娠希望などを考えながら必要な治療を行います。
一方、原因となる下垂体腫瘍などがある場合には、ホルモンを補うだけではなく原因そのものへの治療も必要です。腫瘍が視神経を圧迫している場合などには手術が行われることがあります。
ホルモン補充療法は非常に重要ですが、健康な下垂体そのものの働きを元に戻す治療とは異なります。
下垂体の機能が十分に回復しない場合には、長期間にわたって薬を使い続ける必要があります。また、体調や年齢、妊娠、手術、感染症などによって必要な薬の量が変わることもあります。
特に副腎皮質ホルモンが不足している方では注意が必要です。感染症などで体に強いストレスが加わったときに必要な量のホルモンを確保できないと、急激に状態が悪化する「副腎クリーゼ」につながることがあります。
「薬で数値は安定しているけれど、疲れやすさが残っている」「これからずっとホルモン補充を続けるのか不安」と感じる患者さんもいるでしょう。
そこで、現在の治療を続けながら、下垂体や周辺組織の状態を支える方法として再生医療について情報を集めるという考え方があります。
骨髄由来MSCから、傷ついた組織を支える環境を考える
国際幹細胞普及機構では、再生医療の中でも間葉系幹細胞(MSC)、特に骨髄由来MSCに注目しています。
MSCは骨髄や脂肪などに存在する細胞です。さまざまな細胞へ変化する性質だけではなく、周囲へ多くの物質を放出し、炎症や免疫反応、組織を取り巻く環境に働きかける性質が研究されています。
下垂体そのものにも、幹細胞としての性質を持つ細胞が存在することが分かっています。SOX2という目印を持つ下垂体の細胞は、自分自身を増やしながら複数のホルモン産生細胞へ変化できることが確認されています。下垂体が傷ついた際に、こうした細胞が反応することも報告されています。
ただし、ここは分けて考える必要があります。
骨髄由来MSCが、不足している下垂体ホルモンを直接作ったり、傷ついた下垂体を元通りにしたりする標準治療として使われているわけではありません。現在必要なホルモン補充療法を、MSCへ置き換えるものでもありません。
一方、MSCを使った再生医療そのものは、国内外ですでにさまざまな疾患を対象として臨床で行われています。海外では、提供者から得た他家MSCを使う治療も実際に利用されています。
国内では、骨髄由来MSCを培養した際に得られる「培養上清液」を使った医療が自由診療として提供されている例もあります。
培養上清液とは、MSCそのものではなく、細胞を培養している間に放出された成長因子やサイトカインなど、さまざまな成分を含む液体です。
ただし、こうした医療は下垂体機能低下症に対して国が承認した標準治療とは扱いが異なります。
下垂体機能低下症についても、当機構には改善の報告が寄せられています。ただし、不足しているホルモンの種類や下垂体が傷ついた原因、現在の症状は一人ひとり異なります。
そのため当機構では、「幹細胞を使えばホルモン補充が不要になる」と考えるのではなく、現在必要な治療を続けながら、追加で検討できる選択肢があるかを整理することが重要だと考えています。
不足するホルモンと原因を確認し、相談できる医療を整理する
下垂体機能低下症では、病名だけを見ても必要な治療は分かりません。
ACTH、TSH、成長ホルモン、LH・FSHなど、どのホルモンがどの程度不足しているのかを確認する必要があります。複数のホルモンが同時に不足している方もいます。
また、なぜ下垂体の働きが低下したのかも重要です。
下垂体腫瘍があるのか。手術後なのか。炎症によって組織が傷ついたのか。放射線治療や頭部外傷が関係しているのか。それによって、必要な経過観察や治療は変わります。
国際幹細胞普及機構では、患者さんの血液検査やMRIなどの検査結果、現在使っている薬、これまで受けた手術や治療、現在困っている症状、ご希望を整理します。
そのうえで、現在の標準治療を土台としながら、骨髄由来MSCや培養上清液を含む再生医療について、実際に相談できる選択肢へおつなぎすることを重視しています。
たとえば、ホルモン補充によって検査値が安定している方でも、体調面に悩みが残っている場合があります。一方で、腫瘍など原因となる病気が残っている場合には、まずその治療が重要になることもあります。
再生医療について検討するときも、「今の治療か再生医療か」という二つの選択肢に分ける必要はありません。
現在必要な治療を続けながら、自分の状態では追加でどのような方法を相談できるのかを整理することが大切です。
治療方針や期待できる変化は、一人ひとりの状態によって異なります。現在治療を受けている方は、主治医にもご相談いただきながら、再生医療についての情報を整理してください。
下垂体機能低下症の治療をご検討の方へ
下垂体機能低下症は、不足するホルモンによって症状が大きく異なり、長期間の薬の使用や体調管理について患者さんやご家族が不安を感じやすい病気です。
「ホルモン補充を続けているけれど、疲れや不調が残っている」
「今受けている治療以外にも、自分に相談できる方法があるのか知りたい」
「再生医療について情報を知りたい」
そういった方に対して、治療の選択肢や情報を整理することは非常に重要です。
当機構では、再生医療に関する情報提供および相談対応を行っております。
ご相談をご希望の方は、下記お問い合わせフォームよりご連絡ください。


