自己と非自己
人間の身体には、特に細胞レベルにおいては、「自己」と「非自己」という概念があります。
人間は1つの受精卵から発生します。そこから発生した細胞を全て自己として認識します。
一方で、他の受精卵から発生した個体の細胞は非自己と認識されます。
臓器移植などで問題になる拒否反応は、この自己・非自己の認識によるものです。
体内で非自己と認識されると、非自己と認識された細胞に対して、免疫系のリンパ球が攻撃を開始します。
たとえ臓器移植などの治療であっても、それは自己ではない異物として、排除しなければならないものと認識されてしまうのです。
幹細胞においても同様で、自分以外の細胞から作られた幹細胞は非自己と認識されます。
自家移植とは?
自家移植とは、患者本人の細胞を採取して処理し、本人に戻す形態の治療法です。
自家移植のメリット:
- 自分の細胞であるため、拒絶反応のリスクは極めて低く、安全性が高い。
自家移植のデメリット:
- 患者の自家細胞が必要になってから作りはじめるオーダーメイド製品であるため治療までに時間がかかる。
- 患者の年齢、健康状態にかなり影響されてしまう。
他家移植とは?
他家移植とは、健康な細胞提供者(ドナー)から採取した細胞を大量培養させ、適切な処置を行ったものを患者に投与する方法です。
他家移植のメリット:
- 他人の細胞を利用するために作り置きが可能で、必要な時にすぐに使用できる。
他家移植のデメリット:
- ドナーが元々感染症などを持っていた場合に、患者に感染する恐れがある。
- 自分の細胞ではないため、最終的には拒絶反応により生着しない。(※今後は自家細胞による治療までの応急処置としての利用が期待される)
他家細胞の安全性
血液型に4種類の型があるように、幹細胞にもいろいろな HLA の型があります(※ HLA については他の項目で述べます)。
一般的に他家細胞は、自分のもの以外は別の異物と認識され、拒絶反応が起こってしまいます。それは HLA が、自分か他人かを選別しているためです。
そこで重要なのが間葉系幹細胞です。間葉系幹細胞は HLA が未発現なので、拒絶反応を起こしたという報告は現在ありません。そのため安全に使用できると考えられています。
また、他家移植には、特に健康な 20 代前半の幹細胞を使用するため、その特選された幹細胞は同じ年齢の物よりも最大 500% も活性率が変わると言われています。
自己・非自己を区別する HLA とは?
自家細胞は自分自身の細胞、他家細胞は他人の細胞です。
人間の身体はそれをはっきりと区別することができます。
動物の細胞表面には、MHC(免疫反応に必要な糖タンパク質)がたくさん存在しています。
これを人間の場合は、HLA(ヒト白血球抗原)と呼んでいます。
HLAは自己・非自己を認識するために複雑な構造になっているのが特徴で、この構造によって免疫反応が開始され、自己・非自己が区別できるのです。
細菌やウイルスが体内に侵入したときも、HLAを認識するシステムを使って、入ってきた物質、細胞、生物などを異物として認識し、攻撃を開始します。臓器移植での拒否反応とは、このHLAの違いから生じます。
疾患治療での自己・非自己の認識
臓器移植を伴う治療では、移植した臓器を守るために、自己・非自己認識による拒否反応を抑制する必要があります。そのため臓器移植では多くの場合、免疫抑制剤を使います。
臓器移植自体が成功しても、患者さんは一生、免疫抑制剤を飲み続けなければなりません。常に免疫システムからの攻撃の危険性にさらされ続けるからです。
HLAの型は遺伝子配列で決まります。その遺伝子配列が異なれば、異なるHLAになります。
幹細胞から作られる細胞、分化する細胞はすべてその異なる遺伝子配列を複製しながら発生していくので、幹細胞由来の臓器でも免疫抑制のなんらかの対策を取らなければなりません。
このようなHLAの不適合からの免疫反応を避けることが可能になれば、拒絶反応の確率を大きく減じることができ、再生医療がさらに発展するでしょう。
他家細胞を使った研究・治療
法律の関係上、国内では他家細胞を使った治療は確立していません。
しかし、再生医療が進んでいる海外では、他家細胞を用いた研究や治療が法律で認められ、既に治療に用いられている国もあります。
一見すると他家細胞ではHLAが適合せず拒否反応が起きそうですが、実際にはそのようなことは起きないように技術的に治療が確立されています。
現状、国内で最も実用可能性が高いのは、さまざまなHLAタイプのiPS細胞を準備する幹細胞バンクの設立ではないかと考えられています。
当機構の役割とは?
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当機構の詳しい役割や、幹細胞に関する最重要事項はこちらの記事で解説しています。
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