アルツハイマー(認知症)・脳梗塞・関節リウマチ・アレルギーの幹細胞治療研究について解説

目次

幹細胞培養上清とは?

ヒトから採取された幹細胞を培養する際に使用した培養液のみを抽出し、遠心分離させて滅菌処理等を施した液体(上澄み溶液)のことです。

幹細胞培養上清液には、幹細胞から分泌されたさまざまなサイトカインや免疫調整因子などの成分が豊富に含まれています。そのため、老化などにより衰えた細胞の回復を後押しして、健康と美容に対する効果が期待できます。

そこでこの項目では、幹細胞治療が期待されている疾患と、その研究について学んでいきましょう。

アルツハイマー(認知症)の治療

アルツハイマーとは?

アルツハイマー=認知症と誤解されることがありますが、「認知症」は病名ではありません。認識したり、記憶したり、判断したりする力が障害を受け、社会生活に支障をきたす状態のことを言います。

認知症を引き起こす病気の1つとして、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)があります。日本では、認知症をきたす原因のうち、もっとも割合の多い疾患で、6〜7割以上がアルツハイマー病です。(他の原因疾患には、脳血管性認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります)

患者のほとんどは 65 歳以上ですが、若年性アルツハイマー病も存在します。

アルツハイマー病では、進行すると生活に支障が生じ、重症度が増すと食事や意思疎通などにも障害が及び、寝たきりになるケースが多く見られます。

アルツハイマー病が原因の認知症は、急に悪化するのではなく、徐々に進行することが特徴です。この進行の途中で、暴力的な行為、発言、徘徊行動、被害妄想などが見られることが多く、介護がたいへんになるケースが多いです。

進行を抑制する治療法、回復する治療法が、現在は存在しません。

アルツハイマーに対する幹細胞治療の研究

幹細胞による神経細胞の再生ができるようになると、アルツハイマー病の回復が夢ではないかもしれません。

しかし、現在では、幹細胞がアルツハイマー病に「効果がある」、「回復させることができる」、「抑制効果がある」という科学的な証拠は得られていません。

インターネット上にはアルツハイマー病の治療に幹細胞を使うという宣伝が見受けられますが、これは科学的な証拠はないが、「幹細胞というものの特性を考えると効果があるだろう」というレベルです。

現在進んでいる研究としては、骨髄由来の幹細胞から脳の免疫担当細胞であるミクログリア様細胞を作製し、脳内に移植するというものです。

認知記憶障害が改善することがアルツハイマー病モデルマウスで証明されています。

脳のメカニズムは、健康な人の脳にでも、まだまだわかっていない部分が多いのです。

したがって脳が関与する疾患については、「やってみたら効果があった」というものが多く、「作用機序、作用メカニズムは不明であっても効果があれば OK」という段階のものが多いのが実情です。基礎研究は徐々に進んでおり、それほど遠くない時期に脳疾患への幹細胞治療の治験が始まることが予想されています。

脳梗塞の治療

脳梗塞とは?

脳に栄養、酸素を運搬する動脈が、何らかの原因で詰まったり、血管が狭くなったりすることで十分な血液が流れないため、脳虚血という状態になって脳組織を構成する脳細胞がダメージを受けることです。脳細胞のダメージは、細胞傷害だけでなく、細胞が壊死することもあります。

症状は、ゆっくり進むものから急性のものまで幅が広く、重症度も人それぞれです。例えば身体の麻痺、意識障害、言語障害などの症状が出る場合は脳卒中と呼ばれることもあります。ゆっくり進む場合は、脳血管性の認知症を発症するケースもあります。

日本人の死亡原因に多い疾患で、生命が助かった場合でも後遺症が残り、介護が必要になる場合が多く見られます。

また、日本の寝たきりになっている人の約 30% が脳梗塞によるもの、とされています。今後の高齢化社会を予想すると、非常に大きな問題となる疾患ですが、脳梗塞からの機能回復は、リハビリテーションに頼っているのが現状です。

脳神経再生の治療

幹細胞によって、脳梗塞で壊死した脳細胞を補充すること、つまり「脳梗塞の後遺症からの回復、またはそれ以上障害を悪化させないための治療」に大きな期待が寄せられています。幹細胞再生治療によって身体機能、感覚などの障害を少しでも軽減する可能性に光明が見えてきたというところです。

現時点の日本においては、脳神経再生に幹細胞を使った治療は臨床治験段階にあります。

脳梗塞によってダメージを受けた脳細胞は、再生させようとしても酸素・栄養が十分に供給できない状況になっているためにうまくいきません。患部周辺の神経幹細胞が酸素不足、栄養不足で壊死してしまっているため、脳細胞の基になる細胞自体が存在しなくなってしまうのです。

