日本の細胞・遺伝子治療市場分析 2025-2033年、規模、シェア、成長、主要企業、レポート

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今後の日本の細胞・遺伝子治療市場をIMARCグループが分析

IMARCグループ(International Market Analysis Research and Consulting Group) は、国際的な市場調査およびコンサルティングを専門とする企業です。

 

主な業務内容としては、まず市場調査レポートの作成が挙げられます。

これは特定の産業や地域に関する市場データ、成長予測、トレンドの分析を提供し、さまざまな業界(医療、エネルギー、IT、農業など)を対象とするものです。

 

そしてコンサルティングサービスとして、経営戦略や市場参入戦略の策定を支援、クライアント企業のニーズに合わせたカスタマイズ調査を行っています。

 

最後に業界分析が挙げられます。

世界的または地域別の産業分析、競合分析を実施し、新興技術、消費者行動の変化、規制の影響に関する洞察を提供しています。

 

今回報告されたレポートは、IMARCグループが、日本の細胞・遺伝子治療の市場について分析したものです。

この分析の中にはiPS細胞、ES細胞を含んだ再生医療についての分析も含まれています。

 

今後の日本の細胞・遺伝子治療市場について

まず、日本の細胞・遺伝子治療の市場規模は、2024年に7億2,700万米ドルに達しました。

今後、2025 年から2033年の間に9.6%の成長率(CAGR)を示し、2033年までに市場が20億1,600万米ドルに達するとレポートは予想しています。

 

成長要因としては、まず慢性疾患の増加が挙げられます。

がんや心血管疾患、遺伝性疾患などの慢性疾患の有病率が上昇しており、これらの治療法への需要が高まっています。

 

そして日本の高齢化が進む中、加齢性疾患の発生率も増加しており、細胞・遺伝子治療の必要性が高まっています。

 

これらに伴って、遺伝子編集や幹細胞研究などのバイオテクノロジー分野での進展が、治療の可能性を広げ、市場の拡大を後押ししています。

 

一方で、成長のための課題もいくつか挙げられていますが、新しい治療法の開発には高額な費用がかかり、臨床試験の失敗も市場成長の妨げとなる可能性があり、これらの課題に対する準備が十分でなかった場合は予想と異なる成長率となります。

 

市場機会においては、戦略的提携の増加がカギを握るとされています。

製薬企業やバイオテクノロジー企業間の協力が進み、研究開発や市場参入の加速が期待されています。

 

今後のiPS細胞の世界市場

日本におけるiPS細胞市場の動向を見る前に、世界市場の予想を見てみましょう。

iPS細胞の世界市場は、今後も顕著な成長が予測されています。

SDKI Analyticsの分析によれば、2023年の市場規模は約20億米ドルであり、2036年までに約70億米ドルに達するとされています。

 

日本に限らず、世界各国で高齢化社会の進展が見られます。

それに伴い、再生医療や慢性疾患管理の需要が増加しています。

特に、アジア太平洋地域では高齢者人口の増加が顕著であり、iPS細胞市場の拡大に寄与しています。

 

また、技術革新と研究開発の進展: iPS細胞の生成・分化技術の進歩により、再生医療や創薬分野での応用が広がっています。

さらに各国政府や民間企業からの投資も増加しており、市場成長を後押ししています。

 

世界的なレベルで予想すると、再生医療分野、特にiPS細胞を用いた再生医療の市場は、2025年に115億円に達するとの予測があります。

その中でも神経修復分野は、2022年から2030年にかけて成長が見込まれています。

 

地域別動向では、北米市場はシェアにおいて世界をリードしており、治療への意識の高さや整備されたインフラが成長を支えています。

日本を含むアジア太平洋地域は、高齢化と神経障害の有病率増加により、予測期間中に最大の成長が期待されています。

総じて、iPS細胞市場は今後も高齢化社会の進展や技術革新により、持続的な成長が見込まれます。

 

日本におけるiPS細胞市場は今後どうなるか?

日本におけるiPS細胞市場は、今後も大きな成長が予測されています。

 

グローバルでは、再生医療等製品の市場規模が2020年の約6.9兆円から、2035年には約12兆円に達すると予測されており、日本市場もこの成長トレンドに沿って拡大が期待されます。

 

高齢化社会、それに伴う疾患の増加が再生医療の需要を高めると共に、iPS細胞の研究は日本が先導しており、特に京都大学iPS細胞研究所(CiRA)などの機関が中心となって、再生医療の実用化に向けた取り組みが進行中です。

 

再生医療の産業化に向けて、製品の品質管理、コスト削減、量産化技術の確立などが課題として挙げられており、 規制と承認プロセスの点でも課題を抱えています。

技術面の研究は日本の多くの研究機関が革新的な技術創出のために研究活動を続けており、実際に成果が出つつあります。

 

