エクソソームの安全性と治療効果を高めるために不可欠な3つの要素

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優れたエクソソームは安全性が高く治療効果が高い

優れたエクソソームとは、端的に言えば、安全性が高く、且つ、治療効果が高いものとなります。

では、安全性を確保する為に必要な要素とは何でしょう。

以下に、3つの要因を提起します。

要因①幹細胞の安全性

1つ目は、原材料である幹細胞の安全性となります。

つまり、必然的に感染症のリスクの無い、若くて健康なドナーを選定する事となります。もちろんドナーの感染症や癌因子、ウィルスチェックを行うことは言うまでもありません。

*しかしながら、例えばヤングドナーの骨髄由来の細胞の安定供給を行う上では常に豊富なドナー選択肢を持つ必要があります。これは非常にハードルが高く維持できる組織、機関、ラボは限られます。

要因②使用する培地や添加剤およびチェック方法

2つ目は、使用する培地や添加剤、そしてそのチェック方法になります。

近年ではAOF培地を使うので、異種動物由来の成分を含みません。その意味では安全性は高いと言えます。

しかし、それだけではMSCは増殖し難い為、増殖添加剤として血小板濃縮物(PC)から作られたヒト血小板溶解液(HPL)が用いられます。ウシ胎児血清(FBS)に代わる効率的な無添加の増殖培地として有効だからです。

ここで問題となるのはせっかくAOF培地を使って外部リスク要因を排除していても、市販のヒト血小板溶解液(HPL)の安全性が開示されてないケースがある事です。

つまり、本来なら、このHPLを作る為のドナーのチェックもしなければならないのです。

そこで、ヒト血小板溶解物を 100% 安全にするためには、更に追加の手順を採用する必要があります。

たとえば、hPL のドナーを慎重に選択して、主要な感染症がないだけでなく、一般的な非病原性ウイルスも含まれていないことを確認します。次に、hPL の安全性をさらに保証する病原体削減を実行します。その後、hPL から必須ではない成長因子とタンパク質を除去します。

そこまで、自社ラボ内で行えるならばかなり安全性は高いと言えます。

要因③継代引継の制限

そして、3つ目は継代引継の制限です。

継代引継(パセージ)については、例えば骨髄由来のMSCの場合には、パセージ4以内に留める必要があります。
*適切なラボであれば発行するサフィティケートに使用パセージの記載があるはずです。

MSC自体はパセージ5.6.7といくらでも培養増殖させることは可能です。一見すると顕微鏡で目視検査する限りではうまく増殖している様に見えます。

しかし、MSCが放出するエクソソームの中身、つまりmi RNAの解析を行うと様々な危険因子を伴うモノに変化してしまっていることが確認できます。

つまり、パセージ5以下、またはパセージの開示がないエクソソームは使うべきではありません。

東ヨーロッパの国ではパセージ3迄と法律で制限されている国もある程です。
尚、この法律は罰則規定も伴う厳しいものです。

*もちろん、10年前ではエクソソーム内のmi RNA解析は行われていなかったと推測されますが、これらの国では30年以上の他家幹細胞の臨床実績があり、その膨大な臨床結果から安全性の限界値を設定したものと考えられます。

*残念ながら日本のガイドラインはまだそのレベルに達していません。

MSCの継代引継の注意点

尚、MSCの継代引継にはもう一つ注意点があります。

それは継代引継は20分割以上で行なってならないという事です。
つまり、シャーレを20枚以上に分割しないと言う事です。

この理由は、幹細胞はある定数以上のユニットで増殖をかけないとやはり、エクソソーム内のmi RNA構成に問題を生じることがわかっているからです。

最後に、2D培養と3D培養についても触れておくと、やはり、3D培養の方がin vivoの環境に近いです。

より自然な培養環境となる為、エクソソームもより早く、良いモノが獲得できます。

なので、先進的なラボは3D培養に移行しています。

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