ヘリオス、体性幹細胞再生医薬品HLCM051を用いたARDSを対象とする日本における治験の開始について

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ヘリオス、体性幹細胞再生医薬品HLCM051を用いたARDSを対象とする治験開始

バイオテクノロジー企業であるヘリオス社は、体性幹細胞再生医薬品HLCM051を用いて肺炎を原因疾患とした急性呼吸窮迫症候群(ARDSacute respiratory distress syndrome 

)を対象にした治療薬の開発について痴漢を開始しました。 

 

この治験は、ヘリオス社の連結子会社である株式会社プロセルキュアが、日本における臨床試験の治験計画届出書を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に以前提出していました。 

そしてこのたび、PMDAによる治験計画届出書提出後14日のレビュー期間を経て、本試験を開始する準備が完了しました。 

 

この治験薬開発販売提携の事業性は、ヘリオス社及びプロセルキュア社並びにノーベルファーマ株式会社が、日本における急性呼吸窮迫症候群を対象としたHLCM051の開発販売提携に向けた基本合意書を締結し、国内における開発・販売に関する詳細条件等について協議を進めることによって実現する予定です。 

今後、この薬が承認された後、プロセルキュア社により製造された最終製品をノーベルファーマ社に対して供給することで事業化を推し進めます。 

 

ノーベルファーマ社は製品の販売に加え、今後合意される内容の開発・承認申請支援業務を行うこと等にも合意しています。 

ヘリオス社は、16の医薬品承認を取得しているノーベルファーマ社の日本における希少疾病用医薬品の開発・販売に関する豊富な経験と能力による支援を受け、急性呼吸窮迫症候群を対象としたHLCM051の承認取得に向け準備を進めます。 

日本において急性呼吸窮迫症候群はオーファン疾患であり患者数は年間2.8万人、アメリカは約10倍の年間26.2万人、中国は20倍強の年間67万人と推定されています。 

 

この薬の開発グループは現在、海外における急性呼吸窮迫症候群の開発権を取得し、米国を含めた形での治験の実施を検討しており、治験の内容について海外KOLと協議を始めています。 

HLCM051の実用化の加速と、特に海外市場における更なる提携を通じて当社が有する資産の積極的な収益化を進める予定です。 

 

この開発の中心となっているヘリオス社は、再生医療に関する新薬の開発を行っている企業です。 

再生医療は、世界中の難治性疾患の罹患者に対する新たな治療法として期待されている 

分野であり、製品開発・実用化へ向けた取り組みが広がり、近い将来大きな市場となることが見込まれています。 

 

ヘリオスは、iPS細胞等を用いた再生医薬品開発のフロントランナーとして、実用化の可能性のあるパイプラインを複数保有するバイオテクノロジー企業であり、2011年に設立、2015年に株式上場し、再生医薬品の実用化を目指して研究開発を進めています。 

 

独自の遺伝子編集技術を持っており、この技術を用いて免疫拒絶のリスクを低減する次世代iPS細胞、ユニバーサルドナーセル(UDC:UniversalDonorCell)を作製し、がん免疫領域、眼科領域、肝疾患等において、iPS細胞技術を用いた新たな治療薬の創出のための研究開発を進めています。 

iPS細胞由来の再生医療等製品としての第一候補であるHLCN061は、固形がんに対する殺傷能力を遺伝子編集により強化した次世代のNK細胞治療薬です。 

また、体性幹細胞再生医薬品を用いて日本国内における急性呼吸窮迫症候群だけでなく、脳梗塞急性期に関する治験、そして海外展開を視野に入れた開発を実施し、実用化に向けて事業を進めています。 

 

HLCM051は、すでに2019年11月に厚生労働大臣より急性呼吸窮迫症候群を対象とした希少疾病用再生医療等製品として指定されており、この治験の開発によって実用へ大きく踏み出したとして期待されています。 

 

体性幹細胞、治験とは?

