キッズウェル・バイオ、脳性麻痺児を対象とした名古屋大学の臨床研究における第1症例登録

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脳性麻痺児を対象とした臨床研究

乳歯歯髄幹細胞を用いた脳性麻痺治療に関して、名古屋大学とキッズウェルバイオが、臨床研究計画「脳性麻痺児に対する自己乳歯歯髄幹細胞単回投与の安全性、忍容性を検討する臨床試験」というタイトルで共同研究を進めています。

その研究で、第1症例登録が10月に行われました。

 

この研究は、臨床研究等提出・公開システムに令和56月に登録された「脳性麻痺児に対する自己乳歯歯髄幹細胞単回投与の安全性、忍容性を検討する臨床試験」がベースとなっている研究です。

再生医療等の分類では第2種に分類され、再生医療等提供機関は名古屋大学医学部附属病院です。

 

脳性麻痺児の乳歯から歯髄幹細胞を回収し、その幹細胞によって脳性麻痺の治療を行おうという研究で、幹細胞は自分のものを使うため、GVDH、拒絶反応のリスクが非常に低く、安全性の面で効果が大きいと考えられています。

 

この時点での試験のフェーズは1から2となっており、目的は、

「本研究では、第一に自己SHEDの安全性の検討を目的とする。単回投与により、静脈内投与の安全性を探索的に評価する。臍帯血由来幹細胞や骨髄由来幹細胞の小児脳性麻痺患者への投与例は、海外で報告されているが、SHEDを小児へ静脈内投与した例はない。そのため、本研究では3例という少数例の試験を実施する。 第二に、今後の規模を拡大した臨床研究又は治験に向けて、SHEDの採取・加工及び複数の診療科の連携を含む試験そのものの実施可能性の検討を目的とする。」としています。

 

この研究に参加する患者の選択基準は、

1) 医療機関において脳性麻痺と診断を受けている6歳~11歳の患者

2) 医療機関において新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)と診断された患者

3) GMFCSレベル又はである患者

4) 僅かに動揺がある乳歯を有する又は過去に乳歯の脱落を経験した患者

5) C2以上の齲蝕が無い乳中切歯又は乳側切歯を有する患者

6) 代諾者の書面による同意が得られた患者

としており、この6つの条件に適合しても、以下の除外基準に該当する患者は除外されます。

1) 他の臨床試験(観察研究は除く)に参加中の患者

2) 重篤な先天的異常や染色体異常が認められている又は疑われる患者

3) 担当医師が、局所麻酔による抜歯が不可能であると判断した患者

4) 腱切り手術を一年以内に施行、あるいは予定されている患者

5) ボトックスの治療を6ヶ月以内に行った患者

6) 活動性のある重篤な感染症を有している又は疑われる患者

7) HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体、HTLV-1抗体又は梅毒血清反応のいずれかが陽性の患者

8) 糖尿病と診断されている患者

9) 重篤な過敏症又はアナフィラキシー反応の既往歴がある患者

10) その他重篤な基礎疾患を有する患者

11) 肝機能障害、腎機能障害を有する患者 12) その他、担当医師が不適当であると判断した患者

 

試験の評価ポイント

評価項目は、投与1日後、3日後、2週後、4週後の有害事象の有無、つまり安全性に着目した項目になっています。

具体的な安全性評価項目は、

1)抜歯後、投与12週後、24週後、52週後の有害事象の有無

2)抜歯後~投与52週後の各来院日の下記安全性評価項目

・全身状態

・十二誘導心電図

・酸素飽和度

・自他覚症状

・血液検査(血液学的検査、血液生化学検査、凝固検査)

・胸部X線 ・心エコー

 

そして安全性だけでなく、有効性評価も以下の項目で行われます。

MRI(画像評価)

GMFCS(運動機能評価)

GMFM-66(運動機能評価)

Modified Ashworth Scale: MAS(筋緊張評価)

・歩行解析(運動機能評価)

WISC-Ⅳ(知能検査)

 

キッズウェル・バイオとはどんな企業か?