そのため、幹細胞を注入することによって再生させようとする方法が試みられました。

患者の骨髄から採取した造血幹細胞を培養によって増殖させ、大量の幹細胞を静脈への点滴によって体に戻す方法が試みられています。

また、健常者の造血幹細胞を遺伝子組み換えによって培養し、脳内に直接注射する方法も試されました。

しかしながら、慢性期の脳梗塞については期待する効果が得られなかったことが発表されています。

健康な脳においてもすべてが解明されていない、未だ研究途上の現状では、幹細胞治療を効果的に行う研究もなかなかスピードアップができません。アルツハイマーの治療研究と同様、「とりあえずやってみる」という段階にとどまっています。

とは言え、進みは遅くとも確実に進歩はしており、一般の治療に用いられる日が来るのはそう遠くないと考えられています。

関節リウマチの治療

関節リウマチとは?

女性に比較的多く見られる疾患で、自分自身の免疫が手足の関節を侵すことにより、関節の痛み、関節の変形が生じる疾患です。

関節リウマチ発症のメカニズムの詳細は現時点で不明な部分が多いのですが、生活習慣、先天的な遺伝要因、感染症による免疫系の作用などが原因では?と言われています。

症状は、手のこわばり(朝の起床時に、手を握ることが困難になるなど)が見られ、時には1時間以上もの間、朝の活動に支障が出るほどこわばることがあります。

そして関節痛が発症します。この関節痛は、手足の指という末端から、手首、肘、肩へと拡がる傾向があります。

同時に、全身の倦怠感を感じるようになります。

さらに症状が進み関節炎が進行すると、関節の比較的柔らかい構造が破壊され、骨と骨が直接に接する状態になり、関節を動かすことができなくなります。

関節破壊は進行性で、破壊された場合は治療を行っても、元の関節の状態に戻すことは難しいとされています。

そのため、幹細胞を用いた治療に期待されることは、関節機能の再生とそれに必要な細胞の再生です。

関節リウマチの幹細胞治療

ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、関節を構成する骨芽細胞、軟骨細胞への分化が可能です。すでにいくつかのクリニックでは、幹細胞治療を用いた関節リウマチの治療が行われていますが、運動機能がどれだけ回復されるのか、再発のリスクはどうなのかはまだまだ未知数です。

幹細胞の分化によって関節を構成する細胞が、どの程度まで健康な状態に近づくかなど、今後の臨床治験の結果次第で実用化は比較的早い幹細胞治療方法と言えます。

アレルギーの治療

アレルギーの原因は何?

アレルギーの原因となる物質、特に環境由来の抗原をアレルゲンと言います。

例えば花粉、小麦、蕎麦、ダニ、ハウスダストなどさまざまなものがアレルゲンとなります。

アレルギーと幹細胞治療

こういったアレルギーに対して「幹細胞がどう役立つの?」と思うかもしれませんが、幹細胞が持つ性質は有効であるとされています。

注目されているのは、幹細胞の分化能ではなく、免疫調節機能です。つまり、アレルギーに有効なのは、幹細胞が分泌する物質である可能性が高いと考えられています。

サイトカイン療法など、幹細胞から分泌されるサイトカインを使って治療する医療機関では、ホームページ上で対象の疾患に花粉症などのアレルギー疾患を掲載しているところもあります。

しかし、実際は明確に効果があるというエビデンスは得られていない、という状況です。「もしかしたら効果があるかもしれないが、どういったメカニズムで効果が出ているのかはよくわからない」という段階です。

アレルギーに関しても、今後幹細胞治療がさらに研究が進むことに期待されています。

当機構の役割とは?

当機構は、『様々な病気やケガ、体の悩みなどを抱えているにも関わらず、これまでの医療では解決できなくて苦しんでいる』という方々に、幹細胞の力によってその問題を解消するだけでなく、より豊かな人生を歩んでほしいという願いを持っております。

幹細胞は人類の未来への大きな希望ですので、今後一人でも多くの人に幹細胞の情報を知っていただき、活用していただきたいと思っています。

当機構は、そのために当サイトを通して、できる限り多くの情報を提供していきます。

また、今、目の前の問題を抱えている方からご相談をいただいた際には、少しでもお力になれるよう、個別でその方に応じた情報を提供をさせていただきます。

当機構の詳しい役割や、幹細胞に関する最重要事項はこちらの記事で解説しています。

是非一度ごらんください。

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