また、新しい治療法の安全性と有効性を確保するための規制整備が進められており、迅速かつ適切な承認プロセスの確立が求められています。

 

総じて、日本におけるiPS細胞市場は、今後も高齢化社会の進展や技術革新により、持続的な成長が期待されています。

しかし、産業化に向けた課題の解決と適切な規制の整備が、今後の市場拡大の鍵となるでしょう。

 

日本再生医療の分野で先進的な研究や製品開発を進めている企業がいくつかあります。

 

富士フイルムホールディングス株式会社:再生医療分野に注力し、iPS細胞や幹細胞を活用した治療法の開発に取り組んでいます。

また、子会社である「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)」を通じて、細胞培養技術を利用した再生医療製品を提供。

 

タカラバイオ株式会社:遺伝子および細胞医療製品において世界的なリーダー企業であり、細胞医療の生産受託サービスを展開し、iPS細胞や幹細胞を利用した再生医療の臨床試験に対応しています。

遺伝子改変iPS細胞を用いた創薬支援事業を展開し、細胞製品や試薬の製造技術を持つ企業です。

 

日本新薬株式会社:再生医療製品を中心としたヘルスケアソリューションを持ち、幹細胞を活用した治療法に注力し、研究開発を行っています。

 

住友ファーマ株式会社:医薬品や再生医療技術の研究開発を行っており、独自の細胞加工技術を持っています。

また中核企業「HEALIOS(ヘリオス)」との提携による再生医療事業も拡大中です。

 

株式会社メディパルホールディングス:再生医療製品の流通・物流支援に注力しており、医療機関と製薬会社を結ぶネットワークを活かした市場展開を行っています。

 

キョーリン製薬ホールディングス株式会社:気道・循環器疾患を中心とした治療薬開発のほか、細胞治療にも取り組んでいます。

 

さらに以下のスタートアップや研究機関も再生医療をけん引しています。

CiRA(京都大学iPS細胞研究所): 世界的なiPS細胞研究の拠点です。

リプロセル: iPS細胞を用いた再生医療や創薬の支援を行っています。

HEALIOS(ヘリオス): 住友ファーマと連携しており、目と脳の治療に特化した細胞治療を開発しています。

 

技術革新や特定分野に特化したユニークなアプローチをしている新興企業も日本には存在しており、急成長しています。

 

リプロセル株式会社(ReproCELL, Inc.):iPS細胞技術に基づく製品とサービスを提供する日本のバイオテク企業で、医薬品開発支援や再生医療分野での展開を強化中です。

 

メソジェン株式会社(Meiji Seika Pharmaと共同設立): 間葉系幹細胞(MSC)を基盤とした再生医療製品の研究開発を行っており、間葉系幹細胞を用いた治療法(心血管疾患や骨再生など)を開発しています。

 

オーガンテクス株式会社(Organ Technologies):再生医療技術を用いて、組織や器官の再生を目指す企業ですが、特に毛髪再生医療で注目されています。

 

サイレージス株式会社(Cellinage):脂肪組織から採取した幹細胞を活用する先端企業であり、低侵襲かつ効果的な幹細胞治療の提供を目指しています。

 

ローコニック株式会社(Rohto Pharmaceuticalのグループ):細胞医療に特化した企業ですが、分化誘導技術を活かし、独自の治療法を開発しています。

 

StemRIM株式会社 :幹細胞治療薬の研究開発を行う新興企業で、大阪大学発のスピンアウト企業です。

 

CYBERDYNE株式会社:ロボット技術と再生医療の融合を追求するユニークな企業です。

 

これらの新興企業は、それぞれ独自の技術や専門性を持ち、市場の新しい可能性を切り開いています。

幹細胞技術の進展により、再生医療だけでなく、創薬支援や美容分野など幅広い市場での成長が期待されています。

 

今後、日本の産業構造において再生医療は、医療・バイオ分野の中核として位置づけられるとともに、他分野とも連携しながら大きな影響を与えると予想されます。この産業は、高齢化社会の進展、技術革新、規制緩和、グローバル市場の拡大という複数の要因により成長すると見られます。

 

iPS細胞だけでなく、再生医療分野全体の市場規模は、政府の支援や研究開発の進展により急速に成長中で、世界市場レベルは、内閣府資料によると2020年に約6.9兆円から2035年には約12兆円になると予測されています。

 

日本の産業構造は再生医療を中心に、医療分野だけでなく、バイオ、IT、環境、エネルギー分野と横断的に変化すると予想されます。

再生医療の成長により、日本は「高齢化への対応」「技術力の強化」「グローバル展開」の3つを柱に、新たな産業エコシステムを構築する可能性があります。

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