この研究を名古屋大学と今日で行っているキッズウェル・バイオ株式会社は、東京に本社を構える日本のバイオ系の企業です。

2001年に札幌に設立されたジーンテクノサイエンスという会社は始まりで、この企業は北海道大学遺伝子病制御研究所における免疫関連タンパク質の機能研究の成果を診断薬や治療薬として開発することなどを目的として設立されました。

 

2002年には札幌市豊平区の独立行政法人産業技術総合研究所北海道センター内に研究所を新設し、本格的に稼働を始めました。

同年には、独立行政法人産業技術総合研究所から「AISTベンチャー企業(成果創出型)」として認定され、2007年から2008年にかけてバイオシミラー事業で、富士製薬、東亜製薬との協力体制を整え、2012年には東京証券取引所マザーズに株式を上場しました。

 

その後も、伊藤忠ケミカルフロンティア、三和化学研究所、持田製薬、千寿製薬などとの共同研究開発、さらにダイドードリンコの資本参加によって大きく発展しています。

2019年にはセルテクノロジーを株式交換によって完全子会社化、そして本社を東京都中央区に移転しています。

 

2020年にはノーリツ鋼機から株式譲渡によって日本再生医療を完全子会社化、そしてセルテクノロジーの全株式を譲渡して連結範囲から除外しています。

そして2021年に社名をキッズウェル・バイオ株式会社に変更して現在に至ります。

 

原薬の開発と供給、製薬企業とのアライアンスを軸としたバイオシミラー事業で事業安定化と早期収益化を図り、北海道大学創成研究機構に設置している研究所で抗体医薬を中心としたバイオ新薬事業によって成長性を確保する、という事業方針で研究開発を行っています。

 

乳歯歯髄幹細胞と脳性麻痺

乳歯歯髄幹細胞は、間葉系幹細胞に分類される幹細胞であり、中胚葉性組織(間葉)に由来する体性幹細胞です。

乳歯に付着している幹細胞で、子供の抜けた乳歯から回収することができるため、幹細胞の中でも採取が容易な幹細胞として注目されています。

 

歯科医院などで乳歯の提供を受け、その乳歯から採取するという形で確保されることが多く、この歯髄幹細胞の培養上清などが多くの目的で使われています。

 

脳性麻痺は、受精から生後4週間までの間に、脳に損傷を受けることによって運動機能に異常が生じる状態を指します。

運動障害、肢体不自由者の発症要因の約70%がこの症候群であるとされています。

ただし、遺伝子異常によるもの、生後4週以降に発症したもの、暫定的な症状、進行性の症状は含まれません。

 

治療方法としては以下のものが挙げられます。

・理学療法、作業療法、言語療法などのリハビリテーション。

・筋弛緩薬を用いた薬物療法。

・ボツリヌス療法、バクロフェン髄腔内投与。

 

さらに、診断を含む全身管理、発達のチェックが中心である小児科的治療、ギブス、装具を使う、また選択的緊張筋解離術などの手術を行う整形外科的治療、選択的せきづい後根切除術を用いる脳外科的治療なども行われます。

同時に合併症の予防なども必要ですが、ほとんどが根治がそれほど期待できない治療方法です。

 

名古屋大学とキッズウェル・バイオで行っている研究開発は、根治療法となる期待が大きく、今後の研究の進捗が注目されています。

 

第一症例登録時の最新の内容

臨床研究等提出・公開システムに登録された内容は、令和5622日に新規登録後、同年627日、令和51011日の2回の軽微変更を経て、令和51012日に第一症例登録を含めた軽微変更が行われています。

 

軽微変更は、令和56月の内容は担当者の連絡先変更のみで、令和510月の第一症例登録までは大きな変更は行われていません。

 

10月の変更では、実施状況の確認の欄に更新があり、

監査の実施予定有無が「有」とされ、第一症例の登録日を1011日とし、進捗状況が募集中となっています。

 

現段階では症例を登録し、研究知見を得ていくというステップになりますが、根治治療が難しい疾病であり、今回開発される治療方法がどこまで効果があるのかについて大きな期待を寄せられています。

 

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