再生医療開発などに賃貸
ライフサイエンスの研究拠点「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」を運営するアイパークインスティチュート(神奈川県藤沢市)は、細胞医薬品や再生医療などの開発に活用できる細胞培養加工施設を設置すると発表しました。
この施設は賃貸モデルを採用し、入居者が比較的低コストで利用できるようにすることで、再生医療や細胞医薬品分野の研究・開発を支援することを目的としています。
「湘南アイパーク」(正式名称:湘南ヘルスイノベーションパーク)は、武田薬品工業の湘南研究所を外部開放する形で2018年に誕生した、製薬企業発の日本初のサイエンスパークです。現在では、製薬企業、スタートアップ、行政、大学などが集う約190社・2,500名以上のライフサイエンスエコシステムを形成しています。
神奈川県藤沢市に位置し、敷地面積は約22万㎡、建物は地上10階建て、延床面積は約30万㎡規模となっています。研究・開発機能とオフィス機能を併せ持つ大規模な研究拠点として整備されています。
施設内には、ラボ付きオフィスとして1,000㎡規模の研究室をはじめ、大小さまざまな研究室やオフィスが100区画以上用意されています。また、会議室、食堂、リフレッシュエリアなどの共用スペースも集約されています。
細胞培養を行うための安全対策や環境対策も施されており、適切な排気・排水設備、廃棄物処理体制など、研究活動を支えるインフラが整備されています。
活用面では、研究・共創支援として共創プログラムやマッチング、知財支援、AI/DXコンシェルジュ、薬事勉強会などが想定されています。加えて、ビジネス面ではバックオフィス支援、ベンチャーメンタリング、インキュベーションプログラムなどの支援も期待されています。
また国際化の面でも、韓国バイオ企業の誘致実績などを踏まえ、アジアを含むグローバル展開の拠点となることが期待されています。
ライフサイエンス分野に広がる賃貸型研究施設
近年、日本国内ではライフサイエンス分野の研究・開発(R&D)を支援する賃貸型の研究施設(インキュベーション施設、シェアラボなど)の整備が加速しています。湘南アイパーク以外にも、製薬、バイオ、医療機器分野の企業やスタートアップ、大学発ベンチャーが入居可能な施設が全国各地で展開されています。
以下に、主な施設の例と特徴を紹介します。
LINK-J(ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン)
LINK-Jは、東京・日本橋にある日本橋ライフサイエンスビル群を拠点とする施設で、三井不動産によって運営されています。日本橋ライフサイエンスビルやライフサイエンスハブなど、複数のビルで構成される都市型の賃貸研究施設です。
スタートアップ、アカデミア、大企業の共存・連携を目的としており、LINK-Jが中心となってネットワーキングイベントやセミナーも開催されています。東京大学、慶應義塾大学、京都大学などのアカデミア発ベンチャーの集積を狙い、シェアラボや共用設備(バイオセーフティキャビネット、冷凍庫、細胞培養室など)も整備されています。
神戸医療産業都市
神戸医療産業都市は、兵庫県神戸市のポートアイランドに位置し、神戸市および公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(FBRI)によって運営されています。
iPS細胞研究機関や理化学研究所などが集積する地域特性を活かし、約370以上の医療系企業、研究機関、大学が集まる国内最大級の医療クラスターとなっています。
インキュベーション施設「IMDA」「KCMI」などが整備されており、賃貸ラボ、共用機器、研究支援サービスに加え、BSL-2対応などの高度なバイオセーフティ環境を備えている点が特徴です。
大阪バイオ・ヘッドクォーター(うめきた2期地区)
大阪バイオ・ヘッドクォーターは、大阪府、大阪市、民間ディベロッパーなどが連携して運営する都市型の研究・実証拠点です。うめきた2期地区を中心に整備が進められています。
2024年には、BTL(旧名称:大阪バイオファウンダリ)が開設され、バイオものづくり(合成生物学など)や創薬DXを支援するための小型発酵装置、自動化装置を備えたシェアラボが整備されました。スタートアップ支援や規制相談機能も併設されています。
川崎キングスカイフロント
川崎キングスカイフロントは、神奈川県川崎市殿町地区で川崎市と民間企業によって運営されているR&D拠点です。ライフサイエンスと環境・エネルギー分野を中心に研究機関が集積しています。
国立医薬品食品衛生研究所、理化学研究所、再生医療関連施設などが立地し、「ライフイノベーションセンター(LIC)」などの施設では、シェアラボ、実験室、製造対応クリーンルームなど多様な設備が用意されています。
つくば研究学園都市のベンチャーラボ
つくば研究学園都市では、産業技術総合研究所、つくば市、民間支援組織などが連携し、複数のベンチャー向けインキュベーション施設を運営しています。
「つくば研究支援センター」などでは、バイオ系スタートアップ向けの実験室を賃貸しており、研究機関との連携が容易である点や、比較的安価な賃料で長期利用が可能である点が特徴です。
地方経済の起爆剤として広がる賃貸型研究施設
湘南の施設をはじめ、ここまで紹介した施設は、比較的都市圏内、または大きな都市圏に近い地域に設置されたものが中心です。一方で、地方自治体が地域産業の活性化を目的として、賃貸型研究施設を整備する動きも広がっています。
これらの施設の一部は、地場産業の育成や新産業創出につながる成果を上げつつあります。
秋田県大館市の「大館北インキュベーション施設(大館北ICラボ)」は、市が運営する賃貸型ラボ・事務所を備えた産業振興施設で、創薬、バイオ、食品機能性分野の企業誘致を進めています。東北大学や弘前大学との連携実績もあります。
島根県出雲市の島根テクノポリスインキュベーションセンター(STIC)は、島根県および公益財団法人しまね産業振興財団が運営し、食品・健康素材分野などを中心に研究開発支援を行っています。
熊本県合志市の熊本テクノ・リサーチパーク(TRP)は、医療機器、半導体、バイオ農業技術分野の企業が集積する研究開発拠点で、九州大学や熊本大学との共同研究も可能です。
岩手県盛岡市のHIH盛岡(ヘルスイノベーションヒルズ盛岡)は、賃貸研究室や共有機器室を備え、ハード(ラボ設備)とソフト(研究支援・人材ネットワーク)が一体化した施設として、地元企業や大学発ベンチャーの実用化を支援しています。
湘南アイパークをはじめとするこれらの施設は、新産業の創出、若者のUターン促進、研究機関誘致を目的として、創薬、再生医療、医療機器、食品機能性、アグリバイオ分野などを対象に拡大しています。賃貸ラボとオフィスを組み合わせた形態が多く、家賃補助、設備貸与、試験支援、大学とのマッチング制度など、さまざまな支援策が用意されるケースもあります。


