レブロジル、骨髄異形成症候群に伴う貧血の治療薬として製造販売承認を取得

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レブロジル、骨髄異形成症候群に伴う貧血の治療薬として製造販売承認を取得

ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社は20241月、レブロジル(一般名:ルスパテルセプト(遺伝子組換え))について、骨髄異形成症候群(MDS)に伴う貧血を効能又は効果として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを発表しました。 

 

ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol Myers Squibb)は、アメリカ合衆国に本社を置く世界的な製薬会社です。 

1887年に創業され、医薬品の開発を中心に活動しています。 

 

ブリストル・マイヤーズ スクイブは、がん治療、心臓血管疾患、免疫系疾患、感染症など、さまざまな疾患に対する医薬品の開発・製造・販売を行っています。 

特にがん治療分野では、多くの革新的な治療法を提供しており、がん患者の生存率や生活の質を向上させるための取り組みを行っています。 

一方で研究開発にも積極的に取り組んでおり、新しい医薬品の開発や臨床試験を行っています。 

さらに、ブリストル・マイヤーズ スクイブは持続可能な事業活動を推進するために、環境保護や社会貢献活動にも力を入れています。 

 

骨髄異形成症候群とはどんな疾患か

血液の中にある赤血球、白血球、血小板などを血液細胞といいます。 

血液細胞は、骨の中心部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血幹細胞からつくられます。 

血液細胞のほとんどは造血幹細胞という骨髄や血液中に存在する特殊な細胞が作り出されます。 

 

造血幹細胞は非常に重要であり、血液細胞の生産が乱れると、貧血や免疫機能の低下、出血傾向などの健康問題が生じる可能性があります。 

また、造血幹細胞は移植手術においても重要な役割を果たします。例えば、白血病や他の血液疾患の治療において、患者自身の造血幹細胞を取り出し、再移植することが行われます。 

 

造血幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれて成長し、骨髄系幹細胞からは、赤血球、白血球(顆粒球、単球)、血小板などがつくられ、リンパ系幹細胞からは白血球の一種であるリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)がつくられます。 

 

骨髄異形成症候群(Myelodysplastic Syndrome、MDS)は、この造血幹細胞のうち、骨髄系幹細胞に生じた異常が原因と考えられる病気の一つです。 

1種類の疾患ではなく、複数の疾患の集まった集合体と考えられています。 

 

骨髄異形成症候群では、造血幹細胞が成熟する過程の未熟な血液細胞で成長が止まったり、血液細胞に成長しても細胞が壊れているために血球が減少したり、形態や機能に異常が生じるなどの現象が見られます。 

 

血液細胞が減少するパターンも1つではなく、血液細胞のうち、赤血球、白血球、血小板すべてが減る場合と、いずれかが減る場合があります。 

骨髄異形成症候群の一部は、進行すると急性骨髄性白血病に移行することがあり、骨髄異形成症候群は非常に危険な疾患と言えます。 

 

骨髄異形成症候群は通常、高齢者によく見られますが、すべての年齢層で発生する可能性があります。症状には、貧血、出血傾向、感染の増加などが含まれます。 

骨髄異形成症候群を治療する場合、治療法には、輸血、造血幹細胞移植、化学療法などが含まれますが、治療計画は患者の年齢、健康状態、病気の進行度などによって異なります。 

 

骨髄異形成症候群は経過とともに約80%~90%の患者が貧血を発症します。 

貧血を呈する骨髄異形成症候群の患者の多くは、正常な赤血球の循環量を確保するために定期的に輸血が必要となりますが、頻繁な輸血によって鉄過剰症、輸血反応、輸血血液からの感染など多くのリスクにさらされます。 

 

輸血の負荷が高くなると低リスク骨髄異形成症候群患者の生存率を低下が報告されおり、
日本における骨髄異形成症候群の罹患率は、人口10万人あたり、年間約3.0例、厚生労働省による2020年の患者数調査では、日本の骨髄異形成症候群患者の総数は約22,000人と報告されており、無視できない疾患と考えられています。 

 

骨髄異形成症候群の治療は、染色体検査を含む検査の結果から高リスクか低リスクかを医師が判断することから始まります。 

低リスクの場合で症状がない場合には、定期的に受診し様子を見ることがあります。 

状態によっては、貧血を改善する薬を使うなどのさまざまな治療が行われることがありますが、症状がある場合には、輸血などの治療も行われます。 

 

高リスクの場合は、可能であれば造血幹細胞移植が行われます。造血幹細胞移植が難しい場合には、細胞障害性抗がん薬を使った治療が行われます。 

 

レブロジルとは?

レブロジルは、赤血球成熟促進薬として造血幹細胞から赤血球への分化過程の後期段階における分化を促進し、成熟した赤血球数の増加を誘導する新規作用機序の治療薬です。 

 

今回の承認は、国際共同第相試験(COMMANDS試験)、海外第相試験(MEDALIST試験)、および赤血球輸血非依存の低リスクMDS患者を対象とした国内第相試験(MDS-003試験)の結果にもとづいています。 

対象としている患者は、赤血球輸血依存でIPSS-Rによるリスク分類のVery low、Low又はIntermediate、つまり低リスクに分類される骨髄異形成症候群患者です。 

 

これらの試験でレブロジルは低リスク骨髄異形成症候群患者の貧血の治療として、臨床的意義の高い効果を示しましており、安全性については、いずれの試験でも低リスク骨髄異形成症候群患者に対して忍容性があり、十分に管理可能な安全性プロファイルであることが示されています。 

 

総称名はレブロジルとされていますが、一般名はルスパテルセプト、赤血球成熟促進剤とされています。 

遺伝子組み換えによる医薬品で、バイオ医薬品に分類されています。 

 

バイオ医薬品とは、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて製造したタンパク質を有効成分とする医薬品です。 

バイオ医薬品は、生物学的製剤、遺伝子組み換え医薬品と呼ばれることもあり、これまで治療薬がなかった疾患の治療薬の創薬に大きく貢献しています。 

 

遺伝子組み換え薬品とは?

医薬品は、化学合成を主な製造方法として生産される低分子化合物がこれまでに多用されてきました。 

バイオ医薬品は比較的新しいタイプの医薬品で、生命科学の研究手法の発展によって生み出された医薬品です。 

 

バイオ医薬品の製造は大きく分けて、培養工程と精製工程の2つがあります 

培養工程ではバイオ医薬品の生産細胞を培養することで、医薬品のベースとなるタンパク質を生産するステップです。 

この段階で、生産細胞の遺伝子に人工的な遺伝子配列を組み込むことによって目的のタンパク質を大量に産生させる状態にすることは「遺伝子組み換え」になります。 

 

この培養工程では、数キロリットル以上のタンクを使って培養しますが、この段階では目的のタンパク質以外の「不純物」も混じっています。 

この不純物を除去し、目的のタンパク質を取り出す作業が精製工程で、純度の高い目的タンパク質を得ることができます。 

この純度の高いタンパク質は「原薬」と呼ばれ、次のステップである製剤化工程でバイアルに充填されたり、包装される工程を経て製品となります。 

 

このバイオ医薬品を製造するために最新の技術が応用されており、トランスポゾンを用いた遺伝子導入技術の活用、生産細胞のセレクション方法などの新しい技術が次々と導入されています。 

さらに精製工程では、日米欧のGMPに準拠した大型培養や精製設備が導入し、これらの組み合わされた技術で安定した医薬品の供給が可能となっています。 

 

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