「このしびれや歩きにくさは、もう良くならないのでしょうか?」
後縦靱帯骨化症(OPLL)と診断されたとき、多くの患者様が最初に抱くのがこの不安です。
「骨が神経を圧迫しています」
「症状が進めば手術になります」
「骨は元には戻りません」
そう説明を受け、「このまま歩けなくなってしまうのではないか」「手が動かなくなってしまうのではないか」と不安を感じている方も多いと思います。
現在、後縦靱帯骨化症の治療は、痛み止めやリハビリなどの保存療法、そして神経の圧迫を取り除く手術が中心となっています。
しかし、これらの治療は神経の圧迫による症状を改善したり、進行を防ぐことには有効ですが、骨化そのものを元に戻す治療ではありません。
そのため、「手術をしても骨化は治らない」「この病気は進行する可能性がある」と説明され、将来への不安を抱えている患者様も少なくありません。
近年、神経の炎症を抑え、神経を保護し、ダメージを受けた神経機能の回復を目指す再生医療として、幹細胞や幹細胞培養上清液を用いた研究が進められています。
本記事では、後縦靱帯骨化症の現在の標準治療と、その限界、そして再生医療の研究や可能性について、医学的な考え方をもとに解説します。
後縦靱帯骨化症(OPLL)の体の中では何が起きているのか?
後縦靱帯骨化症は、背骨の中を通っている「後縦靱帯」という靱帯が、少しずつ骨のように硬くなっていく病気です。
本来、靱帯は柔らかい組織で、背骨を支えたり安定させたりする役割があります。しかしこの病気では、靱帯の中にカルシウムが沈着し、骨のような組織に変化してしまいます。これを骨化と呼びます。
骨化が進むと、脊髄や神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されることで様々な症状が出ます。
主な症状としては、手のしびれ、足のしびれ、首や肩の痛み、手の細かい作業がやりにくい、歩きにくい、転びやすいなどがあります。
症状が進行すると、手足の麻痺や排尿障害、歩行困難などが起こることもあります。
この病気は日本人に比較的多いことが知られており、厚生労働省の指定難病にも指定されています。
「手術」と「保存療法」現在の標準治療の限界とジレンマ
現在、病院で行われている後縦靱帯骨化症の標準治療は、大きく分けて保存療法と手術になります。
保存療法でできること
保存療法では、痛み止めや神経の薬、筋肉をほぐす薬、リハビリ、生活指導などが行われます。
これらの治療は、痛みやしびれを軽くしたり、日常生活を送りやすくするためには非常に重要です。
しかし、これらの治療は骨化そのものを止めたり、骨化を小さくする治療ではありません。
つまり、症状を抑えることはできても、病気の原因そのものを治す治療ではないという側面があります。
手術が必要になるのはどんな場合か
症状が進行して歩きにくくなったり、手が使いにくくなったり、排尿障害が出てきた場合には手術が検討されます。
手術では、骨化した部分そのものを完全に治すというよりも、神経の通り道を広げて圧迫を減らすことが目的になります。
手術をしても骨化は治るわけではない
手術は骨化をなくす手術ではなく、神経の圧迫を減らすための手術です。
そのため、手術をしても骨化がなくなるわけではありません。
また、神経のダメージが強い場合、手術をしても症状が完全には戻らないこともあります。
さらに、別の場所の靱帯が骨化してくる可能性もあります。
このように、現在の標準治療は非常に重要である一方で、「骨化そのものを治す治療」や「神経を回復させる治療」が確立されているわけではないという現状があります。
「神経保護」と「炎症抑制」再生医療・幹細胞という新しいアプローチ
近年、神経の炎症を抑え、神経を保護し、ダメージを受けた神経の回復をサポートする治療として、再生医療の研究が進められています。
その中でも研究が進められているのが、間葉系幹細胞(MSC)と呼ばれる細胞です。
間葉系幹細胞は、骨髄、脂肪、臍帯などに含まれる細胞で、様々な細胞に分化する能力だけでなく、炎症を抑える、免疫を調整する、神経を保護する、血流を改善するなどの作用があることが研究されています。
幹細胞上清液とは何か
幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養した際に細胞が分泌した成長因子やサイトカインなどの成分を含む液体のことです。
幹細胞そのものを体内に投与する方法ではなく、幹細胞が分泌する成分のみを利用する方法として研究されています。
これらの成分には、炎症を抑える作用、血管を新しく作る作用、組織修復を助ける作用、神経保護作用などがあると報告されています。
なぜ幹細胞や幹細胞上清液が後縦靱帯骨化症に使われることがあるのか
後縦靱帯骨化症は、骨化そのものが問題というよりも、骨化によって脊髄や神経が圧迫され、神経がダメージを受けることで症状が出ます。
そのため、神経の炎症を抑える、神経細胞を保護する、血流を改善する、神経の回復を助けるといった作用が期待される治療が研究されています。
ここで重要なのは、幹細胞治療や幹細胞上清液治療は、骨化そのものを消す治療ではなく、神経の炎症やダメージを抑え、神経機能の維持や回復を目指すという考え方の治療であるという点です。
「研究段階」だからこそ、知っておくべきこと
非常に重要な点として、後縦靱帯骨化症に対する幹細胞治療や幹細胞上清液治療は、現時点では標準治療として確立された治療ではありません。
また、日本では保険適用の治療ではなく、自由診療として行われている医療になります。
現時点で確立されている事実として、骨化を消す治療、骨化を完全に止める治療、骨化を元に戻す治療は確立されていません。
一方で、神経障害、脊髄損傷、炎症性疾患などの分野では、間葉系幹細胞を用いた再生医療の研究が世界中で進められているのも事実です。
治療を検討する場合には、標準治療ではないこと、研究段階の治療であること、効果やリスクについて十分に説明を受けることが重要です。
後縦靱帯骨化症の治療をご検討の方へ
後縦靱帯骨化症は進行性の病気であり、将来に不安を感じている患者様も多い病気です。
「手術と言われているが他の方法も知りたい」
「これ以上悪化する前にできることはないか」
「再生医療について情報を知りたい」
そういった方に対して、治療の選択肢や情報を整理することは非常に重要です。
当機構では、再生医療に関する情報提供および相談対応を行っております。
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