Gameto社、リプロセル社|臨床用 iPS細胞を用いた卵子体外成熟技術「Fertilo」において FDA IND クリアランスを取得

目次

StemRNA™ Clinical iPSCの開発に大きな進展

アメリカ、ニューヨーク州に本拠を置くバイオテクノロジー企業Gameto社は、株式会社リプロセルが提供する臨床用iPS細胞「StemRNA Clinical iPSC シードクローン」を用いた卵子体外成熟技術「Fertilo」に関して、米国食品医薬品局(FDA)からIND(Investigational New Drug Application:治験届出)クリアランスを取得しました。

この動きは、再生医療と不妊治療の融合による新しい治療法への道を開くものであり、国際的にも非常に注目されています。

・Gameto社とリプロセルについて

Gameto社と株式会社リプロセルは、女性の生殖医療と再生医療の分野で革新的な技術を展開する企業です。

Gameto社は女性の生殖健康を再定義し、ライフステージ全体にわたる治療ソリューションを開発することを理念としています。

株式会社リプロセルは日本の企業で、iPS細胞関連の研究試薬や培養基材の製造・販売、創薬支援サービスの提供(iPS細胞の樹立、CROサービスなど)、生体試料の提供や遺伝子解析サービスの提供を主に行っています。

Gameto社とリプロセルは、女性の生殖医療分野での革新的な治療法の開発において協力関係を築いています。

特に、リプロセルが提供する「StemRNA Clinical iPSC シードクローン」を用いたGameto社の「Fertilo」技術は、体外で卵子を成熟させる新しいアプローチとして注目されています。

StemRNA Clinical iPSC シードクローンとは?

「StemRNA Clinical iPSC シードクローン」は、株式会社リプロセルが開発・提供する臨床応用向けの高品質なヒトiPS細胞株(クローン)です。

この技術は、非ウイルス性・非統合型のmRNAリプログラミング法に基づいており、GMP(Good Manufacturing Practice)準拠の環境下で製造されることから、再生医療や細胞医薬品の開発に極めて適しています。

リプロセルが独自に開発した非ウイルス性・エピソーマル(染色体外)mRNAベースの初期化法でいくつかの特徴があります。

まず、従来のレトロウイルスやレンチウイルスによるiPS細胞作製とは異なり、ゲノムに外来DNAが統合されることがありません。

そして一過性mRNAによるリプログラミングとして、OCT4, SOX2, KLF4, c-MYCなどの初期化因子をmRNAとして一時的に導入し、自己増殖能と多能性を獲得させています。

さらに高い初期化効率と安全性を確保しており、これは分裂停止や分化異常を起こしにくく、臨床応用に適したクリーンな細胞株が得られることを可能としています。

この方式は、特にiPS細胞を臨床応用する場合に求められる「安全性・トレーサビリティ・再現性」の面で優れており、世界中の医薬品開発企業・研究機関に提供されています。

この技術の応用例は以下のようになります。

まず再生医療では、iPS細胞から分化誘導された神経細胞、心筋細胞、膵β細胞などを臨床移植用細胞として製造され、パーキンソン病、加齢黄斑変性症、糖尿病などに用いられます。

Gameto社との連携で行われている細胞治療は、StemRNA Clinical iPSCシードクローンを使い、「卵巣支持細胞(OSCs)」へ分化誘導し、卵子体外成熟(Fertilo)技術へ応用しています。

さらに高品質なiPS細胞をベースに、患者由来の疾患モデル細胞やオルガノイドを作製し、薬効評価や毒性試験に使用し、アルツハイマー病モデル、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)などの治療に用いられます。

StemRNA Clinical iPSC シードクローンは、非統合型・mRNAベースの安全なiPS細胞初期化技術と、臨床用途を前提に製造・品質保証された細胞株を融合したものであり、細胞医療・再生医療・創薬の最前線で活用される「次世代型iPS細胞」です。

Fertiloとは?

Fertilo(フェルティロ)は、Gameto社が開発した卵子体外成熟(In Vitro Maturation, IVM)技術で、特に不妊治療における新たなアプローチとして注目されています。

この技術は、未熟な卵子をホルモン刺激を最小限に抑えた方法で体外で成熟させることを可能にし、従来の体外受精(IVF)の手法に代わる、より安全かつ効率的な治療法を目指しています。

通常の体外受精(IVF)では、卵巣刺激ホルモン(FSHやhCG)を大量に投与して複数の成熟卵子を採取します。

しかしこの方法は、副作用(卵巣過剰刺激症候群など)のリスクや高額な治療費、患者への身体的負担が問題とされてきました。

Fertiloでは、このプロセスを、卵巣刺激を最小限または不要に、そして未成熟卵子を回収して体外で成熟させる、成熟卵子を体外受精に使用という3つのポイントによって、薬剤使用量と治療コストの削減、身体的負担の軽減が可能になります。

