株式会社StateArtのCEOである石川貴大さんにお話を伺いました。株式会社StateArtは、全国各地にラボを有する新しい治療法や医療技術の研究および提供を行っている企業です。
動画で見たい方は、以下の動画をクリックしてください。
施設名 | 株式会社 StateArt |
CEO | 石川貴大 |
事業内容 | 医薬品、医薬部外品、研究開発試薬の研究・開発 他 |
電話番号 | 03-5859-5193 |
所在地 | 〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町二丁目9番12号 StateArtビル |
地図 |
StateArtの事業内容
各大学と連携して、将来的な医薬品の基礎研究などの事業を展開しています。
当社は、いくつかのラボを所有しており、CPC(細胞バイオセンター)や、それに準ずる施設もあります。
特にがんや難病の治療をしている先生のサポートをしていて、その中で真っ先に出てくる分野が再生医療です。
再生医療では、幹細胞を導入する治療がメインになります。
しかし実際は、再生医療法があるために、幹細胞治療は比較的ハードルが高く、コストもかかります。
幹細胞そのものを投与することができれば、高い効果が期待でき、さまざまな疾病・疾患にも応用できると思うのですが、なかなか難しいというのが現実です。
ただ最近の研究では、幹細胞の上清液を用いる頻度を上げることで、幹細胞治療そのものに近い結果を生むという報告もいくつかあります。
幹細胞で治療をやっている先生もいるし、上清液を利用して治療を行う先生もいますので、それぞれに対応して提供を行っています。
上清液の問題点と対策
上清液で重要な部分は、やはりサイトカインやグロースファクターなどの品質の問題です。
前提として、どんな成分がどれくらい入っているのかということを把握していかなければなりません。
例えば、由来が脂肪なのか歯髄なのか骨髄なのかによって、サイトカインやグロースファクターの種類は違います。
そういった部分をしっかりと分析しないまま、やみくもに投与をしても成果は上がってきません。
当社の分析センターでは、それぞれの上清液に対して、どんなサイトカインがあるのかや、グロースファクターにどれくらいの濃度があるのかというチェックをできる限り精密に行っています。
そして、その分析データも先生方に提供をしています。
様々な疾病がある中で、例えば糖尿病であれば、このグロースファクターがよくきくので、この上清液がいいというように提案ができる立ち位置にいるのが当社です。
ラボを持っている研究機関として、責任と優位性をもって情報提供をするということを行っています。
上清液やバイオ医薬品の市場について
幹細胞上清液の利用については、日本ではまだ法が整っていないので、ある意味で自由に扱われています。
現状では、2極化していると考えています。
まず1つは、健康食品や化粧品などの一般の方が広く使うものに利用される上清液です。
幹細胞上清液の有効成分は、たんぱく質や酵素系で構成されており、厳密にいうのであれば、温度管理などが非常に必要なものです。
それを健康食品や化粧品に混ぜて、活性化が維持されているのかというと、すべてが維持されているというわけではないのです。
現状では、美容や保険食レベルで、一部は失活しているけれども、一部はいい成分も残っているから、いい効果があるのではないかという形で利用がされているわけです。
一方で医療業界では、上清液は幹細胞・再生医療に準ずる力が望める、使いやすいものとして扱われています。
どちらかというと、こちらが主眼であって、私はこちらの市場が伸びてくると予感しています。
上清液を用いた治療への見解
現状では、様々な疾病に対して、ほとんどの場合で脂肪細胞由来の上清液が使われてしまっている状態です。
由来が違えば、サイトカインの種類もグロースファクターの種類も違ってきます。
したがって本来であれば、疾病・疾患が起きている箇所の細胞と同性質のものを使うのが望ましいわけです。
例えば、美容についてであれば脂肪幹細胞由来のもの、内臓系疾患であれば骨髄系由来、歯の再生であれば歯髄由来のものを使うといった具合です。
適材適所で各疾病・疾患に応じた幹細胞ができて、セルラインがあり、いつでも新鮮な上清液が作れて、それが提供・治療につながるという流れが確立できれば、いままでの医療がガラッと変わると思います。
最新医療の法整備について
基本的に患者さんの治療の権利を狭めるような法整備は、考えられるべきではないと思っています。
今後は、「成分が不明確なものは不可」「十分な分析を要する」「GMP準拠のラボでの作成を前提とする」といったような、患者さんにとっての安全性を保障するような法整備ができてくると思います。
そうすれば、より安全な制度の中で、患者さんにとって有用な治療法が広まっていくことになります。
今までは(法の影響で)改善の余地もなかったような困難な疾病に対して、進行を止められるような治療ができるようになるかもしれません。
例えば、いま私が一番やりたいのは、コロナの後遺症のケアです。
(コロナによって)胚細胞が壊れてしまうと倦怠感が長く続いたり、息切れが頻繁に起こってしまいます。
そういった症状に対して、再生因子が含まれている骨髄系幹細胞を用いることで、多少の改善にはつながるのではないかと考えています。
上清液と幹細胞の違いと特性
さまざまな意見がありますが、正直に申し上げると、誰も明確な実証には至っていないという状況です。
分かっている範囲でいえば、例えば、幹細胞自体が肝臓の細胞に置き換わって、再生するということは基本的にはありえません。
体内に入った幹細胞から継続的・持続的に上清液と同等のものが分泌されることによって、それが体内を刺激して有効に働くという考え方が一般的です。
つまり、大量の幹細胞を投与すれば、しばらく上清液が体内で分泌され続けるので、例えば半年に一回のスパンで治療を進めても、ある程度の効果が見込めることになります。
当然、大量の細胞を投与するとなると、少なからずリスクは伴います。
通常は血管内に細胞はほとんどないわけですから、血管が詰まったり、血管壁に付着してしまったりという恐れがあります。
その点でいえば、上清液を用いる方が安全性は高いといえます。
ただし、上清液の場合だと、1度の投与につき1回しか効果はありません。
上清液だけで治療する場合には、頻繁に投与しなければならないということです。
それでもやはり有効性が強いのは、幹細胞を用いた治療の方です。
どちらを使うかについては、患者さんの疾病・疾患がどれくらい重度で緊急性を要しているのかという点に依存します。
美容やアンチエイジング、予防などであれば、上清液の方がいいかもしれません。
しかし例えば、脊索損傷が起きていて、非常に高い緊急性を要するという場合には、幹細胞を用いた治療の方が望ましいでしょう。
そういった点での住み分けというように考えることもできます。
人間と動物の細胞について
基本的に、他の動物と人間では、サイトカインやグロスファクターの種類が異なります。
特に大きいタンパク質である動物のグロスファクターは、人間に投与するとアレルゲンや抗原になりえます。
一方で、低分子のものは比較的にホモログが近いので、有効に作用する可能性はあるかもしれません。
例えば、人間から由来する細胞を動物に入れたところ、それが有効だったという例があります。
だからといって、すべてがうまくいくというわけではなく、有効なものとまったく効かないものが存在します。
少なくとも、期待される効力の100%を発揮することはないでしょう。
また、植物から由来する細胞の場合、カルスという特殊な性質があるため、人間や動物に対して有効に作用するかは疑問です。
植物は生き物として非常にシンプルであるがゆえに生存や再生という点では優れています。
一方の人間は、1つの個体を高機能化するために細胞を多岐に分裂する必要がありました。
こういったことからも、人間や動物と植物はそれぞれ異なる性質を持っているというわけです。