原発性免疫不全症候群と再生医療|免疫を立て直す治療とMSCの可能性

目次

原発性免疫不全症候群とは

原発性免疫不全症候群は、生まれつき免疫の仕組みに異常があり、細菌やウイルス、真菌などへの防御力が低下する病気の総称です。現在は「先天性免疫異常症」と呼ばれることも多く、原因となる遺伝子や病型は500種類を超えています。

どの免疫機能に異常があるかによって症状は大きく異なります。

繰り返し肺炎や中耳炎、副鼻腔炎を起こす方もいれば、通常は重症化しにくい感染症が長引く方もいます。一方で、感染症よりも自己免疫疾患、自己炎症、アレルギー、血球減少などが目立つ病型もあります。

原因となる遺伝子によって、抗体を作るB細胞、感染した細胞を排除するT細胞、好中球など、障害される免疫機能もさまざまです。そのため「免疫力が弱い」という一言だけでは状態を正しく把握できません。

重症複合免疫不全症のように、乳児期から重い感染症を起こし、早期に治療を行わなければ命に関わる病型もあります。一方、成人になってから繰り返す感染症をきっかけに診断されるケースもあります。

大切なのは、原発性免疫不全症候群が一つの病気ではないという点です。

どの免疫機能が障害されているのか、どの遺伝子が関係しているのか、感染症や自己免疫症状がどの程度あるのかによって、必要な治療は大きく変わります。

感染を防ぐ治療から造血幹細胞移植まで、病型ごとに治療は異なる

原発性免疫不全症候群の治療は、病型と重症度に合わせて選択されます。

比較的軽い病型では、細菌やウイルス、真菌による感染症を防ぐために予防的な抗菌薬などを使用します。抗体が不足する病型では、ヒト免疫グロブリン製剤を定期的に補充する治療が行われます。

好中球が少ない病型ではG-CSFという薬を使って好中球を増やしたり、慢性肉芽腫症では病型に応じた感染予防や治療を行ったりします。

一方、重症複合免疫不全症などの重い病型では、「造血幹細胞移植」が重要な治療選択肢になります。

造血幹細胞とは、赤血球や白血球、血小板などの血液細胞を作るもとになる細胞です。適切なドナーから得た造血幹細胞を移植し、異常のある免疫系を新しい造血・免疫系へ置き換えることを目指します。

現在は骨髄だけでなく、末梢血幹細胞や臍帯血なども移植に利用されています。日本造血・免疫細胞療法学会でも、原発性免疫不全症に対する造血幹細胞移植の指針が整備されています。

病型によっては遺伝子治療が検討されることもあります。

ただし、すべての患者さんが造血幹細胞移植の対象になるわけではありません。病型、年齢、感染症の状態、臓器障害、適切なドナーの有無などを考慮して判断されます。

さらに、移植を受ければそれですべてが終わるわけではありません。移植後には感染症や免疫再構築の経過を慎重にみる必要があり、移植片対宿主病(GVHD)などの合併症への対応が必要になることもあります。

原発性免疫不全症候群では、「免疫を補う治療」「感染を防ぐ治療」「免疫系そのものを作り直す治療」を病型ごとに組み合わせて考えることが重要です。

骨髄由来MSCは免疫調整という別の役割を持つ

国際幹細胞普及機構では、再生医療の中でも間葉系幹細胞(MSC)、特に骨髄由来MSCに注目しています。

ここで重要なのは、造血幹細胞とMSCは同じ「幹細胞」でも役割が異なることです。

造血幹細胞は血液や免疫細胞そのものを作る細胞です。一方、MSCは骨髄などに存在し、周囲へさまざまな物質を放出しながら、炎症や免疫反応、組織を取り巻く環境へ働きかける性質が研究されています。

そのため、原発性免疫不全症候群でMSCを考える場合、「異常のある免疫細胞をMSCで置き換える」という考え方ではありません。

特にMSCが臨床で研究・利用されてきた領域の一つが、造血幹細胞移植後に起こるGVHDです。

GVHDとは、移植したドナー由来の免疫細胞が患者さんの体を異物として攻撃する合併症です。骨髄由来MSCには免疫反応を調節する性質があるため、国内外でGVHDに対する細胞治療として研究されてきました。

米国では2024年、健康な成人ドナーの骨髄から作られた他家MSC製品が、小児のステロイド抵抗性急性GVHDに対してFDA承認を受けています。

これは、骨髄由来MSCが免疫系に関わる病態で実際に医療へ使われている一例です。

ただし、この承認は原発性免疫不全症候群そのものに対する治療ではありません。原発性免疫不全症候群の原因遺伝子や免疫細胞の異常を、MSCが直接正常化するという意味でもありません。

国内では、骨髄由来MSCを培養した際に得られる培養上清液を使った医療が自由診療として提供されている例があります。培養上清液には、MSCが培養中に放出したさまざまな成分が含まれます。

当機構では、原発性免疫不全症候群についても改善の報告が寄せられています。ただし、病型や治療歴、免疫機能、感染症の状態は患者さんごとに大きく異なります。

そのため、MSCや培養上清液を標準治療の代わりに考えるのではなく、必要な治療を続けながら追加で相談できる選択肢として整理することが重要です。

病名だけでなく、免疫機能と治療歴を整理して選択肢へつなぐ

原発性免疫不全症候群では、同じ病名の中でも患者さんの状態が大きく異なります。

どの遺伝子異常があるのか。抗体が不足しているのか。T細胞や好中球などの機能に問題があるのか。どのような感染症を繰り返してきたのか。こうした情報によって必要な治療は変わります。

さらに、造血幹細胞移植をすでに受けているかどうかも重要です。

移植前であれば、まず移植の適応やドナー、現在の感染症などを専門医と検討する必要があります。移植後であれば、免疫がどの程度回復しているのか、GVHDや感染症、臓器障害が残っていないかを確認します。

国際幹細胞普及機構では、現在の診断名だけでなく、免疫検査、遺伝子検査、感染症の既往、免疫グロブリン補充の有無、これまでの移植治療、現在困っている症状などを整理します。

そのうえで、標準治療を土台としながら、骨髄由来MSCや培養上清液を含む再生医療について、現在の状態で実際に相談できる選択肢があるかを考えます。

原発性免疫不全症候群は専門性が高く、希少な病型も多い疾患群です。現在の診療でも、原因遺伝子や病型に応じた個別化治療と、専門施設との連携が重要とされています。

再生医療を検討する場合も、「幹細胞なら何でも同じ」と考えないことが大切です。

免疫系そのものを作り直す造血幹細胞移植と、免疫・炎症環境への働きかけが研究されているMSCでは、目的が異なります。

治療方針や期待できる変化は個々の状態によって異なります。現在受けている治療を自己判断で中断せず、主治医にもご相談いただきながら、追加できる選択肢として再生医療について情報を整理してください。

原発性免疫不全症候群の治療をご検討の方へ

原発性免疫不全症候群は、病型によって感染症の起こり方や必要な治療が大きく異なり、長期的な感染予防や移植治療について患者さんやご家族が不安を抱えやすい疾患群です。

「感染症を繰り返していて、今後の治療について整理したい」

「造血幹細胞移植や今の治療に加えて、相談できる選択肢があるのか知りたい」

「再生医療について情報を知りたい」

そういった方に対して、治療の選択肢や情報を整理することは非常に重要です。

当機構では、再生医療に関する情報提供および相談対応を行っております。
ご相談をご希望の方は、下記お問い合わせフォームよりご連絡ください。

[お問い合わせ・ご相談はこちら]

目次