Fertiloの中核は、iPS細胞由来の卵巣支持細胞(OSCs)を用いて、卵子が成熟する自然な環境を模倣する点にあります。

卵巣支持細胞の役割は、卵子の発育・成熟を促すホルモンや因子を分泌、卵胞内微小環境を再現、エピジェネティックな影響を最適化です。

これらの細胞は、リプロセルの「StemRNA Clinical iPSC シードクローン」から分化誘導されており、非ウイルス・非統合型のRNAリプログラミング法によって作製されるため、臨床応用に適した高い安全性と再現性を有します。

またFertiloでは、独自に設計された培養基と培養条件が整備されており、低酸素濃度(hypoxia)環境下での培養:卵胞内の生理的環境を模倣、ホルモンと成長因子のカスタマイズ添加:FSH、EGF、IGF1など、、リアルタイムでの成熟評価技術:成熟度(MIIステージ)を効率的に評価を要素としています。

このように、生理的な成熟環境を忠実に再現したin vitro系で、卵子の質と発育能力の向上を目指しています。

Fetioは、多嚢胞性卵巣症候群患者に用いられることが考えられています。

多嚢胞性卵巣症候群患者は、従来の卵巣刺激に対して過敏に反応し、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高いため、IVMは非常に有用です。

これはFertiloはこのニーズに応える理想的な選択肢とされています。

これらの技術は社会的・倫理的に大きな意義を持ちます。

身体的・経済的負担の軽減:特に女性への医療的・社会的負担を軽減できる点が大きな利点であり、治療アクセシビリティの向上:発展途上国や治療費を抑えたい患者にとっても、受けやすい選択肢となります。

さらに倫理的受容性の高さ:ゲノム改変や動物成分の使用が最小限に抑えられており、臨床・倫理両面で承認を得やすい構造になっています。

・開発ステータスと今後の展開

今回のFDA INDクリアランス取得(2025年)により、Fertiloは正式に臨床試験(フェーズI/II)を開始します。

当然、第III相臨床試験(商用化に向けた本格試験)も視野に入れており、早ければ2026年〜2027年にも上市が期待されます。

Gameto社はFertiloをさらに発展させ、「完全人工卵巣機能」の実現や、他の卵巣機能障害の治療にも応用する計画を持っています。

FDA INDクリアランスの意義

FDAからのINDクリアランス取得は、Fertiloが米国内で臨床試験に進むために必要な重要ステップであり、規制当局がその安全性および科学的根拠を認めたことを意味しています。

この認可により、Gameto社はFertiloの第III相臨床試験を開始し、将来的にはFDA承認に基づいた商用化を目指すことができるようになります。

特に注目すべきは、iPS細胞由来の細胞を用いた治療がFDAの正式な臨床試験プロセスに進むこと自体が非常に画期的であり、今後の再生医療・細胞治療分野において大きな前例となる点です。

不妊治療において、卵子の質と成熟度は成功率を大きく左右する要因です。

Fertiloは、既存のホルモン療法に代わる選択肢として、より安全で効率的な体外受精(IVF)へのアプローチを提供する可能性があります。

また、Fertiloによる卵子成熟は、女性のライフスタイルに対する柔軟性を高める可能性がある。高齢出産や治療に伴う副作用への懸念を軽減し、妊孕性保持(fertility preservation)にも応用可能と考えられています。

さらに、Gameto社はすでにFertiloを用いた世界初のヒト妊娠および出産例を報告しており、今後の商用化に向けた期待は一層高まっています。

今回のINDクリアランス取得は、リプロセルにとっても大きなマイルストーンであり、自社のiPS細胞技術が米国市場での臨床展開に進むことで、グローバルな細胞治療市場における競争力を強化する足がかりとなります。

Gameto社は、今後Fertiloの臨床試験を進めつつ、他の婦人科系疾患やホルモン関連疾患への応用を視野に入れた研究開発も進めており、。両社の連携は、再生医療分野の革新を牽引する重要なパートナーシップといえます。

リプロセルの代表取締役社長である横山周史氏は、Gameto社が「Fertilo」においてFDA INDクリアランスを取得したことを受け、「この成果は、当社の『StemRNA Clinical iPSC シードクローン』が各国の厳格な規制基準に適合する高品質な細胞製品であることの証明であり、再生医療分野における革新的な治療法の実現に向けた大きな一歩である」と述べています。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた不妊治療の研究は近年大きく進展していますが、臨床応用にはまだ至っていません。

総じて、iPS細胞を用いた不妊治療の研究は着実に進んでいますが、実際の臨床応用には技術的な課題や倫理的な問題が山積しています。

今後、これらの課題を克服し、安全で効果的な治療法を確立するためには、さらなる研究と社会的合意が不可欠です。

StemRNA Clinical iPSC シードクローンは、再生医療、不妊治療、創薬の各分野で重要な役割を果たす可能性が高い。今後の臨床試験の進展とともに、医療分野におけるiPS細胞の実用化を加速させる鍵となるでしょう。

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