体性幹細胞は、成体組織や臓器に存在する幹細胞の一種です。 

これらの幹細胞は、特定の組織や臓器の再生や修復に関与します。 

体性幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、個々の組織や臓器内に存在するため、倫理的な問題を回避しやすく、その分野での研究が進められています。 

 

体性幹細胞は、特定の組織や臓器に特化した幹細胞であり、例えば骨髄に存在する造血幹細胞や皮膚に存在する表皮幹細胞などがあります。 

これらの幹細胞は、その存在する組織や臓器の機能の維持や修復に重要な役割を果たします。 

 

治験(ClinicalTrial)は、医薬品や医療機器などの新しい治療法や製品の安全性と有効性を評価するための研究です。 

治験は、人間の被験者を対象として行われ、従来の治療法との比較や新しい治療法の単独使用など、さまざまな方法で行われ、一般に以下の段階で実施されます。 

 

1.第Ⅰ相試験(Phase I Trial):治療法や製品の安全性や耐容性を評価する段階であり、通常、健康な成人を対象として行われ、被験者数は比較的少ないです。 

 

2.第Ⅱ相試験(Phase II Trial):治療法や製品の有効性や適切な投与量を評価する段階であり、被験者数は増え、患者を対象として行われます。 

 

3.第Ⅲ相試験(Phase III Trial):治療法や製品の安全性と有効性を確定するための大規模な試験であり、通常、数百から数千人の被験者が参加し、従来の治療法との比較が行われます。 

 

4.第Ⅳ相試験(PhaseIVTrial):治療法や製品の市販後の安全性や有効性を評価するための後方観察研究であり、実際の臨床使用に基づいて、追加の情報を収集することが目的です。 

 

治験は厳格な倫理規定に基づいて行われ、被験者の安全を最優先に考えた設計と実施が求められます。また、治験には独立した倫理委員会の承認が必要であり、結果は科学的な方法で解釈されます。 

 

急性呼吸窮迫症候群とHLCM051 

急性呼吸窮迫症候群は、肺の突然の重篤な損傷によって引き起こされる呼吸器系の疾患です。 

急性呼吸窮迫症候群は通常、重篤な疾患や外傷、感染症などの状況によって引き起こされます。 

 

急性呼吸窮迫症候群の特徴的な症状には、急激な呼吸困難、低酸素血症、肺の浸潤性影といった典型的な肺損傷の徴候が含まれます。 

急性呼吸窮迫症候群は、肺の毛細血管の透過性が亢進し、肺胞に漏れた血液や細胞が肺の機能を妨げることによって引き起こされます。 

 

急性呼吸窮迫症候群の治療は、基礎となる原因や症状の重症度に応じて異なりますが、一般的には人工的な呼吸器や酸素療法、潜在的な感染の治療などが含まれます。 

重度の急性呼吸窮迫症候群では、集中治療室での治療が必要となる場合があります。 

急性呼吸窮迫症候群は生命を脅かす可能性がある重篤な疾患であり、早期の診断と適切な治療が必要です。 

 

HLCM051は、日本国内における体性幹細胞再生医薬品の開発パイプラインです。 

ヘリオス社は2016年1月に、米国のバイオベンチャー企業Athersys,Inc.と、同社の開発する幹細胞製品MultiStem?を用いた脳梗塞急性期に対する再生医療等製品の国内での開発・販売に関する独占的なライセンス契約を締結し、本パイプラインを導入しました。 

 

そして2018年6月に同社との提携を拡大したことにより、日本における急性呼吸窮迫症候群に対する開発・販売ライセンスを取得し開発を開始、2023年10月には、その対象地域を全世界に拡大することで合意しました。 

 

急性呼吸窮迫症候群を対象としたHLCM051を用いた試験は、日本ではONE-BRIDGE試験、米国と英国ではMUST-ARDS試験という2つの試験が実施され、いずれも一貫した有望な有効性データが得られています。 

 

今後の展開について

この治験は実際の患者で行われる臨床試験であり、試験法二重盲検無作為割付プラセボ対照被験者肺炎を原因疾患とする急性呼吸窮迫症候群患者、そして新型コロナウイルス肺炎由来急性呼吸窮迫症候群患者を含む組入症例数80例(HLCM051:40例、プラセボ:40例と設定)で行われます。 

 

今後、各治験実施医療機関に設置された治験審査委員会での審議等を経て、被験者の登録が開始され、治験が本格化する予定です。 

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